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sleepy.ab「二度寝する奴ぁ三度寝る」【第5回】

2012年01月号掲載

sleepy.ab「二度寝する奴ぁ三度寝る」【第5回】

前回、バンドを結成したにも関わらず4年間をサッカーやらゲームやらメンバーが仲良くなるためと託つけて時間を費やしたというところまで話しました。
その間、週に一度金曜日2時間の練習で2、3ヶ月に1本ライブができれば良しという限りなく活動していないんじゃないかという日々を、平和にのんびり過ごしていました。
というわけで今回はライブにまつわる話でもしようかと。

結成当初はライブをするために練習しライブで曲を披露するという、バンドを結成した者達にはライブというものは最大の理由であり目的であり最低限な手段なのであります。
にも関わらずそのライブに関しても自分達のバンドやってるぜ感を感じるためにライブを繰り返していく。やっとかないと自分たちがバンドをやってる感が薄れていくっていう事を危惧したことでライブをしていくのです。
春は出会いと別れの季節だしな、、そろそろ、夏だしはじけようぜ!そろそろ、秋だしなんか感傷的になるね、冬だしあれだな、、、など季節の節目を理由にそろそろという理由で。

ライブにはノルマというものがあって、その頃の札幌の平均ノルマは20000円。そのノルマを毎回1人5000円×4を支払ってライブをする。
ライブハウスからもらった紙(チケット)を親しい友達に配る。
お金を支払ってライブをするということに何の疑問も持っていなかった。
そんな中で自分達の事を何度か見に来てくれる女子高生に気付く。
その子はライブに慣れているのかあちらから話しかけてきた。
そして、こう質問する。
女高『音源とかないんですか?次のライブいつですか?』
成『あっ、へっ、あ、オ、オンゲン?』
女高『スリーピーのファンなんです、次のライブとか決まってたら教えてください。あとチケットあったら売ってくれませんか?』
成『、、、、、、。』頭が真っ白になる。
成『、、、、?』この子はなにを言ってるのだろう?
ファン?FAN?ん?も、もしや騙してる?どっきり?いやそんなどっきり誰が得するよ。次のライブ?って、そりゃ次の季節が来たら?いや言わない方がいいな。チケット?あの紙の事か。ってもしやあの紙売れるのか!?次々と予想だにしない事が一気に襲ってくる。しかもあの紙(チケット)が売れるという事はメンバーもびっくりしてたという始末。
大変失礼だけどもちょっとこの子頭おかしんじゃないかしらと本気で思いました。買ってくれるの!?みたいな。

それくらい自分達の意識が薄かったということですね。
嬉しすぎて理解できないことってあるんだなと思いました。
何かしらの根拠のない得体の知れない自信みたいなものはあるはずなのに普段の音楽的?行いの悪さ故か素直になれないということになるというか。
しかし、その女子高生の、スリーピーいいですね。ファンなんです!という一言は今まで触れられていない心の敏感な部分を刺激した。
でしょ!そうでしょ!やっぱりね!という今までくすぶっていた心の奥底にくすぶっていた気持ちが一気に溢れてきそうでそれはそれは大変でした。
しかしここ最近自分はサッカーばっかりしてたし、季節ごとにライブをやってなんとか凌ごうとしていたりそんな事を言ってもらえる身分でもないしという申し訳なさとの葛藤でとても微妙な対応しかできないのです。
相当にして周到に用意していないと、あっどうも〜くらいしか言えないものです。その子はやはり札幌でのバンド通でありスリーピーも高校のバンドやってる先輩から教えてもらったということだった。
あのバンドすごいよとか、あのバンドとやったら合うだろうな、など色々と札幌バンド事情相関図を教えてもらったりした。

色んな話を聞いてるうちに自分達は今まで不思議なくらいバンド友達や繋がりが出来ていない事にそこで気付く。聞けば聞くほど蚊帳の外であることを。
そこでその札幌音楽界に殴り込む覚悟を決めるも生来の人見知り気質が邪魔をする。急にへい!最近どんな案配ですかっ!てわけにはやはりいかない。
むしろそんな奴はいない。
意外とバンド同士というものは出会いを紐解くと慎重なもので、今は仲の良いバンドでもいや〜君たち話しかけづらいよね?と言うと、それはそっちでしょと言われることが結構ある。
特に結成初期なんかはそんなことが多かった気がする。

話はそれましたが、ファンが1人でもいると知ったそれ以降から、単純な話ですが革命的に自分に変化をもたらしました。ライブを繰り返す中で少しずつ聴いてくれる人が増えていった。
誰かが自分に期待してくれているということがすごく嬉しかった。
その子の一言は大きかった。
それはよくあるささいなことだったのかもしれない。
音楽を志すという覚悟をしたのはその時からだったのかもしれない。
それは大袈裟だけどその時から今までの生きる動機になっている。
誰かが期待している。
だから自分も色んな人や色んな事に期待していきたいなと思ってしまうのです。