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INTERVIEW

Japanese

ACIDMAN

 

ACIDMAN

Member:大木 伸夫(Vo/Gt)

Interviewer:山口 哲生

-なるほど。僕も宇宙とか好きなので、そういった起源を考えていくのは面白いなと思うんですけど、ちょっと怖くなってくるというか。

なります、なります。

-怖さもあります?

怖いから見たがるのかもしれないです。子供のときからその感情がありましたね。このまま行ったら変なところに行くんじゃないかみたいな。そこにちょっと挑んでみるのが好きです。

-ただの好奇心というよりも、恐怖を打ち消すためというか。

いや、言っても好奇心が一番強いですよ。とにかく教えてくれと。なかやまきんに君の"健康のためなら死ねる"じゃないけど、死んでもいいから教えてほしい。この世界はどうなってるの? 死後の世界ってあるの? 神様って本当にいるの? みたいな、子供のときからの疑問が今でも一番ワクワクする。そういう感じですね。

-分かります。話を「sonet」に戻しまして、今回のアレンジは、ストリングスを四家卯大ストリングスが、ピアノは別所和洋さんがそれぞれ担当されています。スロー・バラードで壮大に締めくくるとなったときに、これはもう必要だろうと。

そうですね。四家さんは昔からの付き合いなので、ほとんど阿吽の呼吸でできるというか。僕が好きな雰囲気のメロディも知ってくれているし、楽曲を押し上げることに対して本当に天才的だと思っているので、楽曲の伸びやかさを美しいメロディで押し上げてくれたなと感じますね。あと、ピアニストの別所君は、もともと僕の後輩分みたいなやつなんですけど、彼のピアノからすごく叙情的な響きを感じていて。ジャズ畑の人間ではあるんですけど、ジャズの中でもすごくウェットなプレイをするんですよね。彼も"いつかACIDMANと一緒にやりたいです"ってずっと言ってくれていたんですけど、ようやく今回初めて弾いてもらえて、めちゃくちゃ良かったです。この曲の美しさは、ピアノが担っているところがかなり大きい気がしますね。

-今日、ここ(取材現場)に来る途中に感じたことなんですが、今ビルの1Fにクリスマス・ツリーが飾られていて(※取材は12月中旬)。それをぼーっと眺めながら「sonet」のインスト・バージョンを聴いていたら、ものすごくハマったんですよね。ギターのアルペジオの感じとか。

ははははは(笑)。それはね、本当にたまたまなんですけど、イントロのギター・フレーズがWHAM!の「Last Christmas」のメロディにちょっと似てるんですよ。俺も"この曲クリスマスっぽいなぁ"って思ってたんですよね、自分で作っておきながら(笑)。そこは意図したわけでなく、本当に無意識だったんですけど。だから正解です。WHAM!ですね。

-言われて気付きました(笑)。"sonet"というタイトルに関してですけども、歌詞に"小さなこの歌"というワードもありますが、壮大なスケールを持った楽曲にこのタイトルを付けられているのもいいなと思いました。

まさにおっしゃったように、スケールが大きいからこその"小さな歌"という。"sonet"がどういうものなのか語源を知らなかったので改めて調べてみたら、"小さな歌"という意味があって、ピッタリだなと。この小さな歌の響きが風になって、その風に揺られて、洋服なのか髪なのか分からないけど、美しい人がダンスしている、みたいな。それがとても美しいなというところから、このタイトルにしました。

-そんな本作から2025年がスタートするわけですが、ライヴも決定しています。まず、1月11日に『sonet』の発売記念ライヴ("ACIDMAN 「sonet」発売記念ライブ&壇上交流会")をZepp Haneda (TOKYO)にて開催されますが、ライヴ後に"壇上交流会"という企画を予定されていて。こういった参加型イベントはACIDMANにとって初の試みになるそうですが、どんな内容なんでしょうか。

