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INTERVIEW

Japanese

yonawo

2022年11月号掲載

yonawo

Member:荒谷 翔大(Vo)

Interviewer:高橋 美穂

yonawoが3rdフル・アルバム『Yonawo House』を完成させた。実際にメンバーが暮らすスタジオの名前がタイトルに掲げられた、日常と地続きの音楽が詰まった1枚になっている。以前から"ベッドタイム・サウンド"と呼ばれている聴き心地の良さはそのままに、美しい歌詞と繊細な音像からは、より鮮やかに情景を喚起させられる。そこには悲しみも喜びも、毒もユーモアも溶け込んでいて、聴けば聴くほどに味わい深い。メンバー4人を代表して、荒谷翔大に話を訊いた。

-まずは率直に、『Yonawo House』がどんなアルバムになったと思っていますか?

タイトルにもなっているんですが、今はスタジオ"Yonawo House"で、メンバー4人でシェアハウスをしていて。今回は、そこで制作をしたんです。レコーディングも、ドラム以外は"Yonawo House"で録って、アレンジも"Yonawo House"でして、そういう曲たちが揃っていて。だから、"Yonawo House"の空気感だったりみんなの生活だったり、音楽以外の部分も詰まった作品になったと思っています。

-"Yonawo House"で制作するというのは、今回のコンセプトだったんですか?

そうですね。今年の1月に"Yonawo House"に引っ越してきたんですけど、その段階で、次のアルバムはここで完成させようって話していて。タイトルに"Yonawo House"と付けるところまでは予定していなかったんですけど、最後に、ここで作ったしそれを象徴する家の名前を付ければまとまるんじゃない? ってことで、こうなりました。

-そもそもの話なんですが、なんで4人でシェアハウスに住もうと思ったんですか?

"Yonawo House"に住む前、上京するまでは地元の福岡で活動していたんですけど、メジャー3年目になったときに、活動のスピードを上げたいっていう話がスタッフも含めて出てきて。ここで東京に1回出てみようと。そうなったときに、プロモーションや制作を頑張るためには、一緒に住んでいたほうがコミュニケーションも取れるし、楽曲の作り方にも影響して、いい刺激になるんじゃないかって話して、みんなで住めてある程度は音を出せる家を探して、引っ越してきました。

-"Yonawo House"というタイトルからは、日常から生まれたアルバムということが連想できます。実際に、日常と音楽が地続きであるという感覚や、日常と地続きの音楽を作りたい気持ちがあったんですか?

歌詞の面は、かなり意識しました。前のアルバム(2021年リリースの『遙かいま』)は規模感というテーマをふんわり掲げていたんですけど、今回は生活に密着した歌詞......例えば"働く"って言葉を意識的に入れるようにはしました。

-音楽的にも、シェアハウスだから、生活の中で思いついたらすぐに4人で演奏できるわけで。そこも、日常と密着したアルバムになったところに関わっているかもしれませんね。

そうですね。各々が、自分の部屋や共有スペースで作業をしていても、思いついたタイミングで"ここって、こうしても良くない?"とか、すぐに聞ける状況なので。そういうやりとりはたくさんあったし、特にデモの段階では、めちゃくちゃ助かりましたね。

-そういった環境は、荒谷さん的には心地よかったですか?

そうですね。望んでいたことではあったので。前作は、デモはある程度自分がひとりで形にして、その段階でみんなに聴かせていたんです。でもバンドは4人だし、その良さをデモの段階から取り入れたかったので、シェアハウスという環境がそれを実現してくれたと思っています。

-また、シェアハウスに住む以前からyonawoは"ベッドタイム・サウンド"を掲げていますよね。それも、日常とシンクロした音楽って印象に繋がっていると思うんですが、"ベッドタイム・サウンド"をやっていきたいというのは、結成当初から考えていたんですか?

