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Japanese

The Plashments

2014年02月号掲載

The Plashments

Writer 山口 智男

SEXY STONES RECORDSの新レーベル、FICK FILLYが魅起法則とともにデビューさせるThe Plashments。彼らの『Kicks & Rush』をはじめ、FICK FILLYからのリリース第1弾となる3作品からだけで判断するのは早計すぎるかもしれないが、とりあえずSEXY STONESからもリリース経験があるhotspring、魅起法則、そしてThe Plashmentsの3組からFICK FILLYのレーベル・カラーを読み取るなら、日本のライヴ・シーンの最前線で自分たちだけにしかできない表現を追求している若いバンドを紹介する一方で、70年代後半~80年代前半のパンク/ニュー・ウェイヴ/ポスト・パンクや、そのルーツとも言える60年代のビート・ロックおよびガレージ・ロック、そして50年代のロックンロールの魅力を現代に受け継いでいこうとしているようにも思える。

筆者なんかは、それこそがロックが本来持っている醍醐味だろうと、ついついはしゃいでしまうわけだけれど、それを考えると、FICK FILLYから2月5日にアルバムをリリースする3組はメンバーたちと同世代の――ライヴハウスに熱心に通っているような若者たちだけに止まらず、アルバムのリリースをきっかけにもっと幅広いリスナーに歓迎される可能性を十二分に持っている。それこそアイルランドからやってきたティーンエイジ・カルテット、THE STRYPESの来日公演が親子ほど年齢の違う観客でいっぱいになったように。
中でもこのThe Plashmentsは、レーベルのボスである浅井健一が"懐かしくて最新"とその魅力を端的に語ったように、ある世代にとってはロックに熱中していた青春時代を思い出させ、ある世代にとってはOASISやTHE PALMA VIOLETSを連想させるという意味で今っぽいと感じられるバンドかもしれない。

The Plashmentsの結成は2008年。バンドのフロントマンである吉川コウタ(Vo/Gt)はたまたまテレビで見たTHE HIGH-LOWSをきっかけにロックの魅力に目覚め、THE HIGH-LOWSの他、THEE MICHELLE GUN ELEPHANT、BLANKEY JET CITYなどを聴き始めたという。
そんな吉川がバンドを結成しようと思ったきっかけがJoe Strummer率いるTHE CLASH。彼がTHE CLASHを知ったきっかけがJoe Strummerの追悼番組だったというエピソードがバンドの若さを物語るが、吉川に加え、山崎弘貴(Gt/Vo)、角田悠(Ba/Cho)、岡田岳(Dr)という現在のラインナップが揃ったのが2010年のこと。以来、下北沢を拠点に精力的なライヴ活動を行い、2012年には初の全国ツアーを敢行。今回、リリースする『Kicks & Rush』は彼らが満を持して完成させたデビュー・アルバムだ。

オープニングを飾る「Naive」やTrack.9「Reborners」といったThe Plashmentsのアイデンティティを印象づける曲もあれば、THE CLASHやJOHNNY THUNDERS & THE HEARTBREAKERSを連想せずにいられない曲もある。"自分たちらしさとは?"と自問自答しながら試行錯誤しているようなところや若干の危なっかしさも含め、ギミックなどには一切頼らず、バンドの今をそのままぶつけ、一気呵成に作り上げたと思しきロックンロール作品である。がむしゃらに突き進むロックンロールに胸が躍るその一方で、どこかブリットなポップ・センスが光るTrack.7「Freakin' Love」、テンポを落として、朗々と歌い上げるTrack.8「Manstra's Hand」といった曲を聴いていると、若いバンドの試行錯誤はやがて、でっかい歌で大勢の人の心を1つにするアンセムに収斂していくんじゃないかと期待せずにいられない。1人のロックンロール・ファンとして、これからの成長を見守りたい。

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