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INTERVIEW

Japanese

Machico

2023年05月号掲載

Machico

Interviewer:石角 友香

声優として"ウマ娘 プリティーダービー"(トウカイテイオー役)、"アイドルマスター ミリオンライブ!"(伊吹 翼役)などで実力を発揮しているMachico。昨年のアーティスト活動10周年のその先へと、表現の幅を広げていることを実証する新曲「STAY FREE」をリリースする。この楽曲は彼女のキャリアにとっても重要なTVアニメ"この素晴らしい世界に祝福を!"のスピンオフ作品である、"この素晴らしい世界に爆焔を!"のオープニング・テーマ。スケール感のあるロック・サウンドを背景にした大人っぽい歌唱が新鮮な、新たなリスナーの心も掴みそうな予感に満ちている。アーティスト Machicoの意欲をじっくりと訊いてみた。


昔は今みたいな感じには歌えなかったと思うので、 今この曲に出会えて良かった


-"このすば(この素晴らしい世界に祝福を!)"シリーズの主題歌は毎回Machicoさんにとっていいチャレンジになっている印象を持ちました。

そうですね。やっぱり"このすば"っていう作品で私のアーティスト人生の夢をひとつずつ叶えてもらったというか。"このすば"が私にとって初めてのアニメ・タイアップだったんですよね。だからアニメのタイアップ曲を歌うっていう夢も"このすば"が叶えてくれましたし、"このすば"を担当して以降、初めてアニソン・イベントやフェスでソロ・アーティストとしてステージに立たせていただいたり、劇場版("映画 この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説")にもなってるので、映画館で自分の歌が流れたりっていう体験も"このすば"に叶えてもらっています。ありがたいことに今回のスピンオフ作品も続投で担当させてもらったんですけど、"このすば"に触れていくなかで私もいちファンとして楽しい日々を送ってますし、アーティストとしても本当にどんどん大きくしてもらっているなっていうのは痛感します。

-「1ミリ Symphony」(2019年リリースのシングル表題曲/"映画 この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説"テーマ・ソング)も新しいタイプの楽曲でしたし。

ロック・サウンドではあるんですけど、疾走感というよりは爽やかさがすごく大きかった楽曲だと思うので、やっぱりそれぞれのシリーズによって曲のタイプが違うっていうのはありますね。でも根本的には爽やかさとポップさがある曲でずっと来ていたので、だからこそ今回のスピンオフ作品の主題歌である「STAY FREE」は全然違う系統だったので意外で。爆裂魔法は勢いのある魔法なので、"爆焔(この素晴らしい世界に爆焔を!)"ではゴリゴリのロック・サウンドが来るのかな? って思ってたんですけど、いざいただくとスロー・テンポな感じのサウンドだったので、なんでこういう感じになったんですか? ってお聞きしたところ、スピンオフっていうところに意味を持たせたくて、目線を変えたスロー・テンポにすることで、スピンオフ作品というものもより際立たせるというか、スピンオフだからこそ描ける"このすば"があるんじゃないか? ということでスロー・テンポになったそうなんです。それはそれで私も納得しましたし、実際アニメが放送されて、自分の歌とオープニング映像を観ると、すごくぴったりというか。ファンの人たちはどんな反応なんだろうって思っていたら、今までと違うタイプの楽曲だけど、"すごく「爆焔」に合ってる!"っていう感想をいただいたり。そういう言葉を見て、より嬉しいっていう気持ちにもなりました。

-スケールの大きいロックだし、本格的な生音のサウンドだと感じました。作曲者の岩崎貴文さんとはどんな擦り合わせをしたのでしょう。

基本的なディレクションはレーベルの方にいつも通りやっていただいたのですが、レコーディングが終わったあとに岩崎さんにすごく褒めていただいて。今までの"このすば"の楽曲とかも聴いてくださっていたんですけど、やっぱりポップなイメージがあったぶん、この楽曲をどうやって歌うのかをすごく楽しみにしてくださっていて。私としても低音も安定して出せたと感じていたので、"こういうタイプも歌い上げてもらって良かったです"みたいなお褒めの言葉をいただけたのが嬉しかったです。プリプロもしていたので、当日のレコーディングは比較的すんなりできたという印象ですね。

-作詞も岩崎さんで、歌っていて"ここは共感する"っていうところはありましたか?

サビの"戸惑いながらも/歩き続けたくて/あぁ 泥だらけでも いいよ"っていうところがすごく好きで。やっぱり夢を叶えるとか目標を達成するまでの道のりって、ずっといいことばっかり起きるわけじゃなくて、なんなら悪いことだったり、ネガティヴな感情になったり、失敗したりっていう種類のほうが絶対多いと思うんですよ。でもその夢を叶える道中の失敗が、リアルタイムだったらすごく恥ずかしかったり、自分はできない人間なんじゃないかと感じるきっかけになると思うんですけど、私は結果よりも過程がキラキラしているので、がむしゃらに何かを頑張る、自分が思い描いていた結果にならなかったとしても、そこに向かって出る熱量っていうものは絶対無駄じゃないし、離れたあとには出せない輝きだと考えてています。それがこのサビの頭の3行でグッと表現されていて、失敗するカッコ悪い姿もそれが正解なんだ、みたいな感じで認めてもらえてるような気がして。だからここはすごく好きですね。あとDメロの"爆焔(まほう)が 鳴り響く"というところがあるんですけど、読みは"魔法"って言ってはいるんですけど、ここに"爆焔"っていう文字が隠されてるところもおしゃれだなって。歌詞カードを見ないとわからない、ファンの人へのメッセージっていう感じがするので、そういうところもすごく好きですね。

-"歩き続けたくて"という意思なので、そこはグッときますよね。

そうですね。だから夢とか目標を持ってる人に聴いてほしい。今までの"このすば"の楽曲って、キャラクターと肩を並べて一緒に走っているようなイメージがすごく強かったんですけど、今回の「STAY FREE」は特定の人と一緒っていうよりはこの歌で導いていくというか、直接何か手を貸さない、そんな感じがすごくあって。そういうところも大切にしてほしいというお話はレコーディングのときにいただいていたので、どれだけ人の心を打てるような歌声に仕上げられるかっていうところは課題ではありました。

-Machicoさんのヴォーカルがキャラクターではなく素な感じがしたんですよ。

ありがとうございます。ファンの人や"このすば"ファンの人とかからも、今回は大人っぽい声色だったので"すごく新鮮だ"っていう声はいただきましたね。今まで私の楽曲って、キャラクター・ソングもそうなんですけど、自分的にも高音が得意なので、絶対どこかに異常に高いフレーズがあったりするんですけど(笑)、今回の「STAY FREE」は逆にめちゃめちゃ高いっていうフレーズはなくて。だからこそ私もいい意味で肩の力を抜きながら、リラックスしながら歌うことができたのかなと思いますね。

-このタイミングでこういうタイプの曲が来るのはMachicoさんのキャリアの中でもフックになるのでは?

そうですね。アーティスト・デビューしてから10周年も過ぎて、年齢的にも30歳を超えて、いろんな現場で今まで自分が後輩の身だったんですけど、だんだん先輩をしていかなくちゃいけないなかで、下の世代の子たちに何かアドバイスをっていう機会も増えてきて、引っ張っていく側の考え方とか立ち振る舞いとかを考える機会はたくさんあるので。これが20代前半とかだったら、たぶん今みたいな感じには歌えなかっただろうし、歳を重ねて低音のほうも昔より安定してきたっていうのもあるし、このキーの曲をちょっと余白を残しながら歌うことも昔はできなかったと思うので、今この曲に出会えて良かったなっていうのはすごく思いました。