Japanese
SCOOBIE DO
Skream! マガジン 2015年11月号掲載
2015.10.04 @日比谷野外大音楽堂
Writer 天野 史彬
本当に、魔法がかかったかのような3時間。こんな光景が見たいから僕は音楽を聴いてきたし、これからも聴き続けていくのだと確信させるような瞬間が連続して巻き起こる奇跡のような時間。"こんなこと、1歩外に出てやったら警察に捕まっちゃうんだから!"と笑い混じりに語ったコヤマシュウ(Vo)。そう、こんな魔法のような時間が存在したことを、世界は信じないかもしれない。世界の残酷な冷たさは、こんな奇跡の存在を真っ向から押し潰してくるだろう。でも、これは音楽の話。ロックンロールの話なのだ。奴らには知られてはいけない秘密の話。僕とあなただけが知り得る特別なやり方の話。SCOOBIE DO、9年ぶりの日比谷野外大音楽堂ワンマン。SCOOBIE DOは野音という都会のど真ん中の大舞台を、現実を超える、歓喜と感動と情熱に満ちた魔法の空間へと変えてみせた。
16時開演とあって、まだ明るく青空の広がる中、秋の澄んだ空気の中に柔らかく溶けていくような、美しく爽やかなメロディが響き渡る。1曲目「バンドワゴン・ア・ゴーゴー」から、「結晶」、「Get Up」、「パレード」と、ソウルフルなメロディと力強いグルーヴが融合した、SCOOBIE流の極上ポップ・チューンの連打で幕開け。初っ端から会場中が大合唱&ハンド・クラップの嵐。この日、見事に満員となった野音の会場だが、周りを見渡してみて驚くのは、客層のあまりの幅広さ。まさに老若男女といった感じで、長年のファンといった風情の人から、10代後半~20代前半あたりとおぼしき若者たち、親に連れられてきた子供たちもたくさんいた。音楽的にはファンク、ヒップホップ、ソウル、ジャズ、昭和歌謡へ広く深く根を張りながらも、誰も阻害しない、徹底的に楽しませる、そして絶対的に"ポップ"で在り続けるバンドの姿勢が、この求心力を生んでいるのだろう。
5曲目の「PLUS ONE MORE」から雰囲気は一転、強烈にファンクネスを増したビートが会場を劇的に揺らし始める。コヤマがステージ上から叫んだ"お客じゃなくて主役として楽しんでくれ!"という言葉が、彼らがファンのことを"PLUS ONE MORE"と呼ぶ、その所以を端的に証明している。"1歩外に出りゃ、金で回る世界もある。コネで回る世界もある。でも今日、ここだけはソウルで回ってるんだ!"というMCに続き、Marvin Gayeの歴史的名作と同名で、しかも社会に警笛を鳴らすメッセージ性も受け継いでいる「What's Goin' On」を披露。そこから、「Beautiful Days」、「アフィルグ」へとバンドの打ち出すファンクネスはどんどんディープに激しくなっていくが、さらに熱を増したリアクションで応戦してくオーディエンス。ブラック・ミュージック由来のファンキーなグルーヴにも物怖じすることなく、むしろ柔軟に自由にそれぞれが踊りまくっている様を見ると、やはりバンドとオーディエンスとは一緒に成長するものなのだと強く実感させられる。
場内に熱狂の磁場が渦巻いたあとは一転、「Oh Yeah!」で再び爽やかな風を吹かせ、さらに「ゆうべあのこが」、「ミラクルズ」、「ラストナンバー」、「茜色が燃えるとき」と、夕暮れの悲しい美しさに人知れず涙を流すような、バンドのメロウ且つダンディーな側面を見せつけた。そして続く「ROPPONGI」では、ニュー・ウェーヴ感の溢れる鋭角なファンクネスで都会の猥雑な空気感を醸し出し、場内を艶やか且つ危険な香りで包み込む。この「ROPPONGI」は向井秀徳(ZAZEN BOYS)をエンジニアに迎えて制作されたミニ・アルバム『トラウマティック・ガール』に収録された1曲で、『トラウマティック・ガール』は、SCOOBIEが2006年に立ち上げたCHAMP RECORDSからの第1作目の作品にあたる。2006年6月に行われた日比谷野音ワンマンを最後にメジャー・レーベルから離れ、それまでの所属事務所からも離れることになったSCOOBIE。そこから新たに自分たちの足で歩き始めた、その最初の1歩となる作品の曲を、9年越しに野音で演奏したことに本人たちもきっと大きな意味を感じていたことだろう。「きまぐれ天使」を切なくもしっとりと聴かせたあとは、「Steppin' Loud」、「MIGHTY SWING」へと一気にスピードを上げていく。性急に、力強く。この9年間、SCOOBIE DOがそうであったように。
