Japanese
ZIRYOKU
Skream! マガジン 2015年11月号掲載
2015.09.23 @下北沢LIVEHOLIC
Writer 山元 翔一
新たなるイマジネーションは異なるもの同士が交わるところから生じるのだと思う。異質なものが静かに、だが確かな熱量を持って惹かれあい、うねりを生みだし、時代は更新されていくのであろう。
SPACE SHOWER MUSICの自主企画/運営による新しい東名阪ツアー・イベント"ZIRYOKU"が2015年9月より始動した。その名に、内に秘めたる"自力"、初見の聴衆をも引きつける"磁力"、シーンを渡り歩く"時力"、次世代を切り拓く"次力"の4つの意味を込めた、SPACE SHOWER MUSICを担う気鋭の新人によるショーケース・ライヴ的なツアー。その記念すべき初回に名を連ねたのはuchuu,、Age Factory、カラスは真っ白の3組。この三者を並列に聴くリスナーはほとんどいないのでは?とも思われる組み合わせ。だからこそ意味があり、実りのあるものだったのではなかろうか、と感じさせられたツアー最終日、東京公演をレポートする。
一番手はuchuu,。この日は、最新作『HELLO,HELLO,HELLO,』と同じく「AnswerSong」でスタート。ギターをかき鳴らしながら感触を探るK(Vo/Gt/Prog)の鋭い眼差しは、ここではないどこかをまっすぐ射抜くようで印象的であった。こちらにも緊張感が伝わる幕開けから「TimeRP」に繋ぐ。"uchuu,"というひとつの意思を共有する生命体が、今という瞬間を刻みつける――ステージ上の5人を見ているとそんな感覚を覚える。キーボードのNaoを正式メンバーに迎えた新体制となって間もないライヴながらもいいグルーヴと一体感を感じさせた。
3組で東名阪を回ってきたツアーを振り返り、噛みしめるようなMCを挟み「million days, million nights」が続く。繰り返される日常がかけがえのないものであることを思い出させる。sujin(Ba)がルートで刻むベース・ラインも心地良く、"今日は一日しかない。今日という日に僕らを観に来てくれてありがとう"という演奏中にKが放った言葉も象徴的だった。浮遊感とメロウさのある「labyrinth」がそれに続き、このツアーのために用意してきたという新曲が披露された。その場のほとんどが知らないはずの新曲でグッと観客の心を掴む、彼らの"磁力"に魅せられた瞬間だった。その熱量そのままに突破力のある「HARDDISK」と「HAPPY」を畳み掛け、さらにフロアを沸かす。uchuu,は、一瞬の儚さと感傷を増幅させるダンス・ミュージックの本質を体現している、ということをそのとき確かに実感することができた。
"楽しいことでみんなと繋がりたい"。なんてことのないKの言葉がどこかぎこちなさの残る観客の心をほぐしたのだろうか、最後に披露された「HELLO」では多くの拳が振り上げられ、シンガロングが鳴り響く光景を見ることができた。
二番手はAge Factory。今回のツアーを圧倒的に異質なものにしていたのは彼らの存在によるところが大きい。身を切り刻み、血を滲ませるような清水エイスケ(Vo/Gt)の歌声、ハードコアや硬派なオルタナを基調としたひりつきながらも凛としたサウンド、メタルやポスト・ロックを通過した重厚且つテクニカルなドラミング――そして何より甘えや青臭さを排し、生きるという行為の儚さを人間臭く綴り吐き出される清水の詞、その言葉を直情的に届けることができるバンドの"自力"は圧倒的であった。
不意にギターのストロークが零れ、清水が"奈良県から来ましたAge Factoryです"とぶっきらぼうに告げ、ステージはスタートした。USエモのように瑞々しいギターと清水の歌声で空気を一瞬で塗り変えた「真空から」、そしてブチ切れた攻撃性で突っ走る「NOHARA」と立て続けにプレイ。理性を介さず感覚に訴えかける彼らのサウンドと鬼気迫る演奏に初見の者は度肝を抜かれたことだろう。一転して変拍子を取り入れたゆるやかでメランコリックな立ち上がりから加速し疾走する「プールサイドガール」でまた違ったバンドの顔を見せる。激情もメランコリアも根本的には同質のものなのだということに気づかされたのだった。
