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INTERVIEW

Japanese

SUIREN

2024年02月号掲載

SUIREN

Member:Sui(Vo) Ren(Key)

Interviewer:石角 友香

およそモダン・ロックに含まれるあらゆる要素を昇華したうえで、激しさや重さと繊細な美しさを同時に感じさせる稀有なユニット SUIREN。TVアニメ"キングダム"第4シリーズ・オープニング・テーマでもある「黎-ray-」(2022年4月リリースのデジタル・シングル&5月CDリリースのシングル表題曲)や、今回のEP『Reverse』にも収録されている人気ゲーム"STAR OCEAN THE SECOND STORY R"のメイン・テーマ・ソング「stella」などでその楽曲が耳に触れる機会も拡張しているが、メジャー・デビュー以降のスタンスが明快に理解できるという意味でこのEP『Reverse』が果たす役割は大きなものになるだろう。精力的な活動を標榜するSuiとRenに意気込みを訊く。

-今回のEPに繋がる部分で、去年の活動の中で見えてきたもの、SUIRENとして向かう先が明確になった出来事はありますか?

Sui:最初の1年の2022年は環境がガラッと変わって、それまでずっと僕とRen君のふたりでネット上だけでやっていたっていう状況から初めてライヴをして、"キングダム"のオープニング・テーマをやらせていただいて、メジャー・デビューという形で「黎-ray-」のリリースがあって。そこからいろんな人と関わってやっていくなかで、これは僕の感覚なんですけど、ちょっと迷いが生まれたというか、より多くの人に届けるにはどういうことを考えて、どうしたらいいんだろうって結構迷った1年だったんですね。で、そのあと、もっといろんなことを言語化しようみたいな時期があって。それはアーティスト写真ひとつとってもそうですし、作品ひとつとってもそうですけれども、タイアップ作品のテイストや今のヒット・ソングがどうとかそういうことじゃなくて、俺たちがやろうとしてることをもっとわかりやすくするために、例えばライヴをするとしたらこういう人たちとやりたいよねとか、音源を作るにしても一回こういう作品を作っていこう、みたいなことを去年はずっと話し合っていました。そこからアーティスト写真も変えて、このEPも半年ぐらいかけていろいろやった感じですね。

-書き下ろしもそれはそれでいいけれども、もっとSUIRENとしてやりたいことを明確にしたんですね。

Sui:このEPは本当にそうで、たまたま「stella」は"STAR OCEAN THE SECOND STORY R"のメイン・テーマ・ソングになったんですけど、基本的にこのEPはもう一回ちゃんと俺たちが世の中に何を打ち出すのかっていうのを決めて、自分たちの中で納得のいくものを揃えて出そうという感じで作ったものです。

-Renさんはサウンド・プロダクションの面で考え方は変わってきましたか?

Ren:考え方自体はわりと一貫してて、背伸びしないというか、あんまり自分にないものを無理にやらないっていうのが基本的なスタイルなんですよね。だからやっぱり自分で作ってみると、自分が聴いてきた音楽とか好きだったものとか、今までにやってきたものが色濃く出る。たぶんそこから大半の音楽家は、じゃあ今どういうものが流行ってるのかとか、こういう人たちに届くためにはどういう音を入れたらいいのか、どういう言葉を入れたらいいのかっていう視点を同時に持ちながらやっていくと思うんですけど、SUIRENに関してはあまりそういう背伸びをしていなくて。要するにもう等身大で、自分たちができるものでいいんじゃないかと。無理にそういうこと考えるより、俺だったらこうする、で彼(Sui)が必要とするんだったらこの言葉を入れる、っていう自分たちの中にあるものを大切にして、それで刺さらなければそれはもう仕方ないとある種割り切って、しっかり自分たちの音楽、自分たちが本当にカッコいいと思えるものを毎回リリースしていきたいっていうのがコンセプトとしてあるんで、今回のEPに関してはかなりそういうものができたんじゃないかなというふうに思ってます。

-そのうえで、EPの中での曲の繋がりの部分でテーマはありましたか?

Ren:繋がりは実はものすごい考えてて。曲単体ももちろんそうなんですけど、EPとかアルバムっていうのは、例えば今回なら6曲合わせてひとつの作品だってところに重きを置いてて。6曲を並べて聴いてちょうどお腹いっぱいになる、みたいなところはすごく意識してます。逆に言うと、曲を作るときに"何曲目みたいな曲欲しいな"っていう考え方をするんですよね。もちろん一曲一曲が勝負曲のつもりなんですけど、コンセプトとしては6曲合わせて聴いてほしい。で、何ゆえこの曲順になっているか、こういう展開になってるのかというところも考えながら聴いてもらえると面白いかなっていう気はします。

-特に核になった曲というと?