次第に日も暮れてあたりも暗くなってきたころ、コヤマが語り始めたのは、2011年3月11日に起こった東日本大震災のことだった。あのときに彼が考えた、音楽のこと、ロックンロールのこと。そして悩んだ末に、"ずっとやる"という結論に達したこと。"俺は君の味方だから"という言葉のあとに続いて始まったのは、「月光」、続いて「最終列車」。それは今までの演奏にあった"熱さ"ではなく、目の前のオーディエンスに対して何かを捧げるような、与えようとするような、慈愛にも似た"あたたかさ"の込められた演奏だった。この演奏を聴きながら、以前メンバーに取材をしたときに、彼らが"ロック・バンドはお客さんに勇気を与えるものだ"と語っていたことを思い出した。この9年間のバンドの道のりが決して楽しいだけのものではなかったことは、震災に触れたコヤマのMCでも明らかだった。だが、それでも目の前の誰かを楽しませるために、あなたに勇気を与えるために音楽を続けてきたSCOOBIE。彼らは正真正銘のロック・ヒーローだった。何があっても、ヒーローであり続けた。
ファンクにもロックンロールにも、根っこにはブルースがある。ブルースとは悲しみだ。では何故、ブルース(悲しみ)はR&B、ソウル、ファンク、ヒップホップへと、あるいはロックンロールへと姿を変えながら、今なお前進し続けているのか? それは、"この世界は悲しみに満ちている"という前提を持ちながら、それでも僕らは"生まれてきてよかった!"と言いたいからだ。それでも"世界は素晴らしい!"と心の底から叫びたいからだ。世の中が絶望に満ちていることぐらい、生きていれば嫌でも突きつけられる。だからどうした? それでも僕らは希望を持ちたいのだ。だから音楽を聴く。ファンクを、ソウルを、ロックンロールを聴く。20曲目は「イキガイ」。胸が躍るようなモータウン・ビートに乗せて会場中で弾けるハンド・クラップ。"君とロックンロールするのが生きがいだ!"とコヤマが言う。この日、コヤマはずっとオーディエンスに向けて"君"と呼びかけた。"君たち"とか"お前ら"なんて言わなかった。ひとりひとりのソウルに向かって、彼は呼びかけたのだ。都会の闇夜の真ん中のステージで、バンドが輝いて見えたのは、ライトに照らされているからだけではなかった。
会場があたたかさで包まれたあとは、再び熱狂が訪れる。野外の会場で、あるはずのないミラーボールが回り始める。「真夜中のダンスホール」、新曲「LIVE CHAMP」、「トラウマティック・ガール」、「Disco Ride」「ロックンロールは未定」、「Back On」へと、立て続けに披露されるダンス・チューンに、ひたすら増幅していくカタルシス。日々の暮らしの中では絶対に味わうことができない祝祭感。それに背徳感に全能感! これぞ音楽! ロックンロールにファンク、ヒップホップ。でもそれだけじゃない、スカやラテンも昇華した雑多なビートに合わせて蠢くように踊り狂う老若男女のオーディエンスたち。僕は後ろの方の席から観ていたのだが、数多の人々が蠢くように踊り狂う光景は圧巻のひと言だった。どんな大型フェスのメイン・アクトでも味わえない、今の日本ではSCOOBIEにしか産み出せない光景だろう。本編の最後は「新しい夜明け」。その穏やかなメロディで、どこまでも大きなスケール感と眼差しで、バンドの、そしてオーディエンスの新たな夜明けを指し示してみせた。
でも、夜はまだまだ終わらない。そう、僕らが踊りを止めない限り、夜は続くのだ。鳴り止まない拍手に応えて再登場したメンバー、アンコールは「つづきのメロディー」のロマンティックな熱演に始まり、「やっぱ音楽は素晴らしい」で一気にぶち上げる! ラップ・パートはマツキ(Gt)、ナガイケ(Ba)、MOBY(Dr)が圧巻の演奏を披露しながらも完璧にキメてみせる。続く「Little Sweet Lover」の強烈にフリーキーなファンク・サウンドでオーディエンスを絶頂にまでイカせて、最初のアンコールは終了。でも、まだ終わらない。最後の最後、ダブル・アンコール。SCOOBIE DO、9年越しの大舞台の最後を飾ったのは、デビュー曲「夕焼けのメロディー」だった。
"どこにいようとも 何をしようとも/決して忘れない 二度とは消えない/細い裏道を一人で帰るよ/胸を締めつける 夕焼けのメロディー"
いつでも彼らはここに戻ってくるのだろう。たったひとりで見たあの夕焼け。でも、別の道で他の誰かも見たかもしれない、あの夕焼け。そのとき聴こえた、あのメロディ。あの夕焼け空に、いつだって戻って来ることができるから、消えない想いがそこにはあるから、だから、何度でも旅立てる。誰も歩いたことのない道で、また僕らが出会えるように。生きる勇気が消えないように。音楽に、ひとりひとりのソウルに希望を描き続けたバンドが辿り着いた境地にして、新たなる旅立ちの日。SCOOBIE DO、9年ぶりの日比谷野音ワンマン。本当に、素晴らしいライヴだった。
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