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INTERVIEW

Japanese

TOKYOてふてふ

2025年02月号掲載

TOKYOてふてふ

Member:楪おうひ めありらすと ちむら詩文 神狩こはく世會

Interviewer:吉羽 さおり

弱いところも全部曝け出して表現したい


-おうひさんはどうですか。

楪おうひ:最初のほうに"数えきれない傷を共にする。"というパートがあるんですけど、こういうちょっと静かな、抑えた歌のパートをあまり歌ってこなくて、今回は挑戦が多いかもと思って。儚くて、でも芯のある強さを歌で出したくて、意識して歌ってますね。

ちむら詩文:2番でもそうだよね。今回はちょっと静かめのパートを歌ってることが多い。

楪おうひ:これまではパワフルなパートを歌うことが多かったし、自分はこういう感情とか、歌の表現が足りてなかったなと思っていたんですけど、曲を通してもっと自分の魅力を出せるようになりたいなっていうのはありました。

ちむら詩文:これは普段パワフルなおうひさんだからこそだよね。実は繊細なところもあるじゃん、楽屋で泣いちゃったりとかもするじゃん(笑)。

楪おうひ:そうそう(笑)。

ちむら詩文:そういうのももっと曝け出せってことかも。

-歌うパートにはその人が歌う理由っていうのがありますよね。

ちむら詩文:歌詞割を貰ったときも"誰っぽい"とかあるもんね。今回は"ここは自分なんだ"とか"ここは誰々なんだ、新鮮だな"っていうのは多かったかもしれないです。

めありらすと:私は自分がサビを歌うとは思ってなかったから、めっちゃ挑戦だなって思いました、"頑張るー"って。

-2サビはめありさんスタートですもんね。

めありらすと:はい、背負います!

-この曲はライヴで歌っていくことで、また変化を遂げていきそうですよね。その都度、いろんな感情が湧き出てくるような曲になっていくのでは。

楪おうひ:変わっていくと思います。今はまだ伝えるのに必死なところがありますけど、もっと違う表現もできると感じているし、歌い続けて変わってくる部分も絶対にあると思うので。このツアーでもたくさんやっていくので、それが楽しみだなって思います。

めありらすと:蜃気楼と過ごせば過ごす程変わっていきそうだよね。

ちむら詩文:弱いところも全部曝け出して歌えるようになりたい。

-先程、てふてふと言えばダンスという話がありましたが、この曲の振付はどんな感じに?

めありらすと:たくさん踊っている曲ですね。今まではぜん君。さんみたいにならなきゃって思いがあったから、振りをなくしてステージの最前線に出て煽るみたいなことも前々回("TOKYOてふてふ 26都市30公演ONEMAN TOUR「NNEEOORAGE〜翔翔〜」")や前回のツアーとかではやったりもしていたんですけど。でもそればかりやってたらいいわけじゃないし、てふてふの良さがそこだけにあるわけでもないし、ぜん君。さんは2ついらないですしね。そう思ったときに、てふてふの良さは歌の世界を美しく表現できるところだって思って、踊ることにしようって。この曲はサビでも踊ってます。

-振付はめありらすとさんなんですね。

ちむら詩文:ほとんど全てやってくれました。私は"ここはどうしよう"っていうところだけ一緒にやって。昨年のんのが抜けちゃったけど、これまでは基本的にのんのが振付をしてくれていたんです。のんのの振付がてふてふの"らしさ"になっていて。昨年は4人体制になってからの新曲がなくて、既存曲のやり方を変えたりはしたんですけど、新たに振付をすることもなかったんです。でもこうしててふてふとして新曲をリリースするとなってダンスをしなかったら、"のんのがいなかったらこんなもんなんだね"ってなるのは嫌で。"らしさ"を自分たちで更新していかないともったいないなって。らすちゃんが、のんのの振付に負けたくないと思っているのも感じていたから、そういう気持ちも一緒に話しながら、じゃあもっとこういうふうにしようって考えましたね。

めありらすと:やっぱり踊っているてふてふが好きな人もいると思うし、せっかく培ってきたものもなくしたくないし、踊りもちゃんとできる4人のてふてふであり続けることが、のんのを好きだった人の気持ちにも沿えるかなと思うんです。

ちむら詩文:なかったことにはできないし、したくないから。

-さらにいいグループになっていますね。この曲ならではの振りで言うと、どんなところがポイントですか。

ちむら詩文:やっぱりサビかな?