Ren:リード曲でもある「Eye Shadow」ですね。「stella」はもともとあった曲で、入れないって選択肢ももしかしたらあったのかもしれないですけど、タイアップにもなった曲だし、直近でリリースされた曲なんで「stella」も入れられたらな、と思いました。

Sui:最初はそこから取り掛かった感じですね。

-どういうところから曲想が生まれたんですか?

Ren:僕らの場合あとからメッセージを入れることが多いんですが、先に曲のリズムとかメロディ、曲の色合いとか雰囲気を先に決めて、そこに対して歌詞をはめていて。最初に頭の中でどんな曲ができるのか構想を考え始めたときに、「Eye Shadow」は強い曲にしたかったんですよ。いろんな意味で強い、ライヴでやっても、MVを観ても、音源をサブスクで聴いても、"こいつらすげぇかもな"って思わせられるような圧倒的な何かが欲しいなぁっていうところから生まれましたね。

-エクストリームな曲ではありますが、SUIRENの場合、面白いのはピアノやストリングスを含めて激しいというところで。

Ren:ありがとうございます。やっぱ激しさと美の共存なんで(笑)。

Sui:狂ってるね(笑)。

Ren:いやいや、もうコンセプトなんで。激しいものと美しいものっていうのは表裏一体なんで。というのはリスペクトをしているおひとりの、YOSHIKIさんの言葉を借りるとですが。

Sui:たしかに。"上品に狂った曲にしたいね"みたいな話は作る前にしてたんで、「Eye Shadow」はオケが送られてきたときにはまだメロディが入ってない状態だったんですけど、"あぁ、上品に狂ってますね"っていう感じでしたね(笑)。

Ren:音ってめちゃくちゃに重ねるといくらでも汚くなるんですよ。わけわからないことになるんですけど、ただそれをパズルのようにはめるのっていうのは意外と誰でもできるようでできない作業なんですよね。それを見てほしい。いつか気づいてくれないかなっていう気持ちでやってます。

-Suiさんの歌詞はSUIRENをやるうえでどんな意志が込められているのかが明快で。

Sui:そうなんですよね。これ言っていいのかあれなんですけど、勝手に自分の中で井手上 漠さんをイメージして。

-あぁ。SNS上での発信で意志の強さが窺えますよね。

Sui:これは完全に僕の話になっちゃうんですけど、どうしても自分のバックグラウンド、"弱者から強者へ"みたいなマインドというか、何も持ってないところから手に入れていくとか、"才能がない人間が才能あるやつに勝つ"みたいな人生観なので、マイノリティの人たちが主人公の歌の中で、はたから見たら歪だったりおかしかったりする人間が"いや、そうじゃない"と。いろんな人にいろんな目を向けられても、自分は死んだ目にはならないよっていうことを歌いたかったというのがありますね。SUIRENは一貫して、僕が勝手に存在証明する場所だと思ってインディーズの頃から歌詞を書いてるので。

-たしかに一貫してますね。

Sui:でもこの『Reverse』というEPは、メジャーに来てからのSUIRENはこういうユニットなんだって新しくバシッと表現する場所だと思ったし、表現するチャンスを貰えたと思ったんで、もう一回改めて俺たちのスタンスと、もしかしたら今は少数の人にしか刺さらないのかもしれないですけど、そういう人たちが勇気を持てるようなものを描きたかったっていうところで、こういう歌詞になってる感じです。

-そして改めてですが「stella」はギター・サウンドのアレンジが面白くて。シューゲイザー的なニュアンスなんだけど、ジャンル的にはそういう曲じゃないというか。

Ren:そうですね。作ったときは"STAR OCEAN THE SECOND STORY R"の曲になることは考えてなかったので、本当にたまたまいいはまりをしたんですけど、最初は単純に"ダイナミックなリフが欲しいな"ぐらいだったんです(笑)。

-Suiさんのジェンダーレスな声を説明するときにこの歌い出しは説明しやすいですね。"この人、男性? 女性?"みたいな。

Sui:ありがとうございます。あんまり自分では(ジェンダーレスな声だと)思ってないんですよ。自分では男のキーだと思うんですけど、結構言っていただくことがありますね、"女の子なのか男なのかわかんない"とは。