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#楽園収穫祭

2025年09月号掲載

#楽園収穫祭

Writer : 高橋 美穂

楽しみながら足掻きながら進化を遂げる5組の3ピース・ガールズ・バンドに注目


2024年夏に東京 下北沢で初開催され、2025年3月には東京と名古屋で"桃ノ歌ゲ2days"を開催する等、全国各地で行われてきたガールズ・バンドの祭典となるイベント"#楽園収穫祭"。このたび仙台のリリカルの結成2周年記念とコラボレーションし、東北での初開催が決定した。"#楽園収穫祭 杜ノ歌ゲ 〜リリカル2周年パーティー"と題して、10月19日に仙台 FLYING SONで行われる。出演はリリカルの他、同じく仙台を中心に活動するティプシーズ、盛岡から参加するとにもかくにもという東北勢に加え、東京からはみじんこらっく、大阪からは台所きっちんも登場する。

今回の出演バンドは、すべてが3ピース・ガールズ・バンド。現在メジャー・シーンで活躍しているサバシスター、Conton Candy、Chilli Beans.、Hump Backもメンバー全員が女性の3人組である。遡れば、80年代にSHOW-YAやプリンセス プリンセスに端を発したガールズ・バンド・シーンは、2000年代にチャットモンチー、SCANDAL、SILENT SIREN、SHISHAMOといった多種多様なバンドの登場によって百花繚乱の盛り上がりに。"けいおん!"、"ぼっち・ざ・ろっく!"といったマンガにも描かれるカルチャーとして成長し、今では女の子に憧れられる、そして男性バンドとも分け隔てなく、男女共に愛される存在となった。

さらに3ピースというスタイルは、シンプルで気軽にトライできる側面がありながら、一人一人の演奏力も個性も露わになるために、高みを目指そうとすると難しいところも出てくる。そういった誤魔化しの効かないスタイルにチャレンジするガールズ・バンドが増えている現状は、頼もしいし嬉しい。"#楽園収穫祭"では、そんな新星5組が一挙に観られるのだ。


ここからは、一つ一つのバンドを紹介していこう。まずは仙台出身のリリカル。2005〜2006年生まれの3人により結成され、2023年10月に宮城県仙台市でライヴ活動を始動。2025年には東京でもライヴを行っており、キラッキラなメロディとフレッシュな演奏で、その音と名前を徐々に広げている。そんな彼女たちは3ピース・ガールズ・バンドの魅力について、"それぞれの個性がより際立ってステージの上では誰かが隠れることなく全員が主人公になれるし、それぞれのバンドのカラーや世界観を作り上げることができるところ!"(珈香/Vo/Gt)、"かっこいいガールズ・バンドは正義のヒーロー"(しちみ/Ba/Cho)、"ステージにたった時目立つ!一人一人が輝ける!"(あやね/Dr/Cho)と誇らしげに語る。"「かっこいい」って言ってもらいたいけど、ライヴの後は「かわいかった〜」って言われることが多くて、今日もかっこいいって言ってもらえなかったなーって悔しくなります"(珈香)、"ライヴの後に「かっこ良かった」って褒められるとすごく嬉しいです!"(あやね)という言葉からは、"かっこいい"を一心に目指しているストイックな姿勢も伝わってくる。

リリカル - 音の鳴るほうへ -[Music Video]


そして、ガールズ・バンドならぬ"ビールズ・バンド"の呼び名をほしいままにするのは、仙台を拠点に活動するティプシーズ。モットーは"ライヴ後の一杯までがセット"!? しかし、ただのほろ酔いバンドではなく、長谷川(Vo/Gt)は"人数が多かったり、男性がいたりするだけで音の厚みも安心感もきっと違うと思いますが、そんな中で、私はあえてガールズ3ピースにこだわっています。誤魔化しが効かないので、自分の思いやバンド内のチームワークが素直に曲やライヴに出ると思います"と胸を張る。影響を受けてきたバンドは"リーガルリリー、チャットモンチー"(長谷川)、"チャットモンチー、yonige"(さきこ/Ba)、"Chilli Beans."(なな/Dr/Cho)と様々ながら、その個性が重なり合ったアンサンブルが耳を惹く。"自分たちの色を出しながらとにかく楽しんで、最高の一日にします! あとはたくさん飲みます!"(長谷川)、"ガールズ・バンドばかりのなかで、かっこいいライヴがしたいです!"(さきこ)、"いっぱい飲みます!!!"(なな)とライヴも飲みも準備万端のようだ。

