FEATURE
sleepy.ab「二度寝する奴ぁ三度寝る」【第13回】
今回は初めてやったバイトの話。高校一年生の夏休みの時の昆布漁のバイト。とても北海道らしいでしょ。根室にも歯舞(はぼまい)という地名があってよく歯舞昆布醤油とか聞いた事あるでしょ?このバイトは北海道のバイトの中でも一番過酷と噂されるバイトの一つ。おじいちゃんが言っていたから多分間違いない。昔はみんな手伝いに行っていたらしい。夏休みの25日間くらい羅臼という根室からは150kmくらいかな?離れた場所。北の国から2002遺言でおなじみの場所。そこで番屋といわれる作業場兼宿泊施設で共同生活をしながら働く。そんな番屋がたくさんあってバイト達は各地に配分される。色んな地方から来た学生や地元の学生なんかがそこで暮らしながら漁を手伝う。東京から出稼ぎで来ている方なんかもいた。なぜこのバイトを選んだかというとなんとなく友達に付いて行っただけだった。海の家感覚で楽しそうみたいな。まあ、それはそれは甘かったよね。毎年何人かが途中で脱走すると初日に聞かされる。。一日一万円という高校生には破格の金額だった。それくらいのことはしてもらうお前達は奴隷だ覚悟しておけという金額だ。
まず朝3時起床。まだ暗い。その日に選抜されたメンバーが船に乗り昆布を取ってくる。これが何より一番大変。小さい5人乗りくらいの船に乗り沖の方まで行く。その時点でもうすでに命の危険を感じる。波がすごいとかいうレベルではない。波そのものというか、波と一体となってるというか、上がって下がっての落差が半端ではない。結構メインのアトラクションなんかよりも断然怖い。ベルトなんて優しいものはない。そうとう技術がいる仕事に思えた。俺なんかにこの仕事をさせるとはなんて無謀なんだと思った。初日は大概全員吐くらしい。
ぐったりしながら昆布をただひたすら引っ張り上げる。これは相当タフな仕事だ。帰りの昆布をこんもり乗せた船の重みがまたより一層恐怖を強くさせた。昆布で隣の人見えないんじゃないかっていうね(盛)。その後穫ってきた昆布を切って同じ長さに揃えて乾かしたり干したりする。早起き含め思ったよりもやっぱり大変な仕事だった。一日目ですぐにくじけた。そして再び船に乗るのだけは勘弁だと思った。ラッキーだったのは初日に、こいつはかなり使えないと即、悟られた俺はその日以来、船に乗る選抜に加わる事はなかった。挽回するチャンスを失った事は残念だったがやはりラッキーな気持ちの方が上回った。そして番屋での共同生活、これがなかなか大変だった。
地元のヤンキー風の年上の鬼みたいな方たち2人、なんとなく想像する赤鬼と青鬼の風貌というか形を彷彿とさせた。赤はがっちりしてて強面で、青は痩せているけど背が高いみたいな。みんなのうたの赤鬼と青鬼のタンゴみたいな感じというか。もちろんあんな可愛くはない。東京から来た出稼ぎのお兄ちゃん、釧路から来ていた同い年くらいの学生、友達と俺の計6人。何だか勝手に刑務所ってこんな感じかなと思わせた。新入りの友達と俺は一番年下らしかったし、とても肩身が狭かった。2日くらいでまず釧路の子がいなくなった。やはり彼も肩身が狭い思いをしていたであろう。赤鬼と青鬼が怖かったんだろう、わかる、わかるぞ。しかも彼は一人で来ていたからなおさらだ。聞く所によるとそこらへんの自転車を盗んで自力で帰ったというじゃないか。帰るといっても車で3、4時間はかかるし自転車だと1日くらい?もっとかな?かかる距離をだ。なんて勇気がある奴だと思ったね。逃げるなんて想像すら俺にはできなかった。だって道とか知らないし、怒られるし、暗いし、遠いし、怒られるし、怒られるし。。そこの番屋以外のバイト達もみんな途中で脱落しては逃げていった。とても信じられなかった。不慣れな環境でとてもきつい、逃げたい、帰りたい、赤と青も怖い(もはや色)。けど逃げるという選択肢を持っていない自分にすごく傷ついた事を憶えている。その逃げるという選択肢があるということこそがとても優越感を抱かせた。術をもっていないという。
ねぇ、めんどくさいでしょ俺ってば。
