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相対性理論、ライヴ・アルバム『調べる相対性理論』全曲をYouTubeで公開

2020.09.12 19:10

相対性理論、ライヴ・アルバム『調べる相対性理論』全曲をYouTubeで公開

昨年発表された相対性理論の初ライヴ・アルバム『調べる相対性理論』。CD、3枚組アナログレコード、配信でリリースされている本作がこのたび、みらいレコーズ公式YouTubeチャンネルにてアルバム全曲公開された。
 

 
相対性理論『調べる相対性理論』Offcial Audio
 
やくしまるえつこの唯一無二の歌声と世界観、オリジナル楽器や即興も駆使したスペーシーなグルーヴから轟音フィードバックまで、ポップ・ミュージックを軸としながらも他に類を見ない圧倒的なアンサンブルを聴かせる近年の相対性理論のライヴ、特に武道館公演"八角形"以降はライヴ盤リリースの要望が数多く寄せられ、待望のライヴ・アルバム『調べる相対性理論』が発表された。
 
コロナ禍でライヴ会場での音楽体験が困難な状況が続くなか、このライヴ・アルバムを聴きながら次の公演を楽しみに待とう。

 
相対性理論の活動当初よりその動向を追い続けている編集者/批評家 松村正人、作家 古川日出男、鈴木慶一(ムーンライダーズ)からの相対性理論『調べる相対性理論』推薦コメントは以下より。

 

彼らの演奏はいまひとつの高みに達しようとしている。
 
たがいに支え合いつつも、個々のミュージシャンシップを遺憾なく発揮するこのごろの相対性理論のライヴほど足を運ぶ価値があるものはそうはないと私はもうしあげたい。
 
あくまでバンド形態でありながら個々のメンバーの音楽性を活かすとともに最大公約数的なポップを担保する。ただしその中心にいるやくしまるえつこは素数のように剰余がない。いや剰余がないどころか剰余そのものなのにそれ自体でしかわりきれない――などと、胡乱な喩えをふりまわしたくなるほど、現在の相対性理論の演奏の場には特異なものがある。
 
―― 松村正人(編集者、批評家)

 

壮大だ。私はこのライブ・アルバムのコメントを「壮大」の文字で始められることに感動してしまう。この『調べる相対性理論』は、時間と空間を再構築して、もう一つの「世界」を創ろうとする試みなのだった。そもそも音楽とはそういうものだった、とは言える。なにしろ時間芸術が音楽なのだから。時間の操作はもちろん、する。ゼロ秒間に聞こえる音楽は存在しないのだ。それと、歌詞(詩)は、当然ながら言葉に時空を織り込む。しかしだ、『調べる相対性理論』に耳および脳および残りの肉体を委ねていると、なにごとかの年代記を体験しているのだ、という気になる。これは音楽的な歴史生成装置なのだな、と。もしも異論があるならば、ここに収録された「わたしは人類」を聴いてみればいい。この歌詞の、それから音の、届けようとしている熱量はほとんど圧倒的で、あなたは「ああ、フィクションには力があるな」とうなずかざるを得ないだろう。それから、「これはフィクションではないな」と悟って、そのことに愕然とするだろう。あなたはその歴史の実在する「世界」に行って、戻ったのだ。あなたは人類史の外側にあっさりと出たのだ。それと、私は、このライブ・アルバムを聴いて、音楽の進化や退化のことを考えないでいるのも、むしろ難しいのではないかと、そうも思う。この『調べる相対性理論』は(ということは、相対性理論のライブは、という意味でもある)シンプルに「宇宙的だ」と評されると思うが、たしかに音の天球図がインストールされている。全部を入れている、とも言い換えられる。轟音、ストリングスの美旋律、美声、つきはなしたクールなドス声。そして、音(音楽)から声を切り離した時に見えるのは、この世界は韻を踏んでいる、という事実だ。それを知れるだけで、私たちが生きる「現実」は逆照射される。
 
しかし、こむずかしい語りはもう止そう。たとえばコンクリートの建物の最上階の部屋にあなたがいて、その部屋の、その天井が、いきなりカパッと開いたような。それがこのアルバムだと私は思う。あなたをエンターテインするのに一切うかれていない演奏者たち、それが相対性理論だと思う。そう、ぜんぜん「浮かれていない」のだ。どっしりしている。私は全体主義が大嫌いな人間だから、音楽もほとんど同じ部分でジャッジする。ここには、ライブ会場のほぼ全員を同じポーズで踊らせるような「全体主義」サウンドはない。我々はただただ、天井がいきなりカパッと開いて、あろうことか天上が見えたことに、「うわー」「うわー」と言いながら個人個人で反応するだけだ。
 
―― 古川日出男(作家)

 

炭酸水のたくさんの泡粒のような音が音楽となる瞬間、
新たな鉱物が生成されるときを記録したような息を飲むライヴ・アルバムだ。
相対性理論のステージは開演前の開場に流れる音楽からして魅力的で、
始まれば演奏、照明、音響、MCすべて高品位だが、
ライヴ・アルバムとして音だけを聴いていて思うのは、
フィジカルとメタフィジカルの双方の融合の圧倒性と、
差し出された音の品格の平均性の
素晴らしさだ。
 
まさに他には無い音楽が鳴り響く。

―― 鈴木慶一(ムーンライダーズ)

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