Japanese
MARiA(GARNiDELiA)
2021年06月号掲載
Writer 山口 哲生
豪華作家陣と圧倒的な歌唱力で届ける、10篇の物語
GARNiDELiAのヴォーカリスト MARiAが、アルバム『うたものがたり』をリリース。待望のソロ活動を始動することとなった。
MARiAは、ユニット内では歌はもちろん、アートワークや歌詞も担当。それと同時に、ファッション・モデルとしても活躍していて、同世代の女性のみならず、近年は世界各国から注目を集めている。特に中華圏からの支持は熱狂的で、"中国版Twitter"と言われているWeibo(微博)のオフィシャル・アカウントは、フォロワー数が285万人を突破。日本を代表するアーティストとして、日に日にその存在感を高めている。
そんな彼女のソロ活動の幕開けを飾るのが本作『うたものがたり』なのだが、制作メンバーがなんとも豪華だ。作家陣には、山下穂尊(いきものがかり/Gt/Harmonica)、橋口洋平(wacci/Vo/Gt)、じん、草野華余子、TAKUYA(ex-JUDY AND MARY/Gt)、山崎まさよしなどを招聘し、サウンド・プロデュースを本間昭光が担当と、日本の音楽シーンの最前線で活躍しているアーティストや、クリエイターが集結している。
GARNiDELiAの音楽と言えば、最先端のエレクトロ・サウンドを加味したダンス・ミュージックであり、その旨みを損なうことなくバンド・サウンドに落とし込んだものが主軸。それを踏まえたうえで作家陣のラインナップを見ると、明らかにいつもとは違った表現に挑戦しようとしているMARiAの意志が、伝わってくるだろう。事実、作家陣各々が持ち前の個性を存分に発揮した楽曲を提供していて、それだけでも聴き応え抜群。そして、そんな多彩且つ多様な楽曲に合ったアプローチをし、いつもとは異なる表情を見せながらも、自身の色をしっかりと打ち出していくMARiAの表現力や、歌唱力の高さがあり、それが交わった化学反応を楽しめる作品に仕上がった。
収録曲順に紹介していこう。1曲目の「コンコース」は、wacciの橋口洋平が作詞作曲を担当。遠距離恋愛をしていた恋人たちの別れの景色を描いた、センチメンタルなスロー・ナンバーは、"泣けるバラード"の名手の本領発揮といったところだ。柔らかく奏でられるピアノとアコースティック・ギターの音色、そして、別れを受け入れられずにとめどなく溢れ出てくる思いを時に激しく、時に愛おしく歌い上げていくMARiAの歌声に、一気に心を掴まれる。アルバムの流れとしては、そんなピュアで美しい世界からアッパーな雰囲気へ......と行きそうなものだが、続く「憐哀感情」でより深く、仄暗いところへ潜っていく。この曲の作詞作曲を手掛けたのは、いきものがかりの山下穂尊。湿度の高い曲調や、メロディには昭和歌謡的なニュアンスがあり、そこに綴られた圧倒的な孤独の淵に佇む主人公の感情を、情念たっぷりに歌い上げている。
ここからBPMが一気にアップ。それと同時に、歌唱難易度も急激に跳ね上がる。許されざる恋に落ちていく様を描いた「ガラスの鐘」(作詞:早川博隆、作曲:早川博隆/村山シベリウス達彦)では、ラテン風味なガット・ギターとダンス・ビートの上で、美しくも激情的なハイトーンを響かせたあと、「紅蓮華」のヒットも記憶に新しい、草野華余子の作詞作曲による「おろかものがたり」へ。シリアスな響きのバンド・サウンドに乗せて、ささくれ立った感情を凄まじい勢いで吐き出しまくっていくのだが、メロディの譜割りだけでなく、アップダウンもかなり激しい。そんな高難易度の楽曲もさらりと歌い上げているのもあって、この3、4曲目は彼女の圧倒的なスキルをわかりやすく堪能できるブロックでもあるだろう。そんな前のめりに転がっていたところから一転、山崎まさよし作曲のブルージーな「マチルダ」は、柔らかい歌声で少し溜め気味に歌い、またガラリと表情を変える。楽曲としても、薄汚れた路地裏で懸命に息をする少女の姿が目に浮かんできて、かなりドラマチックだ。
個人的に"そう来たか!"と膝を打ったのが中盤戦。TAKUYA作詞作曲の「キスをしてみようか」は、タイトルからして、ポップで溌剌としたアップテンポな楽曲をイメージしてしまったのだが、蓋を開けてみると、退廃的な空気が漂うギター・ロックだった。"もう絶望は経験した 足りない才能は美化した"と歌うヒリヒリしたMARiAの歌声や、エッジの効いたギターがザクザクと心を切り刻んでくる。続く「あー今日もまた」(作詞:jam、作曲:本間昭光)も、タイトルが持つ雰囲気からして、どことなく牧歌的。実際にサウンドはかなり軽やかなのだが、しかし、歌っている内容はかなり現実的で、世知辛い世の中を淡々と、それでいて力強く進んでいく強い女性像を見事に描き出している。