レッドとブルーは逃げた奴を罵倒した。根性無しが!と。いや、それは違う。根性がなかったらとてもじゃないが逃げられない。俺はそれからというもの逃げる事ばかり考えるようになった。どうやって逃げるか、どうしたら逃げられるか、鬼から逃げ延びたとしてそれからどうするか。いや俺は鬼から逃げたいんじゃない、じゃあ何から逃げたいのか、そうしてるうちに時はただただ過ぎて行った。船によばれることもなかった。そうこうしてる間に慣れていった。よくあることだ。と同時に自分だけの楽しい時間を見つけた。昆布漁は朝が早い分夕方15時には仕事が終わる。とはいっても12時間労働だけど。それから明るいうちに風呂に入りその後一人で夕日の時間に永遠に続いてるのかと思わせるような海岸の防波堤を一人で歩くのが楽しかった。朝は漁場の人達で賑わいを見せる海もその時間には人気がまったくというほどなくなり不思議なくらいひっそりとしていた。夕日が全部落ちた頃には色を失なって本当に世界にポツンと一人になってしまったかのような透明なその感覚はとても寂しくとても優越感を感じた。あの感覚は未だに鮮明に憶えている(道東にはそういう寂しい原風景が多いな)。不思議なもので自分に少しの余裕が出てくると目の前に居るのは赤鬼でも、青鬼でもなんでもなかったりする。そういうものは自分の中で作り出して外に勝手に映し出してしまうものかもしれないな。
そうして何日か経ってすっかり打ち解けたヤンキー達が(ヤンキーに戻します)オキシドールを持ってきて俺と友達の髪を染めた(オキシドールって、、)。夏休みが終わって学校が始まる。染まった髪をみてもちろん先生からめちゃくちゃ詰められる。それに対して一貫して海焼けです、潮焼けです。あっちの人はみんなこの色です!と嘘を突き通した。しかし結局めちゃくちゃ怒られる。
しかし最後まで勤め上げた事、逃げなかったことをすごく周りから褒められた。見直された。自分でも褒められてるうちに凄い事をやってのけたという気持ちになってそういう記憶にすりかわっていた。けどやっぱり逃げるという選択肢がなかったことについては腑に落ちないなという事を思い出したのです。逃げなかったんじゃなくて逃げられなかったんだっていうのは自分が一番解っている。結果的に逃げなくて良かったと言えるんだけど。
逃げるという選択肢を持ちつつも逃げなかったと言いたいものです。ってめんどくせーよやっぱ俺。
neuron tour5本目、岡山のホテルにて。
Related Column
- 2013.09.08 Updated
- sleepy.ab「二度寝する奴ぁ三度寝る」【第15回】
- 2013.07.12 Updated
- sleepy.ab「二度寝する奴ぁ三度寝る」【第14回】
- 2013.05.04 Updated
- sleepy.ab「二度寝する奴ぁ三度寝る」【第13回】
- 2013.03.26 Updated
- sleepy.ab「二度寝する奴ぁ三度寝る」【第12回】
- 2013.01.22 Updated
- sleepy.ab「二度寝する奴ぁ三度寝る」【第11回】
- 2012.11.10 Updated
- sleepy.ab「二度寝する奴ぁ三度寝る」【第10回】
- 2012.09.16 Updated
- sleepy.ab「二度寝する奴ぁ三度寝る」【第9回】
- 2012.07.18 Updated
- sleepy.ab「二度寝する奴ぁ三度寝る」【第8回】
- 2012.05.11 Updated
- sleepy.ab「二度寝する奴ぁ三度寝る」【第7回】
- 2012.03.13 Updated
- sleepy.ab「二度寝する奴ぁ三度寝る」【第6回】
- 2012.01.01 Updated
- sleepy.ab「二度寝する奴ぁ三度寝る」【第5回】
- 2011.11.01 Updated
- sleepy.ab「二度寝する奴ぁ三度寝る」【第4回】
- 2011.09.01 Updated
- sleepy.ab「二度寝する奴ぁ三度寝る」【第3回】
- 2011.07.01 Updated
- sleepy.ab「二度寝する奴ぁ三度寝る」【第2回】
- 2011.05.01 Updated
- sleepy.ab「二度寝する奴ぁ三度寝る」【第1回】
LIVE INFO
- 2025.05.22
-
ORCALAND
Saucy Dog
ReN
片平里菜
w.o.d. ※振替公演
あいみょん
ねぐせ。
オレンジスパイニクラブ
清 竜人25
DYGL
Maki
フリージアン
チリヌルヲワカ
Base Ball Bear
otsumami feat.mikan
ayutthaya
I Don't Like Mondays.