"すべてがわかったなら、存在する意味がわからない"と清水がぽつりと言った。そして「海を見たいと思う」が演奏された。知らないことや理解できないことがあるから、それを知りたいと思うから人は生きるのだと彼は教えてくれたように思う。清水の命はあまりに剥き出しで人一倍、怒りや感傷、そして虚無に曝されている。それ故に彼の紡ぐ音楽は生々しく聴く者の胸を打つのだろうか、とこのとき感じさせられたのだった。そして、やるしかないという事実を突きつけられた自らを奮い立たせる応援歌「さらば街よ」、eastern youth的な叙情を纏い、かけがえのない日常を歌う「ロードショー」、清水が嗄れた声を振り絞った「グリーングリーン」で彼らのステージは幕を下ろした。
東名阪回ってきた"ZIRYOKU"の大トリは、カラスは真っ白。今年の3月にオチ・ザ・ファンク(Ba)を招き入れた新体制となり、その第一歩的なニュアンスの濃いミニ・アルバム『ヒアリズム』をこのライヴのちょうど3週間前にリリースしたばかりの彼ら。そのステージでは、どこか不安定さも孕みながらも、次のステップに移行するために掲げた確固としたヴィジョンに向けて突き進むバンドの強い意志を感じ取ることができた。
1曲目はカラスは真っ白サウンドのど真ん中を行く「fake!fake!」。軽やかさと強靭さ、ポップネスとファンクネスを両立させるカラスは真っ白の本義を見せつける。そしてヤギヌマ カナ(Vo/Gt)のアンニュイなヴォーカルとメロウな演奏が冴える「night museum」、渋谷系ギター・ポップ的な甘さを漂わす「スカート・スカート・スリープ」と「ニュークリアライザー」が続く。ブラック・ミュージックのコアなエッセンスをJ-POPの概念に落とし込み、サビでパッとポップに開け突き抜ける――最新作『ヒアリズム』で顕著となったそのポップネスと、自由に暴れまわりながらもヤギヌマの歌を引き立たせることに注力する4人のプレイヤビリティの高さは、彼らのネクスト・ブレイクとしての"次力"を感じさせたポイントであった。
ここで、この3組で回ったツアーを振り返る。バンド同士がしっかりと手を組み、ひとつのツアーを作り上げるという経験は、彼らのこれからの活動におけるひとつの糧になることだろう。オチの超絶技巧で魅せたベース・ソロ・タイムを挟み、今の彼らのモードを最もよく体現する「ヒズムリアリズム」が披露された。4人の鳴らす音のみという削ぎ落とされたソリッドな音像であったが故に、楽曲の持つキャッチーな魅力が引き立つ。そして続く「フミンショータイム」で、シミズ コウヘイ(Gt/MC)による振り付け指導が入り、フロアに居合わせたレーベル関係者をも巻き込むアッパー且つハートウォーミングな盛り上がりを生み出す。本編は、カラスは真っ白サウンドのひとつの到達地点たる完全無欠さを備えた「HIMITSUスパーク」で終了。タイヘイ(Dr)の生み出す性急なビートとオチから放出されるグルーヴ、シミズの高速ギター・ワーク、それをヤギヌマが唯我独尊的ヴォーカリゼーションで乗りこなす。めくるめく高純度のポップネスが展開する圧倒的な突破力で駆け抜けた。
アンコールは"じれったいの じれったいの"というパンチライン的キャッチーさのある歌い出しの「革命前夜」。クライマックスで今の4人の持てるすべてをカチッとはめてくるバンドとしての強度を見せつける。最後の最後に演奏を放棄して全力で踊り狂うシミズの姿が印象的であった。それにしても、ポップだとかファンクだとかということは関係なく、要は楽しいか楽しくないか、そういうエンターテイメントとしての無欠さを彼らは今追求しているのではないだろうかと思わされたステージであった。
三者三様の盛り上がりを見せたショーケース・ツアー"ZIRYOKU"。玉石混交のロック・シーンにおいて、こういった確固とした志を掲げたレーベル主催イベントというのは意味を持ったものとして今後一層求められるように思う。まだ1回目の開催を終えたところに過ぎないが回を重ねるごとに、より深みを持ったものとしてシーンに影響を与える企画に成長していくことを願ってやまない。そして何より、出演したバンドたちが時代を牽引していくような存在になればこそ、と筆者の思いをここに記しておきたい。
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