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INTERVIEW

Overseas

THE KOOKS

2022年08月号掲載

THE KOOKS

メンバー:Luke Pritchard(Vo)

インタビュアー:山本 真由 Interview interpreted and translated by 川原 真理子

ブリットポップ・ブームが去った2000年代、ロックンロール・リヴァイヴァルや、ポスト・パンク・リヴァイヴァルなどのムーヴメントの中で多くのバンドが登場し、シーンを席巻した。その中でも特に、時代の流れに乗りつつも独自の路線を崩さず活躍してきたのが、THE KOOKSだ。彼らの魅力は、無駄に尖ったり、不用意に売れ線に進んだりすることなく、地に足をつけた活動をしてきたことじゃないかと思う。そんな彼らが、約4年ぶり6枚目となるアルバムをリリース。今回は、その新作についてはもちろん、彼らの音楽への取り組み方についてなど、フロントマンのLuke Pritchardに詳しく語ってもらった。


僕にとってこのアルバムは、誰かの1stアルバムのように聴こえる―― すごくクールなことだよ


-まずは新作『10 Tracks To Echo In The Dark』の完成、おめでとうございます。

どうもありがとう。

-アルバムとしては、前作(2018年リリースの『Let's Go Sunshine』)から約4年ぶりの作品となりますね。その間は、どのように過ごされていましたか?

浮き沈みがあったよ(笑)。気分はとてもいいね。こういう時期にこのアルバムを作ることができてとても誇りに思っているよ。この時期にケミストリーを生み出してコラボするのはかなり難しいことだったけど、僕たちはかなりうまくやったと思う。クールなアルバムだよ。いい形でこの時期を間違いなく反映していると思うな。"トンネルの向こうに光が見える"みたいな、希望が見えるアルバムだけど、これまでのTHE KOOKSのどのアルバムよりも内省的だね。ライヴ感が一番ないな。かなりプロデュースされていて、あまり色づけされていないあっさりした音になっているよ。ある意味、それはそれでクールだ。音楽って、ちっちゃなタイム・カプセルであるべきだからね。このバンドでどんなことが起こっていたかがわかる。というわけで、とても誇りに思っているよ。

-ここ数年は世界が大きく動いた時期でもありました。そんななか、どのように音楽に向き合ってこられたのでしょうか?

どのように向き合っていたかって? 最初はかなり良かった。僕は10代のときからずっとツアーに出ていたんで、家にいられてかなり嬉しかったよ。でもあまりにも長い間そういう状態だと、なかなかクリエイティヴになれなかったから、それと闘わないといけなかった。でも最終的には、僕も家族もそれをポジティヴなものに変えられたんじゃないかな。

-今作は、今年1月にリリースされた『Connection - Echo In The Dark, Pt. I』、そして4月にリリースされた『Beautiful World - Echo In The Dark, Pt. II』という、2作のEPにさらに新曲を追加して3部作として完成させたという流れになっていますが、このような構成にしたのはなぜですか?

ちょっと分裂させたかったんだ。僕たちはブリットポップの最後のほうに出てきたバンドだから、アルバムよりも単体で曲を出すことを期待される。それに、今のご時世特にポップの世界ではそういう傾向にあるから、"トップ10アルバムを出してやろう"みたいなことを強調したくなかったんだ。今のバンドはそういう考え方ではなくて、ただ音楽を出したいだけなんだよ。これまでにアルバムを5枚出してきたから、今回はちょっと違った形で出してみたかったんだ。最終的にはアルバムが手に入るわけで、まとまりのあるものになっているけど、もしかしたらこれは今後の僕たちの将来の方向性を示唆しているのかもしれない。一度にアルバムを出す必要はないんだ。出したいときに曲を出せばいいんじゃないかな。現代のストリーミングの世界ではそれがとてもエキサイティングなことなんだ。

-結果的にアルバムとなったものには一貫したテーマやストーリーがあるのでしょうか?

