Japanese
FICK FILLY LABEL RELEASE PARTY
Skream! マガジン 2014年03月号掲載
2014.02.08 @下北沢 SHELTER
Writer 山口 智男
各バンド、持ち時間は30分強。悠長に喋っている時間などなかったからということかもしれない。しかし、普段、ライヴに足を運ぶたび、喋る時間があるなら1曲でも多くやってくれよとイライラすることがままある筆者はこの夜、The Plashments、魅起法則、hotspring(演奏順)という3バンドがそれぞれ矢継ぎ早に曲を繰り出す姿を見ながら大いに溜飲が下がったのだった。
浅井健一がボスを務めるSEXY STONES RECORDSの新レーベル、FICK FILLYのスタートを祝うRELEASE PARTYが下北沢SHELTERで開催されたこの日、東京を45年ぶりの大雪が襲った。集客は?!と心配しながら足を運んでみたところ、トップバッターのThe Plashmentsがステージに立つ頃には場内はすし詰め状態になっていた。THE CLASHからの影響とOASISらブリット・ポップ・バンドから譲り受けたポップ・センスをあわせ持つ4人組。若いバンドだとは思っていたけれど、あどけなさも残したルックスを見てびっくり。そんな4人組が精一杯つっぱっているようなところがなんだかいいじゃないか。フロントマンの吉川コウタ(Vo/Gt)が何度か口にした"いい曲をやる"という言葉からも若いバンドならではの向こう意気が伝わってきた。
テンポを若干落として、持ち前のポップ・センスや歌心を印象づけた「Manstra's Hand」なども織り交ぜ、緩急つけた35分。アルバムではちょっと危なっかしいように思えた吉川のヴォーカルがしっかりと自信に満ちて聴こえたのは、この日の大きな収穫だった。
魅起法則と書いてミキノルムと読ませる女性3人組は、この6年の活動の集大成だというデビュー・アルバム『is escape』から7曲を披露。轟音ギターとグルーヴィーなリズムの組み合わせがオルタナという表現に収まりきらない個性をアピールした。ニコリともせず、伏し目がちに演奏する佇まいが、彼女たちが奏でる爆音とは裏腹に超クール。黒い衣装をはじめ、バンドの打ち出し方はいかにもアンダーグラウンド臭を感じさせるものながら、中盤、演奏した「席替え」ではJ-POPの世界でも十分に通じるメロディも歌う。そんなところも彼女たちの魅力の1つ。終盤、"(雨女ならぬ)雪女になっちゃいました"と砕けた調子のMCで会場の緊張を解きほぐすと、多くの人に支えられ、CDをリリースできたことへの感謝を述べ、彼女たちはフリーキーかつ熱度満点のインスト・ナンバーの「にがい」、巻き舌のヴォーカルが挑発的な「and more!!」、そして八代ゆか(Vo/Gt)の愛器をタイトルに歌いこんだ「MACHIGAI TO JAZZMASTER」を連打して、熱演を締めくくった。
RELEASE PARTYのトリを務めたのは、FICK FILLYの若頭(?)、hotspring。SEXY STONESに見初められ、大分から東京にやってきたこの4人組は"行くぜ!"というイノクチタカヒロ(Vo/Gt)の雄叫びとともにロックンロールのカタルシスを求める渇望を歌った「ゴールド」をはじめ、リリースしたばかりの2作目のアルバム『THREE MINUTES GOLD』からアップテンポのロックンロールをたたみかけた。激しいアクションを交え、客席に挑みかかるようにシャウトするイノクチの60年代の日活アクション映画に出てきそうな面構えもなんともロックンロール。観客に襲いかかる音の塊からギターやベースが閃かせるフレーズ、そしてイノクチが歌うはっとさせるような歌詞が浮かび上がるところが心憎い。中でも「BABY KILL LOVE」のセクシーな比喩は、イノクチの作詞家としてのセンスを物語るものだ。演奏、歌ともに荒削りながら、余計な言葉など必要ないとばかりにものすごいスピードでロックンロールをたたみかける4人を見て、こいつら何かとんでもないことをやらかしてくれるに違いないと期待せずにいられなかったのだ。
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