Japanese
yonawo
2022年11月号掲載
Member:荒谷 翔大(Vo)
Interviewer:高橋 美穂
他者が見えるような表現、あなたと私が現実にいるような表現を意識しました
-また「tokyo」はソフトな歌声ですけど、ホーンも入った「Lonely」は太く伸びやかな歌声になっていて。楽曲によって歌声が楽器のように変化する印象があったんですよね。
そうですね。歌い方は意識的に変えています。歌詞やキーとの兼ね合いもありますけど、トラックをどう見せたいかを意識して、ヴォーカル録りをしていますね。声色って、楽器以上に変えられるから、歌入れしながら考えることは多いです。自分の好きな歌手の真似もするんですけど、結果的に真似はできないから、自分の声で出せるニュアンスを意識していますね。
-他の楽曲についてもいろいろうかがっていきたいんですが、特に素晴らしいと思ったのが「sunset」で。これは、どのようにして作ったんでしょうか。
これは3~4年前に作ったんです。デモで作って、メンバーには聴かせていて。今回、それをリアレンジして入れようっていう話になって。デモのイメージからはそこまで変わっていないんですけれど、ピアノやドラムを生音にして、歌い方もサウンドもタイトルの通り夕方の雰囲気に合うような、しっとりしたムードを意識してやりました。
-なるほど。だから、聴いているとすごく情景が浮かぶんですね。
ありがとうございます。この曲は、福岡の"SUNSET LIVE"っていうフェスに行ったときの情景を歌詞にしたんですよ。
-おぉ! 私は行ったことがないんですが、かなり素敵なフェスらしいですね。
そうですね。福岡を代表するフェスです。
-この曲は歌詞も韻を踏みつつ、美しい日本語を使われていますよね。
ありがとうございます。韻の優先順位は高くなくって、書きたいことや表現を重視して、最終的に歌に乗せるときに帳尻を合わせるようにしているんです。歌詞だけ見ても楽しんでもらえるように意識していますね。
-"初回限定盤・音源"についてくる特典CDに、この曲のデモが収録されているじゃないですか。あまりデモから変えていないっておっしゃっていましたが、やっぱり進化していますね。
録り音が変わるだけでもだいぶ変わるし、結構シンプルな構成で、楽器の種類もそこまで多くないので。でも、ミックスした音を聴いたときに、ドラムやピアノの音が前に出てきていて、最後のギターの歪みも迫力があって、デモとは違うものになったと思います。
-ちなみにですけど、その特典CDには、「tokyo」のリミックスと共に、「sunset」以外のデモも収録されているじゃないですか。デモって、いわば完成版ではないわけで。それを公にすることに対して、照れとかはないのかな? という疑問もちょっとあるんですが。
自分としては、デモって割り切って出しているので。これをデモって言わずに出すのは嫌ですけど(笑)、デモってわかるように出せるなら抵抗はないですね。yonawoは『desk』(2020年)っていうデモ集も出していますし。初期のEPの『SHRIMP』(2018年)も、自分にとってはデモみたいなものを、ギターの雄哉(斉藤雄哉)に聴かせたときに、このまんまでいけるやんって言ってもらって、それで出して評判が良かったというのもありつつ。そこで、デモにも良さがあるんだって知ったんで、それをみなさんと共有できたらなって思っています。
-なるほど。完成版とデモを聴き比べられる楽しさもあるし、昔だったらデモ・テープっていうのがあって、手作り感みたいなところも踏まえて、同じ曲でもCDの音源よりもデモ・テープの音源のほうが好きって思えるものもあって。そういう感覚に近いのかもしれないですね。
だと思います。完成品って、いい意味で愛がこもっている。でも、デモはゆるっとした雰囲気で聴けるというか。そういうところが好きな人は、デモに愛着が湧くのかもしれないですね。あとはレア感もありますし。
-そうですよね。楽曲のお話に戻ると、「日照雨」は一番日常の情景が浮かぶ歌詞ですね......ところで、このタイトルはなんて読むのが正解なんですか?
これ"そばえ"って読むんです。
-なるほど! 勉強不足ですみません。
いえいえ、僕も面白がって付けただけなので。
-意味は?
字のまま、日が照っているのに雨が降ることです。"そばえ"、ぜひ覚えてください(笑)。
-ありがとうございます(笑)。まさに美しい日本語ですね。
これも「sunset」と同じ時期、4年前ぐらいに作った曲なんです。その時期にしては珍しくって、日常の風景を切り取って書いた曲で、自分としても歌詞だけでも大好きな曲ですね。
-この2曲以外にも、以前から温めていた曲が入っているんですか?
そうですね。あとは「ダンス」も同時期です。
-「日照雨」が日常感という今作の雰囲気にマッチしたから選ばれたように、他の曲も、過去に作ったけれども今作に似合うから収録した、という感じでしょうか。
ですね。今のイメージと合致していたので。
-ちなみに「hanasanai」は、いつぐらいに書かれた曲ですか?
これは、上京して、春過ぎに書いた曲です。
-今作の紙資料に"フェス"というキーワードがたくさん書かれているのですが、まさに「hanasanai」は、フェスでクラップしながら盛り上がりたい曲だと思いました。
ドラム、すごい音しますしね。
-そう、だから野外で聴きたいんです。制作時にそういうイメージはあったんですか?
このトラックは、ギターの雄哉が作っていて。それから自分が歌を入れて、コードをいじったんですけど、トラックだけ聴いても、夕方で風が部屋に入ってきて気持ちいいみたいな雰囲気に合っていて。これは黄昏時に似合う曲にしたいなって思って、歌詞もそういうイメージを反映させました。だから、野外っていうのはイメージしていましたね。フェスで聴かせようっていうのはなかったんですけど、言っていただけて嬉しいです。
-この曲のみならず、たしかにフェスが似合うバンドだと思うんですが、この夏に出演されたフェスで、特に印象に残っているものってありますか?
各地を回らせてもらったんですけど、やっぱり一番大きかったのが"サマソニ(SUMMER SONIC 2022)"で。自分たちのステージにもお客さんに来ていただけて、盛り上がって、それ以外の他のアーティストを観ても楽しめたので、印象に残っていますね。
-最後に収録されている「Yesterday」についても聞かせてください。歌詞は"見返りなんて もういらない いらない"っていうないない尽くしで。でも、サウンドは優しい。その裏腹さが、またyonawoらしさだと思ったんですが、これはどのようにできあがったんですか?
自分が作詞作曲したんですけど、最初のコードは、Jeff Buckleyの「Lover, You Should've Come Over」にハマって弾いている時期に、SMAPの「らいおんハート」もいい曲だなって調べていたら、この2曲に重なるコード進行があって。"これ、ミックスして曲を作ってみよう"と思ったのが最初なんですね。なかなかかけ離れているんですけど(笑)。
-面白い! よく見つけましたね。また、それになんでこういった歌詞がついたんですか?
今回のどの曲にも言えるんですけど。前回も愛みたいなテーマはふんわりあって。でもそれは内省的で抽象的な表現をしていたんですけど、今回は他者が見えるような表現、あなたと私が現実にいるような表現を意識しました。なので、ストレートな表現を取り入れて、別れも匂わせつつ、愛をテーマにした歌を書きたくて「Yesterday」を書きましたね。
-11月16日からは"Yonawo House Tour"も開催されます。
そうですね、12ヶ所。初めてこんなにたくさん回ります。苫小牧とか盛岡、高松、金沢、新潟とか、ワンマン・ツアーとしては初めて行きますね。いろんなところをガッツリ回りたいねって言っていたんです。だから楽しみですね。
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