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INTERVIEW

Japanese

Jam Fuzz Kid

Jam Fuzz Kid

Member:今村 力(Vo) 浅井 龍(Gt) ヤマザキタイキ(Gt) John S.Kobatake(Ba)

Interviewer:山口 智男

-「KABUKI」の聴きどころは?

John:めまぐるしく曲が展開するところなのかな。一聴しただけで、何が起こってるのか全部は把握できないものを目指しました。聴いたあと、漠然とすごいと思うっていうのが、僕はある意味、ロック・ミュージックの醍醐味だと思ってるんです。ライヴ会場でデカい音で聴いても、何が鳴ってるかなんて全部把握できないじゃないですか。それでも、なんかすごい! と思うっていうのが、僕はロック・ミュージックの芯の部分だと考えているので、それを表現するためにバンド・サウンドの範疇の中で、あらゆる手を使いました。だから、何が起こっているのか探ってみるっていう楽しさはあると思います。

ヤマザキ:最初のメイン・リフみたいに、がっつりしたリフってこのバンドではやってこなかったところなので、新しいと思います。

-ヤマザキさんが作ったMVもエキセントリックなユーモアがあって面白いですね。

今村:具合が悪くなりますよ。3回ぐらい見ると(笑)。

John:ポリゴンショック(笑)。

今村:子供に見せちゃいけませんみたいな。Johnが言ってくれたように情報量が多い曲だから、映像もそうしたかったんですよ。めちゃくちゃにしたかったというか、「KABUKI」ってものを過剰なまでに表現したかったんです。ただ、プロの監督に頼んじゃうと、きれいにまとめちゃうんじゃないかと思ったので、何もわかっていない俺たちが自分で作ったほうが行きすぎたものになるんじゃないかって(笑)。それでヤマザキに作ってもらったんですけど、そしたらほんとに行きすぎちゃって、行きすぎたまま公開しちゃうっていう(笑)。でも、ちまちまやっていてもカマせないんで、1回やるとこまでやってみて良かったです。ヤマザキはすっごく大変そうでしたけど(笑)。

ヤマザキ:めちゃめちゃ大変でした。

-今村さんの頭がひっくり返っちゃうところが僕は好きです(笑)。

今村:その首を自分で持っているっていう(笑)。あれ、テレビで流せないですよ。

-そんな「KABUKI」の他に3曲収録されているのですが、「anomie」、「Shimmer」、「Wheels」は、「KABUKI」の前にはあったわけですね?

今村:「anomie」と「Shimmer」はすごい前の段階でパーツだけありました。毎年、年始にみんなでデモを持ち寄って、会議するんですよ。合計何十曲ずっと聴いて、"これいいね。レコーディングしようよ"って、みんなで話し合うんですけど、そのとき、パーツだけあって、それをブラッシュアップしたんです。「Wheels」は新たにJohnが作ってくれて。「Wheels」には浅井も参加してます。レコーディングしているときは、まだ加入するのか、しないのか決まってなくて、"どうする? 俺たちはウェルカムだから、あとは浅井の気持ち次第だよ"って言っていて。ただ、レコーディングにはずっと来てくれていたんです。

浅井:見学に行ってたんですよ。

今村:それで「Wheels」でギター・ソロを弾いてもらったんですけど、それが終わってから"やります"って言ってくれて。だから、「Wheels」以外の3曲は、浅井は魂だけの参加なんです(笑)。

浅井:「KABUKI」のMVにも出演してます。

-その「Wheels」は、脱退した黒木さんのことを歌っているように聴こえます。

今村:そうです。黒木のことを書きました。友達が去るって初めての経験で、最初は悲しい。だけど、ちょっと経ってから"あいつ、急にやめやがって。腹立つな。なんでやめたの!? マジ意味わからないんだけど"っていうのがあって。でも、前に進まないといけないからちょっと落ち着いて、レコーディングってなったとき、自分を襲ったのは自分の無力さだったんですよ。何もわからないところから、みんなでバンドを始めて、どんどんブラッシュアップしてきたうえで、自分を確立できだしたと思ったタイミングでの脱退だったから、俺がもっと早い段階で安心してついていけるようなヴォーカルになってたら、あいつ、やめてなかったのかなって考えたりしたんです。彼を誘ったのは俺だったから、その責任もあって、ちょっと情けない気持ちから、そういうことを伝えたいと思いました。今も仲いいし飯食ったりするんですよ。だからって、"これ、お前の曲だよ"って言うつもりはないですけど、それでもメッセージは込めたいと思いました。

-この曲、イントロのリード・ギターのリフから歌が入るところで転調するじゃないですか。そこがすごく耳に残りますよね。

今村:だから、歌いづらい(笑)。難しいんですよ。この曲、静と動がどっちもあるよねってことで選ばれていて。いかにもロックってイントロからAメロになって、ちょっと優しくなって、Bメロで叙情的になって、サビでもう1回ロックに戻ってくるっていうストーリーがあるよねと。

John:そういうふうに作ったんです(笑)。

今村:サウンドもめっちゃいろいろやったよね。今回のレコーディングは、俺たちのギターを総動員して、合計20何本使ったんですよ。

浅井:それTwitterでつぶやいたら、すごく伸びたよね。

今村:「Wheels」は、「KABUKI」とはちょっと違うベクトルで、たくさんギターが入っていて。"この音、どうする?"ってかなりこだわりながら作っていきました。

John:最初は、全曲通してレスポールというか、ハムバッカーの太い音色のイメージで作ってはいたんですけど、レコーディング当日、ストラトキャスターも何本か持ってきてたんで試しに使ってみたら、Aメロのアルペジオをはじめ、レッチリ(RED HOT CHILI PEPPERS)っぽいというか、USな雰囲気が出て、乾いた音が優しいメロディにも合うなってなりました。