イエスでありノーでもある。いろんな意味で、これは単なる曲の寄せ集めだ。映像作家の友達、Paul Johnsonがある種の物語を組み込んだけど、全体のテーマやフィーリングは"混沌の中に希望と安らぎを見いだすこと"じゃないかな。今まさに、混沌が生じているわけだからね。このアルバムは、かなりいい形にできあがったと思うな。僕は瞑想をかなり行ってきたし、結婚して赤ん坊も生まれた。だから、かなり安定していたんだ。これはアルバム作りの際の僕の状態としてはかなり珍しいことだった。というわけで、パーソナルな部分はそれがもとになっているよ。家族、絆、安らぎ、そしてエゴをちょこっと失うことについてなんだ。そしてもちろん、今起こっているクレイジーな社会的現象についてもだよ。毎日人々に植えつけられる恐怖、コロナウイルスによるパンデミックといったことからのカタルシスなんだ。でもさっきも言ったように、全体的には希望がある。

-今作は、シンセサイザーを大胆に使用した、全体的にハッピーでダンサブルな曲調になっていますが、アルバムの制作前によく行っていたというベルリンの音楽シーンからの影響が大きいのでしょうか?

そうだね、たしかにベルリンという場所が音楽スタイルに大きなインパクトを与えたことは間違いない。このアルバムを作ることになったとき、僕がやりたかったのはミニマリズムだったんだ。そして僕にとってそれは主に、ベルリンの音楽だったんだ。あそこで作られた音楽スタイル全般にそういったフィーリングがあったんだよ。インダストリアルな感じがするんだ。スペースがあるからだよ。このアルバムを作る際、僕はそれにすごくインスパイアされたんだ。でも最終的には、(こういうアルバムになった原因は)一緒に作業した人だね。プロデューサーのToby(Tobias Kuhn)と互いにレコードを聴かせ合って、あの80年代サウンドにたどり着いたんだ。こういうことをやったのは初めてだった。僕がTHE KOOKSを始めたころの音楽シーンは、メンタリティがかなり異なっていたからね。僕たち全員、新しいものを作りたかったんだ。たとえひどいものであったとしても、誰も聴いたことのないものを見つけないといけないと思っていたよ。それが目標だったんだ。現代の世界では、誰もがサウンドやルックスを完璧にコピー、もしくは模倣しようとしている。僕が好きな音楽の大半はそうだったけど、80年代インディー風のものは誰もやっていなかった。80年代ポップ風のものはこの5~10年の間に山ほどあったけど、僕たちはインディー・バンドだから、それのインディー・バージョンをやりたかったんだ。そこに手をつけた人は誰もいなかったと思うからね。家にいて時間があったんで、そういうことをぐだぐだ考えていた。それで、そういうサウンドをぜひとも出したいと思ったんだ。でも、君の質問のベルリンについて言うと、ベルリンにいるとどうしてもそれ(ベルリンの音楽)が染み込んでくるんだよ。そして、そのベルリン・サウンドがアルバムのテーマになったんだ。

-アルバムの資料には、ブレクジット(イギリスのEU離脱)に対する反発でヨーロッパ的なものを作りたかったとも書かれていましたが、EU離脱はバンドや私生活にどのような影響を与えたのでしょうか?

(笑)あれは悲惨だよ。ロシアとかに侵攻されて、政治的戦争が起こったりしたら、どうなるんだろう。僕の子供たちにも当然影響は及ぶ。僕たちは黄金時代を生きてきて、みんな好きに移動して、ヨーロッパ人であることで容易なアクセスが可能だった。だからブレクジットみたいなことが起こると、すごく不安になるんだ。すごく危険だし、世界が不安定になってしまう。もちろん、僕の私生活にも影響を及ぼすしね。いろんなことがやりにくくなるし、高くついてしまう。おそらく、僕が住んでいるここロンドンに来るバンドの数が減るんじゃないかな。ヨーロッパに渡ってくる音楽の数が減ると思う。これは僕にとって、屈辱的な部分だ。ブレクジットのキャンペーンのされ方も含めてだよ。僕が関わりたくない人種差別やファシズムの気配すら感じられた。だからこれは、僕や僕が知っているほとんどの人に大きなインパクトを与えたんだ。反対すると突然、人々の友情や恋愛関係を引き裂くことにもなる。これまた、とても独善的で役に立たないよ。だから、とても悲しいね。本当だよ。どちら側にも言い分があるんだろうけど、とても悲しい。だからいっそ、ヨーロッパ(本土)に移住しようかとさえ思うよ。でもこっちには家族がいるし、僕は祖国を愛している。英国を愛しているんだ。で、このとりとめのない話を締めくくると(笑)、僕は英国の音楽業界のことも心配しているんだよ。僕たちは史上最高のポップ・ミュージックを作ってきたけど、こんな状況の今ではそれは今の権力者にとってプライオリティじゃない。その原因の一環はブレクジットにある。EUは、英国の音楽がヨーロッパに簡単に渡るための手段だったんだからね。危険だよ。

-なるほど。何か打開策があるといいですが......。ところで、今作のアートワークは、80年代のSF映画のような、近未来的だけど懐かしい雰囲気もあっていいですね。フィリップ・K・ディックやアイザック・アシモフのような古いSF作品を好んで読まれていたようですが、そういった小説からもインスパイアされた部分があるのでしょうか?