ティプシーズ ー ジャイブ! (Music Video)


続いて、2019年に岩手県内の高校の軽音楽部で結成された"ほんわか3ピース・バンド"のとにもかくにも。"出演するどのバンドも等身大のロックをやっていてめっちゃかっこいい"(さくら/Vo/Gt)、"バンドとしては今回が初めての仙台ライヴで、しかもガールズ・バンド同士の交流の機会があまりなかったので、いろいろお話しながら、楽しいライヴにできたらいいなと思っています"(もか/Ba)、"岩手には、同世代3ピース・ガールズ・バンドがほとんどいないので、たくさん刺激を受けて、自分たちのバンドに活かしていきたいです"(めぐ/Dr)と、意外にも初めての仙台ライヴに気合十分な3人。さくらは3ピース・ガールズ・バンドの魅力を"女の子にしか書けない小さなモヤモヤや、大きなときめきを、シンプルに、飾らずまっすぐ伝えることができることです"と答えてくれた。ほんわかしているけれど、自分たちの武器を自覚して表現できる強さを持った彼女たち。3ピース・ガールズ・バンドの大変なところを"重いものが運べないところ"(さくら)と吐露する素直さも含めて、大きな魅力である。

とにもかくにも - 永遠の恋人


東京からは、現体制での活動が2025年3月24日にスタートしたばかりのみじんこらっくが、この日の下北沢のサーキット・イベント("旬は巡る。2025")に出演後、初遠征となる仙台に駆けつける。"やはり「バンドに魂を燃やしている女の子」は男の子に比べると少ない。そんななか、女の子が3人集まって1つのバンドを組んでいる。それだけで魅力たっぷりです!"(塩/Dr/Cho)と3ピース・ガールズ・バンドを語る言葉からも、意志の強さが感じられる。"また会いたいと感じられるライヴにしたい! 「ラックミュージック」を届けます!(メンバーと新幹線に乗れることも楽しみ、牛タン食べたいです)"(豆粒/Vo/Gt)、"私は仙台に行くこと自体が初めて! 初めてがいっぱいでとってもワクワクしています"(塩)、"めちゃくちゃにいいライヴをしたいです"(ゆるく/Ba/Cho)と意気込みからも胸の高鳴りが聞こえてくるようだ。彼女たちが掲げる、日常の"どこか埋まらない小さな隙間"を埋める"ラックミュージック"を、楽しみにしたい。

みじんこらっく- チケット


最後は大阪から東北初上陸となる2023年4月結成の台所きっちん。"3ピースはリードを担うギターや他楽器がいないため、全員が主役になりやすい編成だと思っています"(花菜/Vo/Gt)、"3人だけで各々ができる最大限の技術を活かして演奏をすることが私は超超かっこいいと思っています"(コトア/Ba)、"女の子特有のかっこ良さとかわいさを持ち合わせた声と、3つだけの楽器で奏でられるキャッチー、ロックなサウンド"(凜佳/Dr)という3ピース・ガールズ・バンドの魅力を語りつつ、"もともと男性ヴォーカルのバンド、リード・ギターありの4人編成のバンドに憧れて音楽を始めた身として、自分の性別だったり、バンド編成に悩むことは多かったです"(花菜)という本音も。しかし一方で花菜は"まだまだ3ピース「ガールズ・ロック」って発展途上だと思ってるので、そのなかで足掻くのが楽しくて仕方ないです!"とポジティヴに言い切った。そのガールズ・パワーを体感してほしい。

【MV】ボブ / 台所きっちん


"女の子3人、ドラムもベースもギターも1人ずつしかいない、5バンド全部が同じ条件でするライヴなので、いつにも増して気合が入っています"とリリカルの珈香が言う通り、一つ一つの個性も技術も赤裸々になる今回の"#楽園収穫祭"。ぜひ、足を運んでほしい。


EVENT INFORMATION
"#楽園収穫祭 杜ノ歌ゲ 〜リリカル2周年パーティー"



10月19日(日)仙台FLYING SON
OPEN 16:30 / START 17:00
出演:リリカル / とにもかくにも / ティプシーズ / みじんこらっく / 台所きっちん
[チケット]
一般 ¥2,500(D代別)
※22歳以下:当日¥500 バック(要身分証明書)
※来場者特典:コンピCD-R『#楽園収穫祭』
詳細はこちら

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