そんな意表を突いた(というか、こちら側の勝手な思い込みとも言えるが......)ところから、終盤戦へ。「Brand new me」(作詞:木村友威、作曲:nishi-ken)は、キラっとしたエレクトロ・サウンドと弾むビートが生み出すポジティヴな空気に、ライヴでオーディエンスが手やサイリウムを振っている光景が立ち上がってくる。ちなみにMARiAは、『うたものがたり』のリリースを発表する際のコメントで、"私が大好きな歌を歌い始めた時から/もう18年くらい?がたちました。"と、自身の経歴について触れている。10代前半から歌手活動を始め、様々な紆余曲折を経ながらキャリアを積み上げてきたMARiAだが、それは決して楽しいことばかりだったわけではないだろう。それでも、どんなときでも自分を信じていたい、何度つまずいてもまた立ち上がれると、彼女はリスナーに明るく歌いかける。「Brand new me」に込められたその言葉は、ここまで愚直に歩き続けた彼女だからこそ、響かせることができるメッセージだ。
そして、宇宙まおが作詞を手掛けた「光」(作曲:本間昭光)で、変わっていくもの/変わらないものを噛み締めながら歌い、じん作詞作曲のラスト・ナンバー「ハルガレ」へ。終わりと始まりが入り交じる"春"という季節が持つ、淡い質感や匂いであり、じんの楽曲から常に滲み出ているエモい成分を極限まで引き出した歌声はなんとも美しく、心地よい余韻を残したまま、『うたものがたり』は幕を降ろす。
聴き終えたあと、改めて、MARiAというヴォーカリストの凄みをまじまじと思い知らされる『うたものがたり』だが、様々なベクトルの楽曲を収録しつつも、ひとつ共通しているところがある。それは、現状に思い悩んだり、もしかしたらこれは間違っているかもしれないと葛藤したりしながらも、それでも、少しずつ前へ足を踏み出そうとしている人間の姿が描かれているということだ。そして、そこで躍動している主人公たちの姿に励まされたり、自分の姿を重ねてみたりと、聴き手がその曲に対して好きなように入り込める余白がしっかりと残されているところも、本作の重要なポイント。MARiAはその類稀なる歌唱力を持って、その世界へ誘ってくれる道先案内人でもあるだろう。『うたものがたり』は、決して楽しいことばかりではない日常を過ごしている私たち自身の物語を彩り、輝かせてくれる1枚だ。
華々しいソロ・デビューを飾ったMARiAに続き、GARNiDELiAとして共に活動している相棒のtokuも、6月16日にソロ・アルバム『bouquet』をリリース。そして、今秋にはGARNiDELiAとして再始動アルバムを発表することになっている。それぞれが培ったものをユニットにどう還元し、どんなものを生み出してくれるのか。それぞれのソロ作品をじっくりと堪能しながら、その日を楽しみに待ちたい。
【XFD】MARiA Solo Album「うたものがたり」【全曲紹介】
▼リリース情報
MARiA
ソロ・アルバム
『うたものがたり』
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[CD] ※共通
1.コンコース
作詞:橋口洋平 作曲:橋口洋平 編曲:本間昭光
2.憐哀感情
作詞:山下穂尊 作曲:山下穂尊 編曲:中村タイチ
3.ガラスの鐘
作詞:早川博隆 作曲:早川博隆 / 村山シベリウス達彦 編曲:村山シベリウス達彦
4.おろかものがたり
作詞:草野 華余子 作曲:草野 華余子 編曲:本間昭光 / 草野 華余子
5.マチルダ
作詞:岡本定義 作曲:山崎将義 編曲:清水信之
6.キスをしてみようか
作詞:TAKUYA 作曲:TAKUYA 編曲:nishi-ken
7.あー今日もまた
作詞:jam 作曲:本間昭光 編曲:本間昭光 / 清水信之
8.Brand new me
作詞:木村友威 作曲:nishi-ken 編曲:nishi-ken
9.光
作詞:宇宙まお 作曲:本間昭光 編曲:清水信之
10.ハルガレ
作詞:じん 作曲:じん 編曲:本間昭光
[Blu-ray] ※初回限定盤のみ
「コンコース」Music Video -MARiA ver.-
Making of 「コンコース」 MV
Interview with MARiA
配信はこちら
MARiA『うたものがたり』特設サイト
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