Japanese
MARiA(GARNiDELiA)
Skream! マガジン 2022年08月号掲載
2022.07.03 @EX THEATER ROPPONGI
Writer 長澤 智典 Photo by 小松陽祐[ODD JOB]
"これからも一緒に時を重ねよう"――MARiAが届けた心を結び合うひととき。音楽ユニット、GARNiDELiAのヴォーカルとして活動中。2021年より、GARNiDELiAと平行しMARiAとしてソロ活動もスタートし、2022年6月に2ndソロ・アルバム『Moments』を発売したMARiAは7月3日、同アルバムを手に"MARiA MUSIC LAND 2022 -Moments-"をEX THEATER ROPPONGIで行った。当日の模様を、ここへ記したい。
会場の扉を開けた先に広がっていたのは、夢溢れる華やかな空間。中へ1歩踏み出した途端、目の前に広がった大きな舞台を見つめながら、これから始まる物語へ早くも期待を寄せていた。
力強い四つ打ちのエレクトロなビートが流れだす。その音を受け、フロア中の人たちが手拍子を始めた。次第に音圧が上がる。短い暗転と無音。輝きに包まれた舞台の中央には、アルバム『Moments』に写し出された衣装姿のMARiAがいた。
始まりを告げたのが「Star Rock」。冒頭の歌詞へ記した"時が来たのね/迎えに行くわ It's my new world/ここに立つステージで 生まれ変わる"の言葉通り、MARiAは6人のダンサーを従え、力強く躍動するダンス・ビートの上で、ここから新しい物語を共に描こうと呼び掛けた。ダンサーたちと絡みながら歌う様は、まるでレビューのよう。そこには、ゴージャスで華やかな空間が広がっていた。MARiAが見せた1ページ目から、胸が弾む物語が目の前に描き出されてゆく。
ワクワクする気持ちと、躍動する四つ打ちのビートが重なり合う。大好きな君と一緒にいたい。「君といたい」を通してMARiAは、恋する女性の心が躍る様を、自らの心も踊らせ歌っていた。少女の心がときめくたびにMARiAの歌声が色づけば、楽曲も華やかさを増す。大きく手を振りながら歌うMARiAの動きに合わせ、客席でも高く振り上げた多くの手が左右に揺れていた。"君といたい"思いが膨らむたびに、心も華やぐ。そんな素敵な気持ちにMARiAの歌が染めあげてくれた。歌のページをめくるたび、新しい世界がどんどん描き加えられていくようだ。
「Heartbreaker」でMARiAは、ふたりのダンサーたちと一緒に踊りながら、気持ちのすれ違いにより覚えた切ない心模様を嘆くように歌っていた。心苦しい思いとは裏腹に、楽曲は鮮やかでドラマチック。不安に揺れる気持ちを隠すことなく歌うMARiA。感情が高まるのに合わせ楽曲も力強さを増す。ダンサーたちと一緒に躍動したダンス姿を見せるMARiAも印象的だ。でもそれ以上に、切なさを帯びた歌声に気持ちがずっと引き寄せられていた。
熱く激しく躍動した「Galactic Wind」では、タオルを手にしたMARiAが凛々しい声で歌えば、サビでは突き上げたタオルを勢い良く振り回し、客席の人たちと一緒に熱を生み出していた。彼女は、自ら作詞を手掛けたこの曲で、挫けそうになろうとも逃げることなく何度だって立ち向かう、きっとその先に光はあると歌っていた。「Galactic Wind」に書いたのは、MARiAが心の中にずっと抱き続けてきた強い意志。自らの弱さを吹き飛ばすようにタオルを振り回せば、凛々しい声で"必ず光はあるから"と熱唱していった。
MCでは、"みんなにとってここが、キラキラワクワクした、いろんなこと忘れてみんなで楽しめる場所になれたらいいな。そう思ってライヴのタイトルにも「MUSIC LAND」と付けました"と語っていた。
"MUSIC LAND"というタイトルに相応しい想いを詰め込んだ楽曲として、MARiAが今回のライヴに組み込んだのが、10年前に発表した「aMazing MusiQue PaRK」。夢溢れるファンタジックな世界が、目の前に描き出される。歌詞へ記した"ココロが熱くなる"の一節ではないが、MARiAの誘いの声に呼ばれるまま物語の中へ飛び込んだら、いつの間にか気持ちが熱くなっていた。心がどんどん華やぎだす。そんなふうに感じられたことが素直に嬉しかった。
