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INTERVIEW

Japanese

MOS

2025年12月号掲載

MOS

Member:Erna(Tb) Miyu(Tp) AMI(A.Sax) Lotta(T.Sax)

Interviewer:吉羽 さおり

全員音大出身の、テナー・サックス、アルト・サックス、トロンボーン、トランペットの管楽器編成によるガールズ・グループ、MOS。管楽器(ブラス)とダンスを融合した"ブラダン"というスタイルで、2023年にはアメリカのオーディション番組"America's Got Talent"でセミファイナルに進出し、"ブラダン"という無二の魅力を確立した。そこからはライヴハウスを拠点に、その音楽性もロックやパンク、メロコア、スカへと広げ、さらにパワフルなグループへと進化を遂げている。10月にリリースした最新作『HAPPINESS IS』は、管楽器ならではのハイボルテージでエモーショナルな曲が並び、ロック・シーンへと楽しく華やかに乗り込んでいく一枚となっている。

-現在、10月からスタートした"GET LUCKY TOUR"の真っ最中ですが、ツアーの感触はいかがですか。

AMI:現時点でちょうど半分終わったところなんですけど、新しいEP『HAPPINESS IS』(2025年10月リリース)を引っ提げたツアーなので、ツアーと一緒に曲も育っている最中という感じです。すごく楽しく回らせてもらっています。

Erna:会場によってお客さんの感じも違って。土地によっていろんな色があるなというのを感じますね。

-この数年でMOSのサウンドは、よりロックでパンキッシュなサウンドにもなっていますよね。このサウンド面での変化は、バンドとしてはどういう流れがあってのものなんですか?

Lotta:実はコロナ禍が始まる直前くらいに、アルバムを作ってライヴを回ろうとしていたんですけど、ああなってしまって。現場は無理だねとなって、しばらくの間SNSに振り切った活動を続けてました。でももともとやりたかったことは現場だったので、コロナ禍を経て、ライヴハウスに出ていこうかっていうのが、ここ数年の感じなんです。

-それまでの活動はどういったものがメインだったんですか?

Lotta:イベント等に出させてもらったりとかでしたね。MOSがやろうとしていること自体モデルがないものだったので、制作をしているみたいな感じでした。 −MOSの始まりとしては、ブラス・バンド+ダンス、"ブラダン"という新しい形のものでしたね。

AMI:そうですね。やりながら"ブラダン"というものができあがっていった感じで。今では自分たちのものだなという感覚があるし、唯一無二なんじゃないかという自負はありますね。

-自分たちの武器が完成して、じゃあここからはライヴハウスに積極的に乗り込んでいこうと。

Lotta:その"ブラダン"で、"America's Got Talent"(アメリカの人気オーディション番組。MOSはセミファイナルへ進出)に出演して、そこである種の区切りというか、この形でいいんだなという気持ちが持てたんです。それで、ライヴ活動をしたいなというのを日本から始めている感じですね。で、ライヴハウスに出ていくには、日本だったらロック・シーンが一番熱くて、自分たちも一番熱くなれる音楽だったので。MOSのパワフルなサウンド感にジャンルとしてもマッチしてるかなっていうのはありました。

-4人のルーツにもロックやパンクはあったんですか?

Lotta:ある人もいればない人もいるんですけど、私はすごく好きでしたね。めちゃくちゃTHE BEATLESオタクで、THE BEATLESがベースにありつつ、日本のラウド・シーンも大好きだし。思春期の頃はめちゃくちゃ青春パンクとかも聴いてました。

-Miyuさんはどうですか。

Miyu:私はもともとトランペットをマーチング・バンドから始めていて、音楽大学でもクラシックを勉強して。MOSに入ってからいろんなジャンルをやるようになって、邦ロックや爽やか系の音楽は聴いていたんですけど、どちらかと言ったら自分はショーとかが好きだったんです。ディズニーのパレードみたいな。こうしてロックをやるには、最初はちょっと気持ちを変えるところはありましたけど、でも今、めちゃめちゃ楽しいです。

-AMIさんは。

AMI:音楽はいろんなジャンルが好きで、自分がサックスでルーツにしているのはファンクとかソウル、モータウンとかもすごく好きで。ただその中で、スカ・バンドとかも過去にやっていたんです。ネオ・スカっていう、THE SPECIALSとかの系統のバンドだったんですけど、サウンド感も好きだし、何よりもファッションやカルチャーが好きだったんですよね。MOSに入って、"America's Got Talent"に出たり"ブラダン"をやっていた時期は、あまりそういった自分の背景は出してこなかったんですけど、今こうしてロックやるぜってなって、ライヴハウスを回っていくなかで、昔の自分が好きだったものが帰ってきて。ある意味、素の自分を出せている感覚があります。

-ではErnaさんは。

Erna:私はロックをあまり聴いてこなかったんです。MOSのファンの方も、ロックを聴いてる方ばかりでなくて、MOSのライヴに来て初めてそういう音楽を聴いてるとか、ロックのようなジャンルの現場に初めて行くという方も結構多くいるので。そういうファンの方たちとMOSとで新しい境地を探りながらやっているのかなっていうのは感じています。

-この数年はMOSとしても挑戦しながら進んできたんですね。

AMI:そうですね。最新の2枚、『The GAME』(2025年3月リリースのEP)と『HAPPINESS IS』は改めて起点になった気がします。

-これまでライヴに来ていた方たちには、音楽的にパワフルになって驚かれたりしなかったんですか?