- 2025.05.23
-
ORCALAND
[Alexandros]
Mr.ふぉるて
indigo la End
a flood of circle
THE BAWDIES
DYGL
w.o.d. ※振替公演
ADAM at
Plastic Tree
浅井健一
ゴキゲン帝国
TOMOO
"GREENROOM FESTIVAL 20th Anniversary"
Hakubi
レイラ
LEGO BIG MORL
- 2025.05.24
-
ReN
Mr.ふぉるて
indigo la End
[Alexandros]
GANG PARADE
ヤングスキニー
緑黄色社会
ASP
サカナクション
おいしくるメロンパン
ヤバイTシャツ屋さん / UNISON SQUARE GARDEN / ストレイテナー ほか
コレサワ
THE BACK HORN
片平里菜
ポップしなないで
People In The Box
星野源
Novelbright
藤沢アユミ
Baggy My Life × Comme des familia
mol-74
ネクライトーキー
LACCO TOWER
Plastic Tree
WANIMA
ADAM at
アルコサイト
"ながおか 米百俵フェス 2025"
sumika
浅井健一
SHE'S / SCANDAL / wacci ほか
VOI SQUARE CAT
終活クラブ
SUPER BEAVER
"Shimokitazawa SOUND CRUISING 2025"
DeNeel
the telephones
The Ravens
FUNKIST
HY
the shes gone
"GREENROOM FESTIVAL 20th Anniversary"
LEGO BIG MORL
ビレッジマンズストア
- 2025.05.25
-
バンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHI
ReN
コレサワ
flumpool
a flood of circle
ヤングスキニー
緑黄色社会
GANG PARADE
ASP
サカナクション
THE BAWDIES
10-FEET / The BONEZ / バックドロップシンデレラ ほか
ACIDMAN
片平里菜
星野源
Baggy My Life × Comme des familia
秋山黄色 / This is LAST / Chilli Beans. / reGretGirl ほか
ネクライトーキー
"ながおか 米百俵フェス 2025"
sumika
浅井健一
GLIM SPANKY / 阿部真央 / 和田 唱(TRICERATOPS)ほか
GOOD BYE APRIL × Nolzy × First Love is Never Returned
Mirror,Mirror
HY
the shes gone
"GREENROOM FESTIVAL 20th Anniversary"
Cody・Lee(李)
- 2025.05.26
-
清 竜人25
水中スピカ
Poppin'Party
- 2025.05.29
-
オレンジスパイニクラブ
THE BAWDIES
片平里菜
THEラブ人間×ニッポンの社長
斉藤和義
怒髪天
yummy'g
sumika
BECK
あいみょん
Hump Back
ハンブレッダーズ / w.o.d. / Kanna
CUTMANS
- 2025.05.30
-
THE YELLOW MONKEY
TENDOUJI
オレンジスパイニクラブ
緑黄色社会
yutori
KALMA
サイダーガール
片平里菜
[Alexandros]
a flood of circle
チリヌルヲワカ
水中スピカ
Subway Daydream
女王蜂
Mr.ふぉるて
downy
四星球
Lucky Kilimanjaro
DYGL
MONO NO AWARE
flumpool
射守矢 雄(bloodthirsty butchers) / 山本久土
Nothing's Carved In Stone
- 2025.05.31
-
古墳シスターズ
ポップしなないで
GANG PARADE
怒髪天
チリヌルヲワカ
ヤングスキニー
"hoshioto'25"
People In The Box
indigo la End
浅井健一
[Alexandros]
a flood of circle
竹内アンナ
WHISPER OUT LOUD / Good Grief / CrowsAlive / UNMASK aLIVE
藍坊主
おいしくるメロンパン
斉藤和義
打首獄門同好会
Myuk
THEラブ人間×ニッポンの社長
水中スピカ
THE BAWDIES
Mr.ふぉるて
HY
androp
sumika
Creepy Nuts
"CAMPASS 2025"
eastern youth
Keishi Tanaka
"THE BEACH 2025"
東京スカパラダイスオーケストラ
ASIAN KUNG-FU GENERATION
flumpool
星野源
Official髭男dism
清 竜人25
- 2025.06.01
-
DYGL
YUTORI-SEDAI
古墳シスターズ
怒髪天
Subway Daydream
TENDOUJI
ポップしなないで
おいしくるメロンパン
ヤングスキニー
緑黄色社会
サイダーガール
KALMA
浅井健一
yutori
打首獄門同好会
Myuk
androp
downy
斉藤和義
Baggy My Life × Comme des familia
オレンジスパイニクラブ
WHISPER OUT LOUD / Good Grief / CrowsAlive / UNMASK aLIVE
藍坊主
ネクライトーキー
HY
sumika
Creepy Nuts
WANIMA
サニーデイ・サービス × YOGEE NEW WAVES
arko lemming
DURAN × BONGFATHER
"CAMPASS 2025"
Academic BANANA
FIVE NEW OLD
ASIAN KUNG-FU GENERATION
indigo la End
星野源
Official髭男dism
- 2025.06.04
-
TENDOUJI
SIX LOUNGE
にしな
Saucy Dog
ビレッジマンズストア
Yukimi(LITTLE DRAGON)
オレンジスパイニクラブ
SUPER BEAVER
- 2025.06.06
-
荒谷翔大
にしな
People In The Box
SIX LOUNGE
sumika
downy
VOI SQUARE CAT
スカート
カメレオン・ライム・ウーピーパイ
Bimi
Nothing's Carved In Stone
THE YELLOW MONKEY
四星球
a flood of circle
ASIAN KUNG-FU GENERATION / 10-FEET / 羊文学 / Perfume
KiSS KiSS
"MILLION NEXT FEVER 2025"
東京スカパラダイスオーケストラ
Age Factory × ENTH × Paledusk
銀杏BOYZ
JYOCHO
なきごと
[Alexandros]
キュウソネコカミ
material club
RELEASE INFO
- 2025.05.23
- 2025.05.26
- 2025.05.28
- 2025.05.30
- 2025.06.01
- 2025.06.04
- 2025.06.05
- 2025.06.06
- 2025.06.11
- 2025.06.12
- 2025.06.13
- 2025.06.18
- 2025.06.20
- 2025.06.22
- 2025.06.25
- 2025.06.28
FREE MAGAZINE
-
Cover Artists
トゲナシトゲアリ
Skream! 2025年05月号