Overseas
PHOENIX
Skream! マガジン 2014年02月号掲載
2014.01.13 @新木場STUDIO COAST
Writer 吉羽 さおり
前回のジャパン・ツアーからは約4年ぶり。5作目のアルバム『Bankrupt!』を引っ提げて来日を果たしたPHOENIX。会場となったSTUDIO COASTはチケット完売の満員状態、観客の熱気が立ち込めるなか、メンバーが登場した。1曲目はアルバムのオープニング曲でもある「Entertainment」。イントロのエキゾチックな鍵盤のフレーズで、会場は瞬く間に沸騰していく。音源よりもボトムがずっしりと響きわたって、踊ったり、ジャンプしたりにぴったりで、とにかくダンサブル。続く『Wolfgang Amadeus Phoenix』からの「Lasso」、シンガロングが巻き起こった「Lisztmania」と、ボルテージが右肩上がりのまま、1stアルバム『United』から甘酸っぱいロックンロール「Too Young」を聴かせると、Thomas(Vo)はフロアに"サンキュー、アリガトウ"の言葉を投げた。もちろんこの言葉はうれしいけれど、PHOENIXファンにとっては、その後の曲終わりに自然に飛び出た"メルシー・ボークー!"のほうが、ぐっときたかもしれない。
『Bankrupt!』と、前作『Wolfgang Amadeus Phoenix』を中心に組まれた、カラフルでソウルフルなバンド・アンサンブルや、貫録すら滲んでくる大人の戯れやセクシーさも重厚な音に練り込まれていてと、一見、隙なしではあるけれど、ところどころで序盤の「Too Young」や、カジュアルでストリート感のある「Run Run Run」、あるいは「Consolation Prizes」など以前の曲が抜群のタイミングで挟み込まれる。ラフなスケッチのようにソリッドなアンサンブルで、疾走感たっぷりのロックンロールをぶっ飛ばして、やんちゃに突っ走ったかと思うと、続く曲でいつの間にか壮大なランドスケープを描き、踊っていた観客たちをイマジネイティヴな景色へと連れ立っていく。観客たちを大きく翻弄しながら、次はどこへ行くのか、なにが見えるのかとワクワクするライヴ。こんなに骨太なステージをするバンドだったかなと、改めて思うライヴだった。これだけでも満足度の高いステージだったけれど、アンコールではフロアから2階席すべての人と挨拶をするように、Thomasはマイクを片手にステージから、バルコニー席、2階席を伝って、会場をぐるりと1周。落っこちやしないかちょっとヒヤヒヤしたものの、最後の最後まで、彼らが何をしでかしてくれるのか目も耳も離せないエキサイティングな一夜だった。
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