今村:1回そっちでサウンドを固めて、サビはガツンと来るんで、いつも通りジャムファズらしさを出しましたけど。

-ギター・ソロは浅井さんが弾いたそうですが。

浅井:いいソロが録れたと思います。イメージ的にはB'z。サウンド的にはさっきも言ったようにレッチリとかあるんですけど、その中に日本のロックの感じが要素として入ってきたのかな。フレーズはほぼJohnが考えたので、ニュアンスの表現も含め、難しかったですけど、個人的には満足できるソロが弾けました。

-曲順と逆になってしまいましたけど、「Shimmer」と「anomie」についても聞かせてください。

今村:「Shimmer」は、ヤマザキがイントロのアルペジオを作ったんですけど――

ヤマザキ:2年ぐらい前からあるんじゃないかな。

今村:ヤマザキはイントロを作るのが大好きなんですよ。たまに腹が立ちます。新曲かなと思ったら、"イントロだけです"ってふざけんじゃねぇよって(笑)。そのイントロをずっとやりたいと思っていて、1回曲にしたんですけど、ずっと取っておいたんです。それを今回ブラッシュアップしました。

-ギターももちろんですが、ベースも聴きどころですね。

今村:タッピングしてますからね。

John:最初、ヤマザキが作ってきたデモにベースも入っていて、そのフレーズもかっこ良かったからそのままやっても良かったんですけど、だいぶウワモノが強い楽曲なので、それに対抗しなきゃいけない。しかもギター・ソロの前に、たっぷり時間がある。だったら、タッピングするしかない。タッピングがしたいわけではなくて、あれが一番効果的かなと思って入れました。

今村:かっこいいよ。

John:聴きどころだと思います(笑)。

-この曲はシンセも入っていますね。

今村:これもはっちゃけてる。4曲なので、それぞれにはっちゃけないと、今まで通りになっちゃう気がして。それはみんなで話してたんですよ。「KABUKI」だけ今までと違って、他3曲は今まで通りだねでもいいと思うんですけど、やるなら全曲、その方向ではっちゃけようよって。「Shimmer」は「Shimmer」で行くとこまで行こうよってことで、ベースのタッピングも入れたし、シンセだって使っちゃおうよってなったし、躊躇することはなかったですね。逆に2曲目の「anomie」は唯一――

ヤマザキ:俺たちが前からやってきたことを突き詰めるのがとがってんのかなって。

-「anomie」って社会学で使われる言葉だそうですね?

今村:ヤマザキが付けたんですよ。オレもムズいよって思いました。

ヤマザキ:大雑把に言うと、でっかい社会の中で自分ってなんだろうってなる寂しさのことで、社会学者のエミール・デュルケームが提唱した概念なんです。この曲を作ったとき、うるさいんだけど、孤独を感じたんですよ。

今村:俺も聴いたとき、"anomie"って単語は思いつかなかったけど、たしかにうるさいけど、孤独みたいなことは合うなと思いました。サビは"I can't sleep well"って歌詞で始まるんですけど、一聴すると、元気のある曲じゃないですか。そこにそういう歌詞が乗るっていうのがすごくいいなと思っていて。自分ってなんなんだろうとか、歌詞にもあるけど、もし自分がいなくなったらみんなどう感じるだろうとか、バンドなんて、やってる人少ないし、そんななかで何を目標にやるのかとか。売れたい、売れたいと言っても、売る物体がないじゃないですか。だから、何を目指していいのかわからなくなることはたくさんあるし、そんななかで、自分の存在を見つけるために何かを探したり、何かの中に自分を投影したりして、どうにかやっているって状況を歌にできたらいいなという感じはありました。

浅井:ぱっと聴きロックンロールだし、UKロックっぽさもあるんですけど、フレーズもペンタトニックしていて、結構日本の歌謡曲っぽい要素もあるから、J-POP好きにも刺さる曲なんじゃないかと思います。

今村:爆音演歌です(笑)。

-もうすぐリリース・ツアーが始まりますね。

今村:8月5日から東京、名古屋、福岡と回ってファイナルがまさかの大阪。今までよりもかっこいいライヴになるのは当然ながら、コンセプトとしては東京と大阪が下剋上じゃないですけど、先輩たちに挑戦します。東京がSPARK!!SOUND!!SHOW!!、大阪が愛はズボーン、climbgrow、ENTH。結構意外な組み合わせですけど、負けたくない。ガチンコ勝負です。名古屋と福岡は同世代の仲間たちなんですけど、それももちろん勝負ですね。いい感じで対比もつけられるんじゃないかな。だから、東京と大阪は、ちょっとライヴハウスの規模も大きくて。

-ところで、ジャケットの写真の赤ちゃんは?

今村:俺です(笑)。神話でも一番崇められている太陽に追われるぐらいの存在という意味の"Chased by the sun"も、バスケットボールで史上最高選手を意味する"GOAT(Greatest Of All Time)"から付けた、1stアルバムの"GOAT"も、俺たちはもとから最強なんだよってつもりだったんですけど、今回も、逆境の中でも楽しめるのは生まれたときからなんだよってことを表現するために、赤ちゃんの写真を使いたかったんです。そしたら、家にこの写真があったから、これでいいじゃんって思って。ほんとは、メンバー全員の赤ちゃんのときの写真を貰ってコラージュしようと思ったんですけど、解像度が違ったらって考えたら、急にめんどくさくなっちゃって、俺の写真だけでいいやってなりました(笑)。