ふたりのダンサーと一緒に、MARiAはガーリーでチャーミングなダンスを見せていた。女の子の秘めた本音を「Girls」に乗せ、彼女は心が弾むように歌う。恋に恋するあまりドキドキする気持ちが大きく膨らんでゆく。こちらも10年前に発表した楽曲だ。甘えたガーリーな表情も魅力的。次第に強さを増す楽曲に合わせ、MARiAの歌声にも凛々しさが増してゆく。愛らしさも、強さも、全部引っくるめて、ひとりの自立した女性として成長してゆく姿が「Girls」から見えてきた。
強烈な四つ打ちのダンス・ビートに合わせ、フロア中からも熱くクラップが飛び交う。メンバーたちの演奏を挟み、着替えを終えたMARiAが舞台へ姿を現した。
哀愁を帯びたラテンのビートが流れだす。熱情したアコギの音色が心を騒がせる。黒いシックなドレスを身に纏ったMARiAは、4人のダンサーを従え、制御できない恋心へ自ら溺れるように「ガラスの鐘」を歌っていた。胸の内に秘めていたのは強さと脆さ、そんな紙一重の感情だ。MARiAは沸き立つ思いのまま身体を大きく揺らし、心の叫びを激情した声に乗せる。自らの気持ちを赤裸々に、心が求めるまま恋に溺れるように歌っていた。
"心の声、もっとここに届かせて"の声を合図に歌ったのが、「Asterisk」。シンフォニックな音色も印象深い楽曲だ。沸き立つ感情へ導かれるままに、MARiAは"暗闇さえ 恐れないで/君と描くAsterisk"と高らかに歌っていた。弦楽の音色に気持ちをかき立てられるように。MARiAは雄々しく歌声を響かせる。身体中から湧き出る熱情をすべて吐き出さずにいられないと言わんばかりの姿で、感情を剥き出しに歌うMARiA。その姿に気持ちが騒ぎ続けていた。
ダンサーたちのソロやグループ・パフォーマンスを挟み、着替えを終えたMARiAが舞台へ舞い戻ってきた。
真っ赤なドレス姿に着替えたMARiAが、"ほんの一瞬を/駆け抜けるようにして"と魂を奮わせるように歌いだした。2ndアルバムの冒頭を飾った「Think Over」だ。MARiAは大胆な女性に心も着替え、衝動へ突き動かされるまま歌声をぶつけていた。どんな逆境も一緒に乗り越え続けようと、MARiAは自らを支えてくれる仲間へ向け、気持ちを鼓舞するように"向き合って/踏み出して 今!"と歌う。
ここからは、evening cinemaとのコラボ・コーナーへ。evening cinemaの原田夏樹(Vo)が、2ndソロ・アルバム『Moments』へ「Think Over」と「Long Distance」を楽曲提供した縁から、この日は、原田夏樹が所属するevening cinemaと共演する形を用意。しかも、披露したのがevening cinemaの曲たち。
最初に歌ったのが、オリエンタル/チャイナ系の音色も印象深い「Good Luck」。男女のデュエット・スタイルを取ったことで、楽曲に華やかさが増した印象だ。シティ・ポップの要素を抱いた楽曲を通し、MARiAとevening cinemaは彩り豊かな世界を作りあげていった。MARiAが大きく左右に振る手の動きに合わせ、フロア中の人たちも大きく手を振る。歌詞の一節ではないが、"今夜スタイリッシュに君を拐ってしまいたい"気分だ。なんて華やかでお洒落で浪漫のある世界だろう。終盤に飛びだしたMARiAと原田夏樹の歌の掛け合いに触れたときには、胸が熱くなった。
"夏、感じましょう"。MARiAの言葉を合図に、MARiAとevening cinemaは「summertime」を奏でながら、この空間に夏を連れてきた。ギラギラの夏ではなく爽やかな風を覚える爽快な夏景色なのが嬉しい。MARiA自身が、夏という季節が呼び込むアバンチュールに気持ちを高ぶらせていた。心がウキウキと騒ぎだす。客席でも、身体を揺らしていた人たちが大勢いたように、MARiAたちと同じように夏気分を楽しんでいたに違いない。
再びバンド編成に戻って披露したのが、ボカロ・カバー曲の「夜咄ディセイブ」だ。"みんな、まだまだ踊り足りてないでしょう"の煽り声を合図に、激しく躍動するロックな楽曲をMARiAは突きつけた。彼女自身が、観ている人たちを挑発するように激しく身体を揺さぶりながら歌っていた。真っ赤なドレス姿が似合う情熱的な女性に心を染めあげ、彼女は挑発するように言葉をまくし立てる。おらおらと煽るロックなMARiAの姿が、とても熱い。
続く「おろかものがたり」でもMARiAは、高ぶる想いへ突き動かされるように狂おしい姿で歌っていた。熱情した演奏へ突き動かされるまま、MARiAはかき乱れる恋心を吐き出した。あまりにも感情的なMARiAの歌声に刺激を受け、聴き手の感情も熱く奮い立つ。気持ちが揺れ動くままに歌うMARiAの姿も、心を騒がせた。フロアでは、MARiAの姿に刺激を受けたのか、多くの真っ赤なペンライトの光が大きく揺れ動いていた。