いや、そういう意識はなかったんです。"ベッドタイム・サウンド"っていうのは、リスナーの方たちが、yonawoをそんなふうに聴いてくれるようになって。そういう聴き方をしてくれるなら意識してみてもいいよねって、特に前作のEP(2022年3月配信リリースの『Prescribing The...』)は(そういうコンセプトで)作ったんです。根本は、やりたいことをやっていて。ただ、最初はスロー・テンポな曲が多かったんで、そういう聴かれ方をしたんだと思います。

-眠れちゃうくらい心地いいサウンドっていう。

そうですね。そこはメンバーの趣味趣向が大きかったと思います。特に、僕は聴いていて落ち着くのがそういう音楽なので、自分で作る曲も自然とそうなったのかなと感じますね。

-リスナーに気づかされて作品を生み出したり、お互いに影響し合えるようなコミュニケーションが取れているのって、すごく素敵ですね。

たしかに。EPのときは新鮮で、いい意味で刺激になりました。

-今回のアルバムの内容のお話に入っていくと、上京したばかりっていうお話を聞いて、なるほどなと思ったんですけど、「tokyo feat. 鈴木真海子, Skaai」が入っていますね。これは、今だから作れた楽曲じゃないですか?

そうですね。"東京"っていうタイトルを付けた楽曲を出すのもなかなかハードルが高いんですけど。でも、仮タイトルから"tokyo"って付けていて。東京をテーマにした曲を作ろうと思ったから。ただ、鈴木真海子(chelmico)さんとSkaaiをフィーチャーしたのも勢いで、タイトルも勢いで"tokyo"以外は考えられんけん、これでいこうって決めたっていう。だから、上京したことがこの曲を後押ししましたね。

-おっしゃったように、"東京"って楽曲を出すのはハードルが高いというか。いろんなバンドが東京をテーマにした名曲を書いていますしね。だから、yonawoの東京観とは? って思いながら聴かせていただいたんですけど、私も地方から上京した経験があるので、そういう人間にとっては非常に共感できる、グッとくるものがありました。

ありがとうございます。

-しかもこの曲、東京観だけではなく、yonawoらしさも凝縮されていると思って。先ほどおっしゃったように、リスナーに"ベッドタイム・サウンド"と名付けられたぐらい、心地いいサウンドを鳴らしているyonawoですけど、歌詞には悲しみや毒やユーモアも交ざっていて。そこが、私が以前からyonawoを好きなところなんですけど、「tokyo」はまさにそういう曲ですよね。

そうですね。Skaaiのバース、真海子さんのバース、自分のバースはそれぞれが書いたんですけど、特にフックの部分は意識しました。心地いいメロディだけど、引っ掛かるような言葉選びだったり、ユーモアというか、"阿呆みたい"って使ってみたり。自分のバースもチルと言われるトラックに、普通にラップっぽいものを乗せて、でも歌詞は毒みたいなものを入れつつ。どの楽曲でも意識するんですけど、これは特に、他のふたりがいるっていうのもあって、自分の色を濃くしたと思います。

-フィーチャーリングのおふたりに刺激された結果、ご自分の色が濃く出たんですね。先ほどおっしゃっていましたけど、"阿呆みたい"のところ。ここ、"Hold me tight"とも聴こえるんですよね。すごくスイートに感じられるんだけど、実際に歌詞を見ると"阿呆みたい"という。なんだか、物事の裏表が突きつけられるような気がしました。

ありがとうございます。一応、ダブル・ミーニングで聴こえたらいいな、とは思っていたんです。対義語ではないんですけど、ニュアンス的には両極端にある言葉ですよね。"Hold me tight"はあったかいけれど、"阿呆みたい"は言い捨てるような感じ。同じ言葉が、そのどちらにも聴こえるという。いろんな歌詞において意識しているんですけど、今回の"阿呆みたい"は、トラックとも相まって満足する感じになりましたね。耳にも残るし。知り合いのお子さんも、ここだけ歌詞を覚えてくれていて(笑)。そんなキャッチーさもあるし、大人が聴くとこういうことねって考えられる。そういうのは、作った当初の自分の意図ともハマっているので、めっちゃ嬉しいです。