これは僕が言い出しっぺなんですけど、ファンの皆さんにステージ上からの景色を見てもらいたいと思ったんですよ。ファンの皆さんには何か特別な経験を味わってもらいたいというのがいつもあって。ミート・アンド・グリートとか、握手とかサインはやってきたけど、何をまだ味わわせられてないかなと考えたら、僕たちの聖域であるあの場所から見る景色って、普通の人からしたら一生に1回も見ないと思うんです。なので、"Zeppのステージ上に立つという経験をしてもらいたい"と思ったのが、きっかけとしてあって。であれば、せっかくだからステージ上にさっきまでライヴしていたものがそのままあったら、僕はすごく見てみたいなと思うんですよね。アンプのつまみとかどれくらいでやってるんだろうとか、音楽をやってる人はめちゃくちゃそういうの楽しいし。

-つまみと、あとは足元を見る人はめちゃくちゃいるでしょうね(笑)。

そうそう。その気持ちは分かるから。音楽をやっていない人も、こういうふうになってるんだ! っていろいろ感じるだろうし。最後は握手をしながらみんなをお見送りするんですけど、そこはもうおまけですね。一番はステージからの景色と楽器が見られること。それがメインです。チケットがもうソールドしてしまっているんですけど、1人でも多くの方に来ていただけたらなと思っています。

-かなり貴重な機会ですからね。そして、3月からは全国ツアー[ACIDMAN LIVE TOUR "This is ACIDMAN 2025"]を開催されます。

2021年から"This is ACIDMAN"というシリーズをやらせてもらっていて。これは、アルバム・ツアーみたいなものではなく、"これがACIDMANだ"という名刺代わりのライヴを前からやってみたかったんですよね。しかもそれを年に1回必ずやるという。毎年、3月11日に福島でライヴ("ACIDMAN LIVE in FUKUSHIMA")をしていて、利益も全額寄付しているんですが、年を重ねれば重ねる程、たくさんの人が集まってくれるようになってきていて。やっぱり毎年必ずその日にライヴをするとなると、みんなも予定が空けやすかったり、あることを前提に動けたりするんですよね。それをACIDMANとしての3.11とか、復興支援といったものではなく、自分たちの表現としてできないかと思ったところから、"This is ACIDMAN"を始めたんですけども、これまで4回やってきて、4回目("This is ACIDMAN 2024")の感触がすごく良かったんです。

-なるほど。

このライヴは、セットリストもほとんど変わらなくて、なんならライヴ前に公開もして演出も同じよう感じなんだけど、どんどん評判が良くなってきているし、これは音楽ライヴの新しい形の1つだなと思って。新作至上主義ではなく、同じものをずっとやり続けられるという。そのためには相当クオリティが高くなければいけないし、普遍的なメッセージがなければいけないし、お客さんが何度も来たいと思える中毒性がなきゃいけない。そのすべてを兼ね備えている自負が僕の中にはあって。最初は実験的に始めてみたんですけど、4回やってすごくいい結果を出しているので、これはツアーにしてもいいんじゃないかと。

-今回のツアーは全国10ヶ所で行われ、ツアー・ファイナルは日本武道館ですね。

日本武道館でやりたいなというのが、また別の欲望としてあったんです。調べてみたら武道館は(2025年時点で)7年やってなくて、これで7度目だということが分かって。となると、今回を逃したら"7"という縁起のいい数字が使えなくなるから、すぐに動いてもらって、なんとかいい日が取れたから、そこをツアー・ファイナルにしようと。さらに、これまでの武道館は6回ともアルバム・ツアーだったけど、今回は"This is ACIDMAN"。"これがACIDMANだ"というものを武道館で表現できるので、僕の中ではすでに特別な1日になっているし、2025年で一番の目標ですね。

-お話にあった通り、"This is ACIDMAN"はセットリストを事前に公開されているわけですが、通常のライヴであれば次にどの曲が来るのか分からなくて、"この曲きた! やった!"というのがあって。そういった部分でオーディエンスの高揚感を上げる方法を、1つ封じられてしまう状態になるわけですが、そのあたりは実際にやってみてどんな感触があります?

