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INTERVIEW

Overseas

THE TING TINGS

2012年03月号掲載

THE TING TINGS

Member:Katie White(Vo, Gt, Ba&Dr) Jules De Martino(Dr&Vo)


-サウンド的なインスピレーションは先ほど少し話してくれましたが、こういうアルバムにしようというインスピレーションはどこから? 具体的にありますか?

J:まず重要なのは、ファースト・アルバムを制作したとき、当時の僕たちが好きで認めた音楽性やライフ・スタイルを反映した作品にしたことで、ああいうサウンドになったわけだよ。このセカンド・アルバムでもそういう意味では同じ。自分たちに影響を与えている音楽やライフ・スタイルを正直に、ストレートに表現したという意味でね。でも、今回のレコードで最も重要な点は、さっきKatieが言ったように、世界中の人たちの音楽の聴き方が変わってきているということ。僕たちは特に世界中を旅して回るから、もちろんレコードを持ち歩くことなんて出来ない。だからmp3プレイヤーやラップトップに頼っている。それは僕たちだけでなく、世界中の人たちもそうだよね。iTunesだったりからダウン・ロードして、小さなプレイヤーに好きなものだけを詰め込んで持ち歩けるし、削除したきゃすぐに削除も出来るし。音楽が使い捨てになってしまっていて、人が音楽をどのくらい(生活の中で)大切に思っているのかが分かるよね。僕たちも3年間世界中を旅しながら聴いてきた音楽はそういったmp3プレイヤーから。それで気づいたのさ。もう誰もアルバム単位では音楽を聴かないんだな、って。もちろん自分たちも含めて。昔はCDを手に入れて、パッケージを開けて、CDプレイヤーに入れて……もうそんなことしてる暇もない時代なんだよね。それにそうする必要すらなくなったんだ。旅の途中、ラジオを聴いていて、この曲最高だな!と思ったら、その場で曲の名前さえ手に入れれば、その場で電話やラップトップからアクセスして、手に入れることが出来る。それを続けていて、僕たちも膨大な曲のコレクションがラップトップに出来たのさ。そんな風に、今の僕達の音楽の聴き方が(デビュー前とは)すっかり変わってしまった。そんなフィーリング、それぞれの曲が全く違うサウンドであるコレクションを聴いている、そんなフィーリングを新しいアルバムでは表現したかったのさ。まるでプレイリストのようにね。プレイをプレスしたら、まるで毎日違う曲を違う国や場所で聴いているかのような、そんなサプライズをそれぞれの曲で感じてもらいたいと思ったんだ。この作品制作を通して、自分たちがミュージシャンで居続けたいと思わせてくれたし、改めてこのバンドでやっていきたいと思うことが出来たよ。だって、ミュージシャンでスタジオに篭って、前と同じ(ような)作品を何度も何度も作りたいと思うかい? 音楽に対する思い、そして、このグループを結成した当時の思い、そういうものは壊したくないんだ。これが上手くいったから、じゃぁ、次も同じものを10曲……そんなことはしたくないのさ。ファースト・アルバムで作った曲、ヒットした曲は、その時に作ったものだから素晴らしいわけだよ。今作では、新たな瞬間、新たなアイディア、新たなコンセプト、新たな音楽の聴き方を提唱していると思うし、それを聴いた人達が楽しんでくれたら嬉しいと思ってるよ。

-アルバムのタイトルを『Sounds From Nowheresville』としたのは?

J:長い間、僕たちはどこにも属さなかったからだよ。1国、1都市、1町にね。ずっとツアーで世界を回っていて、パリに2週間、NYに2週間、LA、ベルリン、日本……電車や飛行機、トラック、バス、ホテル、スタジオ、そうやって過ごしていくと、人間って体も精神もそういうライフ・スタイルに順応していくんだよね。同時に、自分には“うち”と呼べる場所がないように思えてくるんだ。家族は“いつ会えるんだ?”ってメールしてきたり、電話してきたりする生活。そんな生活の後、ベルリンで素晴らしいインスピレーションを受けた僕たちのセンターのような場所を見つけて落ち着いたとき、ふと今度のアルバムに込められたフィーリングには、自分たちが“nowhere(どこにもいられない)”という気持ちが元なんだって気づいたのさ。自分の“うち”と呼べる場所を探しても、どこでもない。そこで作ったサウンドだから『Sounds From Nowheresville』なのさ。