AMI:それまでもやりたいことはライヴハウスで熱いライヴをすることで、その流れ自体は変わっていなかったので。そのなかで、きっと新たな挑戦をしてるんだなと分かってくれてる部分は多かったんじゃないかなと思っていますね。

-前作『The GAME』はどのように作られていったんですか?

AMI:それまでは曲作りのテーマとして踊るというものがあったので、そこを気にしながら作っている部分がありました。そうしたテーマを取っ払ったことで、できることが増えた感覚でした。できることを全部やろうっていう感じでしたね。

-振り切り方としては、例えばブラスだけじゃなくて歌を乗せることも可能です。そういう選択肢はなかったんですね。

Lotta:ないですね、現状は。例えば、一緒に高め合えそうなシンガーの方とかがいたらフィーチャリング等をやる世界線は全然考えているんですけど、今はこの4人でという思いですね。

-この4人の音だからこそのスタイルを極めようと。そこで、制作する上で気を付けることや重視することはあるんですか?

Lotta:やはり歌詞、歌がないぶん、ニュアンスを間違えたらただのBGMになる可能性もあるので、いかにストーリー付けをするかということを楽しんでいる感じですね。内容もですけど、曲のタイトルにもこだわりを持って。そのタイトルだけ見て、どんな感じかイメージが付くようなものにしたいと心掛けてはいます。

-最新作『HAPPINESS IS』に「覚悟」という曲がありますね。「覚悟」はまさに今のMOSの前のめりな気持ちが伝わる曲で、"進め先へ!"や"行け!"というシンガロングがある熱い曲でした。

Lotta:「覚悟」は最初から決まってましたよね?

AMI:うん、ちゃんとみんなが叫べる、歌える言葉も欲しいねっていう。

Lotta:"行け!"という単語を連呼したいと。我々のアンセムにもなりつつ、人々を鼓舞できるような曲がライヴでは必要だよねっていう話からスタートした曲です。

AMI:こうしてお客さんも声を出せる曲で、ちゃんと歌詞というか言葉になっているのって、実は初かもしれない。

Lotta:今までだと、"Wow wow"とか"Yeah"はあったけど。

AMI:ちゃんとワードとして頭に残るもので、且つ英語ではなくて日本語でというのは「覚悟」が初めてだし、漢字の曲タイトルもMOSはかなり珍しくて。

Lotta:だから、ちょっと照れたっすね(笑)。

-バンドの意志を感じました。これはライヴをしっかり向き合ってやってきたからこそ、観客とキャッチボールできるような曲ができあがったんだろうなというバンドの流れも感じられる曲です。

Lotta:「覚悟」はライヴで観て、歌ってほしいです。今、ちょっとライヴで不思議な感じになっていて、泣いてる人がいたりめっちゃ笑顔の人がいたり、カオスな状態なんですけど、やっぱりこれおもろいなって思いますね。

-泣いてくれるっていうのも最高ですよね。言葉としては強いワードではありますが、何かグッとくる歌、歌詞のストーリーっていうよりも、音楽的なことで泣いてくれてるわけですし。最高じゃないですか。

AMI:歌詞がないぶん、曲の具体的なストーリーの決まりはないので。みんなそれぞれ、そのときの環境で、自分にとっての"行け!"がどういうものなのかを受け取ってもらえていると思います。それが強みかもしれないし、自分的にはすごくいいなと思っているところですね。

-この、"行け!"、"進め先へ!"は、どなたが?

Lotta:そのサビ部分はAMIとLottaですね。ErnaとMiyuは演奏してます。演奏をしてると喋れない楽器なので、上手くやってる感じですね(笑)。

Erna:でもこの曲は、吹いてても熱い感じがあるよね。

Miyu:"行け!"と言えないですけど。

Erna:私たちは金管楽器で、音的にいっそう熱くなるようなサウンドでもあるので。吹いていても気持ちは一緒にいけてる感じがします。

Miyu:ずっと吹いてるので、自分たちも頑張らなきゃっていう、それを応援されてる気持ちにもなったりするし(笑)。ライヴでも、お互いに応援し合っているなって感じられる瞬間ですね。