そうだね。僕はずっと、特に20世紀半ばのSF作家に魅了されてきたんだ。ほとんど予言のようになったからだよ。彼らは、科学に影響を与えたんだ。科学者たちは子供のころにそういった小説を読んで、科学者になるとそれを実践に移そうとした。あと過去のSF小説からの警告もあって、そっちに行ってはいけないということも言われた。だから、そういったものが僕に大きなインパクトを与えたことは間違いないね。僕は個人的体験にもとづいた曲を書くことが多いんだけど、(パンデミックのせいで)家にいてやることがほとんどないと、その世界から逃れたいと思って、歌詞がちょっと抽象的になったんじゃないかな。というわけで、僕が思っていた以上に今回のアルバム作りにインパクトがあったんだろうね。

-THE KOOKSの中でもかなり冒険的なアルバムだった4thアルバムの『Listen』(2014年リリース)でもファンキーな楽曲がありましたが、今作ではそういったグルーヴ感が、より親しみやすいギター・ロックの中に取り入れられているようにも感じました。そういった部分は意識的に表現されているのでしょうか?

そうだね、それは洞察力があるな。このアルバムには『Listen』を彷彿させる部分があると思う。あのアルバムを作ったことで、僕たちは多くを学んだ。ある意味、ファンク/ソウルっぽいアルバムを作ったんだよ。この2枚にはある主の関連性があると思う。このバンドは常にみんなを踊らせたいんだ。それが、僕たちがやっていることの一環なんだよ。面白いよね。僕たちはインディー・ロック・バンドだけど、リハーサル・ルームでジャムっているときはファンクをやっているんだから。なぜだかわからない。理由なんかあるのかな。でも僕たちはそれをやるのが大好きだから、踊れる要素というものはまた出ると思うよ。前回は違うタイプのアルバムを作ったけどね。僕は、INFLO(『Listen』を手掛けたプロデューサー)と一緒に仕事をしてすごくいろんなことを学んだんだ。あの手の音作りについてね。だから、それが今回のアルバムに大きな影響を与えたことは間違いない。いとこさ(笑)。

-いとこですか?

2枚のアルバムはいとこになり得るってことだよ。同じDNAを共有しているんだから。

-なるほど! これまでも実験的な要素を取り入れた楽曲への挑戦はありましたが、今作で最も挑戦的だったと思うのはどういった部分ですか?

まっさらの状態でスタジオ入りするのは、いつだって難しいことだよ。だから、一番の挑戦は自分が言いたいことを見つけることだったんじゃないかな。僕はそれについて、あれやこれやと思いを巡らせたよ。アルバムを4枚も5枚も作ったことがあると、新しいこと、新鮮なことを言いたくなるものだけど、出てくるのは必ずしもオリジナルではない。だから、一番の挑戦は心理的なものだったんじゃないかな。素晴らしいプロデューサーとのコラボレーションだと、そういうことをうまくやってくれるんで、僕はただそれを関連づければ良かったんだ。僕が書きたいのは僕と妻(Ellie Rose)についてのこと。至って単純なことだけど、どうしてももっと複雑なものでないといけないんだって思っていたんだ。僕にとっての一番の挑戦は、単純に自分の気持ちを表現することだった。自分がどういうつもりで何を言いたいのかを、あまり無理せずに言うこと。それがこのアルバムから得られるデビュー感だと僕は思う。僕にとってこのアルバムは、誰かの1stアルバムのように聴こえる。すごくクールなことだよ。THE KOOKSの6枚目のアルバムには聴こえないんだもの。これは嬉しい偶然で、考えていなかったよ。そのおかげで、自分がこれまでどうしてきたかに気づかされたんだ。以前の僕は考えすぎていた。だからそういった意味で、これは直感的なアルバムだと言える。一番の挑戦は、必ず心の中にあるものだ。必ずそうだよ(笑)。