最初の1~2年ぐらいはどうなのかなという気持ちもあったんですけど、結局セットリストを見る人は見るし、見ない人は見ないし。僕自身も何回もやってきたけど、やっている最中に"次はこの曲"というのを全く覚えてないないんですよ(笑)。だから結局、そのときになるとみんな忘れちゃうんですよね。あと、演出が分かっていたほうが盛り上がりやすいときもあって。

-といいますと?

このライヴをやろうと最初に思ったきっかけは、舞台なんです。舞台って普遍的なものがあるじゃないですか。例えば"ライオンキング"とか"レ・ミゼラブル"とか。

-たしかに。何度も繰り返し上演されていて。

ああいうものがなぜ音楽にはないんだろう。新しいタイトルがないとダメで、その大義名分が必要なのもおかしいよな、毎年必ずやるものがあってもいいのになと思ったのがきっかけだったんです。だから"ライオンキング"、"レ・ミゼラブル"とか、あとは歌舞伎もそうですよね。"待ってました!"みたいな。だから、驚きの歓声は普段のライヴであって、こっちでは"待ってました!"の歓声を感じるので、そんなに寂しいことはないんですよ。むしろ歓声自体はこっちのほうがあるんじゃないか? っていう気もします。

-そうなんですね。実際に"これぞACIDMANだ"と思うものを構築していくことによって、改めてACIDMANはどんなバンドであり、"This is ACIDMAN"はどんなライヴだと感じていますか?

これは特に今年(2024年)思ったことなんですけど、手前味噌ですが、本当にいい曲を作ってきたなって。時が経っても何も色褪せない。そういう謳い文句のバンドっていっぱいいると思うんですけど、その中でも特に色褪せないなと思ってるんです。これはなぜかというと、テーマが生と死と宇宙だから、当たり前だと思うんです。138億年の宇宙の歴史をテーマに歌を歌っているから、このたった10年、20年じゃ色褪せるわけがない。

-たしかに。

しかも目標としては、なぜこの世界が生まれたのかを知ることであり、戦争を終わらせることであり、みんなの価値観が変わって世界が平和になることであって。このライヴを俯瞰して見るとそういうことを改めて感じるんですよね。だからすごくいいタイトルでもあるし、改めて自分自身がやっていることは間違っていないと思えるので、堂々と胸張ってやれる力になる企画かなと。

-普遍的であり、揺るぎないものがしっかりあると。

もしこういうバンドがいたら憧れますもん。僕、自分で実感がないんですよ。"俺はACIDMANだ!"っていう感じが全くなくて。自分たちの今までの足跡をWikipediaで振り返って知るんです(笑)。それで、"羨ましいなぁ、こういう人たちみたいになりたかったなぁ"って思いながら頑張るんですよ。

-(笑)でも、完全にご自身の話ですよね?

そうそう。でも、本人はやっているときは忘れてるから。振り返っても自分のことだと思っていないから、憧れることもできる。

-すごく不思議ですね(笑)。

自分でも変わってるなとは思うんですけどね(苦笑)。例えば、町で声を掛けられると、未だに驚くんです。"ACIDMANの大木さんですよね?"って言われて、"あぁ、ありがとうありがとう"とかじゃなくて、"なんで俺のこと知ってるの!? どこで見たの!? 君マニアックだね!"みたいな。

-そこまでですか!? どういった感覚なんでしょう。俯瞰の極みなのかなんなのか......。

たぶん、前と上しか見てないんでしょうね。現在を全く見ないまま生きてるから、不安でしかない。

-不安ではあるんですね。

そこはありますよ。なんていうか、鉄腕アトムみたいな感じ。前と上だけ見て、ずっと飛び続けてる。"めちゃくちゃ怖いんだけど!"って言いながら(笑)。これがふわふわ浮いていたら最高なんでしょうけどね。でも、浮いているわけじゃなく、ダーっと飛んでいるからすごく怖くて。そういう感じだから、本人的にはつらいですよ。不安だし、今を味わえていないし、その味を全く知らないままだから。

-こんなにもすごい道を歩いてきているのに。

本人全然実感してない。そこはちょっと可哀想ですね(笑)。