めありらすと:そもそもサビだけ踊らない曲が多かったから。サビで踊ってるのがまず珍しい気がする。「FLYASDUST」はサビの歌い出しが1人だから、これはみんなで踊れるなと思って。

楪おうひ:あとラスサビで全員が歌うところがあるんですけど、そこはあえて互いに目を合わせずに歌っているんです。"愛して欲しくて 上手く愛せないと嘆いた"っていう、自分自身に問い掛けているところでもあるので。目を合わせず、でも必死に伝えようとしてるんだって感じがすごく好き。

神狩こはく世會:気持ちが入るよね。そこからの"紡いできたのは 確かな..."からの流れがまた良くて。

ちむら詩文:そのワンフレーズにも歴史が詰まっているなって。

めありらすと:あとは落ちサビ前の間奏で、全員でゴリゴリに踊るんですけど、その後にピアノが入ってきたところから、歌っているちむを(ちむら詩文)3人が囲むような可憐な振付があって、その円の中でちむが藻掻くんです。そこはてふてふの、相反する思いを見せる振付になっているかなって。

ちむら詩文:外側はきれいに見えているかもしれないけど、内側で混乱している、こんなに藻掻いているんだっていうのがてふてふらしいよね。てふてふが表現したい人間らしい部分かもしれない。

-今回はより感情だったり、自分の内側を曝け出している感じがあると思うんですが、てふてふってこれまではわりと器用さがあるというか、いろんなことが上手にできる感じもありましたよね。

めありらすと:ある気がします。

神狩こはく世會:うん、かっこつけだから(笑)。

ちむら詩文:全部をきれいに見せようとしすぎていたところはありました。悔しいとか悲しいとか、一般的にネガティヴと言われる感情も、ライヴとか表現の上では見せてもいいはずなのに、"全然悲しくないです"とか"全然悔しくないです、私たちきれいにできます"みたいな、それこそかっこつけなところがあって。昨年だけでも本当にいろんなことがあったのにもかかわらず、ずっと平気みたいな顔をしていて。そういうところを曝け出せなかったのが結構昨年の反省点だったから、これからは上手とかきれいだけじゃないところもどんどん出したいなって思ってます。

-なぜそのかっこつけるところができあがっちゃたんだと思いますか。

神狩こはく世會:てふてふは最初7人で始まったんですけど、7人でなんとかやってきた感じだったから。振付とかも自分たちで考えて、あまり大人に頼ろうともしなかったし、7人もいるんだからってなんでも自分たちでやろうとしていたんです。もっと大人を頼っていいことも分からなかったし、そうやってやってきて生まれた怪物たちで(笑)。

めありらすと:(笑)あとは強がりだから、悔しいって姿を見せるのがかっこ悪いと思っていたんですよね。心では"もっとてふてふのことを見てほしい"とかもあったけど、"いや、でもでも"って強がってきたからなのかなぁ。気付いたらそうなっていて。

神狩こはく世會:ほんと細かいところから、日常からそういう感じで。

楪おうひ:やっぱりこちらから曝け出していかないと、蜃気楼も自分の心を曝け出してくれないし。それに気付いたことで、こうして等身大の曲を歌えるようになったり、より伝わるようになったのかなって思います。

-何かこの数年でも、そういう自分たちに気付けるようなライヴとか、出来事もあった感じですか。

ちむら詩文:おうひさんが昨年足をケガして、しばらく椅子に座ってライヴをしていたことがあったんです。そのときもおうひさんはもちろん、みんな悔しい気持ちを持っていたと思うんです、本当はもっとやれるのになって。でもそのときすらも、おうひさんが椅子に座っていても上手にできますよーってしちゃってたし、しかも自覚がなかったんですよ。

めありらすと:途中まで気付かなかったよね。

ちむら詩文:上手いこと見せてしまってる自覚もなくて。そういう悔しいとか、悲しいっていう気持ちを前に出していいんだって、ツアーの後半くらいでやっと気付いたんですよね。

めありらすと:"またやっちゃってるよ、うちら!"って(笑)。

神狩こはく世會:だから大きな出来事というより、徐々に"これも、あぁこれもだ!"っていう感じが多いかもしれない。

ちむら詩文:本当はみんなで泣きじゃくったって良かったし、心の中はそうだったのに取り繕ってたから。それに気付けただけでも、自分たちの中では大きかったですね。良かった、気付けてっていう。

-これからどんどんライヴが楽しくなりますね。

ちむら詩文:やっぱり感情むき出しのほうが観ていて楽しいと思うんです。いつも同じようなライヴよりも、今日は何があるかな、今日は何が起こるんだろうみたいな、ライヴ1つとってもストーリーがあるほうが絶対に面白いって。包み隠さずに、そのときに感じたように行動できるようになりたいです。