北欧音楽を思わせる牧歌的な音色が流れだす。MARiAは祈りを捧げるように「Pray」を歌い始めた。彼女が伸ばした手は,何を掴もうとしていたのだろう。夢? 願い? 希望? MARiAは生きる意味を、ひとりひとりが宿した命の価値とは何かを問い掛けてきた。幽玄な音が響き渡るなか、MARiAは支えてくれる人の存在が、自らの生きる力になると歌う。祈りにも似た彼女の声を受け止めた観客たちも、その歌から明日へ進むための力を授かっていた。
"私は、みんなのいるこの場所が大好き"。MARiAは、力強く「ハルガレ」を歌いだした。彼女の歌声に刺激を受けた人たちがクラップしていく。季節は巡ろうとも、心は前の季節に置き去りにしたまま。そんな切ない気持ちを歌にしながらも、曲調や、MARiA自身の声が歩む意志を示していたことから、歌がどんどんカラフルに色づいていく。客席には、たくさんの桜色のペンライトの光が揺れていた。春に置き忘れた気持ちを押し進めるように、熱を抱いた歌声をMARiAは響かせる。桃色の光の数々が桜吹雪のように揺れ動く景色も、見ていて華やかだ。あの景色を見て、胸が踊るのも当然だ。
"みんなと作る時間がめっちゃ好きだなと思いました"、"一緒に同じ時間を共有できる今が、とっても幸せだなと思います"。最後にMARiAは「Long Distance」を歌唱。この曲を作ったevening cinemaの原田夏樹も、キーボードで演奏に参加。「Long Distance」では、MARiAが持つ愛らしい姿を提示。ちょっと強気に歌っていたのも、愛しい人への思いが募っていたから(?)。サビへ向かう形で歌声も華やげば、サビでは、ふたりのダンサーと一緒に乙女のようなかわいらしい振りをしながらも、芯の強い女性の姿を見せていた。後半には、6人のダンサー全員が参加。MARiAは沸き立つ思いをぶつけるように、高らかに「Long Distance」を歌いあげていった。
着替えを終えたMARiAが、アンコールの最初に歌ったのが、郷愁を呼び起こす、しっとりとした曲調の「コンコース」。MARiAは、忘れたくないあのころの景色を想い浮かべ、そのころのふたりの姿を振り返りながら、今でも好きで好きで心苦しい思いを、胸の奥で噛み締めるように歌っていた。消したくない思い出を心の中のフィルムへ焼きつけるように歌うMARiA。その声を聴いた人たちも、愛しい人との別れや旅立ちの景色を頭の中に映し出していたのでは......。MARiAの歌声が、その場にいるひとりひとりの心へ別れと旅立ちの景色を映し出す。いつしか頭の中のスクリーンには、今でも忘れられない好きな人を笑顔で見送りながらも、悲しみに暮れる女性の姿が映っていた。歌に登場する女性に気持ちを重ね、切なく、心苦しく、胸をかきむしる想いを感じながら、MARiAの歌声に心を寄り添わせる。
"苦しいことにも、悲しいことにも、必ず終わりは来る。自分で選んだ道や、やってきた音楽は間違いじゃないと思いました。私が歌っているのは、届けたい君がいるから。そんな君が見えなくなることもあれば、いなくなった君もいる。私の歌は求められてないんじゃないかと弱気になったこともあったけど、こうしてこのステージから見えるみんなの顔を見て、私はこのステージが大好きで、まだまだみんなに届けたい歌がたくさんあると改めて思いました。君がいてくれるから、私は今日もこうして歌っています。私の歌い続ける理由になってくれて本当にありがとう"。
最後に届けたのが、今のMARiAが一番伝えたい想いを詰め込んだバラードの「Labyrinth」。MARiAは言葉のひと言ひと言を噛み締めながら、胸の内から込み上げる思いを、少し濡れた感情で、でも強い意志を示した歌声を通して観客たちに届けていた。何度も迷宮に迷いったからこそわかった、大切な人(ファンたち)の存在。"この手は離さない/二人でいよう"と歌うMARiAの声が、互いの絆をきつく結び合う。MARiAは呼び掛けてきた。"これからも一緒に時を重ねよう"と。MARiAの歌声を失いたくはないからこそ、これからも共に時を重ね続けていきたい。終盤、MARiAは"これからも君と私で、ずっと一緒に歩んでいこう"と言葉を掛けてくれた。その言葉を抱きしめながら、今宵の物語の幕が閉じていった。
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