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INTERVIEW

Japanese

HIGH BEAM RECORDS

2021年01月号掲載

HIGH BEAM RECORDS

ライヴに人生を賭けるバンドたちのための音楽レーベル"HIGH BEAM RECORDS"が2021年の幕開けの1枚としてリリースするコンピレーション・アルバム。参加バンド全15組が同じベクトルを向いて、伝えたい想いがぎゅっと凝縮された曲がずらりと並んでいる。自分たちが音楽を鳴らし続けないといけないという使命感なのか、昨年も所属バンド全員が新譜リリースという凄まじいスピードで突き進んでいる。いったい、彼らをそこまで動かす原動力とはなんなのだろうか。今回はレーベル代表と所属バンド3組を迎えて、この1枚に込めた想いについて語ってもらった。

HIGH BEAM RECORDS:秋山 琢磨(代表)
PICKLES:RURI(Vo)
フラスコテーション:佐藤 摩実(Vo/Gt)
GAROAD:田伏 ユージ(Vo/Gt)
インタビュアー:宇田川 佳奈枝 Photo by うつみさな


最後に"そんな気がしている"という言葉があることで全部報われる。それだけで前向きになれる(佐藤)


-みなさんツアー、ライヴのときはもちろん会うと思うんですけど、レーベルメイトとはいえ住むエリアもバラバラで普段交流はあるんですか?

RURI:ないですね。

田伏:僕なんかはHIGH BEAM RECORDSに所属して、まだ1年も経ってないので。

秋山:なんだかんだ、もういろいろレーベル・イベントではやってるけどね。

RURI:だけど、まだ謎です(笑)。

田伏:それはGAROADが? 俺が? どっち(笑)?

RURI:GAROADが、かな? いや、同じくらいかも(笑)。

-そうなんですね(笑)。改めてコンピレーション・アルバム第2弾リリースおめでとうございます! 全15アーティスト、すべて新曲とかなり濃い1枚になっているなと思いました。

秋山:ありがとうございます!

-"落ち込んでいる暇はないな、顔を上げて前に進まないといけない"と腕を引っ張ってもらえた感じがしました。2018年に第1弾のコンピレーション・アルバムを出されてから約2年、制作の話はいつ頃から出てたんですか?

秋山:本来は2020年の早いうちに出したかったんです。前作(『V.A.ULTRA HIGH BEAM 2018』)は2018年11月末に出したので、リリースして1ヶ月経ったら旧譜感が出ちゃって。だから2020年は早い段階で出そうかなと思ってたけどこんな世の中になっちゃって。うちのバンドにはもちろん、他のバンドには声を掛けてはなかったんですよね。ただ、PICKLESとフラスコテーションとはV.A.出そうねって話をずっとしてたんです。リリース・ツアーありきで、いいタイミングを探してました。

-みなさん自身のリリースと時期が重なってましたけど、同時制作だったんですか?

田伏:そうっすね。GAROADは、今回録った曲はEP(2020年11月リリースの『夜明け待つ君への贈唄』)と同じタイミングですね。

佐藤:フラスコテーションも同じですね。

秋山:だからフラスコテーションはめちゃくちゃ早く終わってるんですよ。

佐藤:一気に録ったので、今年の春(2020年4月末)にはもう終わってました。

RURI:えぇ? すごーい!

田伏:そのころ俺らは、V.A.のことも知らなかった。

秋山:PICKLESも同じタイミングでやりたかったんだけど、曲作りが遅いんで(笑)、アルバムでいっぱいいっぱいになってたから、終わった瞬間にやるぞって伝えました。

RURI:はい......(笑)。

-PICKLES、フラスコテーションは第1弾にも参加されてますが、前回とは状況も気持ちも違うと思います。V.A.制作の話が出てきて、各バンドどういった気持ちで制作にのぞんだのかうかがいたいです。

佐藤:私はまずタイトルから先に決めるんですけど、"そんな気がしている"ってタイトルの曲が欲しかったんです。決めなきゃいけないこと、確信って大事やと思ってたんですけど"そんな気がする"ってのも意外といいことだと思うんです。ライヴができない世の中になるちょっと前ぐらいに書いたんですけど、今って確信を持って動くことができなくて、こうすれば良くなる気がするからやるっていうことがすごく多くて。

田伏:GAROADは今年5月にHIGH BEAM RECORDS所属なんで、EPの4曲と併せてV.A.で5曲作ってたんですが、すごいスムーズに決まったんですよ。今回V.A.に選んだのが「ハウル」っていう叫ぶとか咆哮という意味で、ダサい言い方をすると"負け犬の遠吠え"。EPに入れた4曲がわりと寄り添う系の曲で、この曲だけ"負けてたまるか"っていう感じでちょっと毛色が違ったんです。なのでいい意味で1曲浮きましたし、V.A.に入れる曲としていいなって。曲はあまり深く考えず、とにかく作りたいように作りました。

秋山:GAROAD史上一番いい曲ですね。

田伏:めちゃくちゃ気に入ってくれてるんです。

-PICKLESはどうですか?

RURI:私らがV.A.やるよって言われたときには、他バンドの曲が上がってきてたんですよ。だからうちらはうちららしい曲を入れたかったんです。PICKLESはポップな曲がお客さんに人気だったんで、第三者からの意見を聞いて、おちゃらけた感じの曲を入れてみました。逆に琢磨さんから知らされるのが遅かったぶん、他のバンドがどんな感じなのかを聞いてて。ずるいですけど(笑)。

田伏佐藤:(笑)

RURI:曲は聴いてないですけど、みんな前向きで結構真面目よ? って聞いてたので。V.A.なんで自分たちの一番の曲を出さへんといけないし、今回の話を聞いたときは、バンドやくざじゃないですけど、レーベルやくざだなって思いました(笑)。こんな"しんどい、しんどい"ってみんな言うてんのに(笑)。

-HIGH BEAM RECORDSに所属してないバンドもいますが、今回の参加バンドはどうやって決まっていったのでしょうか?

秋山:僕の一存です。特に募集とかはしてないですね。PICKLESやフラスコ(フラスコテーション)とカップリング・ツアー含め全国を一緒に回っていて、各地で世に出ていくべきだなと思えるバンドと出会えたので"一緒にやりませんか?"って声を掛けました。なので、自分たちのレーベルのバンドと対バンしてないバンドは基本いないです。pressureは前回も参加してて、三重にいるとても愉快なバンドなんですが(笑)。最近、ベース(Dandan)がずっとTwitter乗っ取られてるのが気になってる(笑)。去年のカップリング・ツアー("PICKLES&フラスコテーションCOUPLING TOUR『泣いてしまうなら迎えに行っちゃうわよツアー』")の上越で出会ったホロトニアは、コロナ禍になってすぐ、僕が新潟まで出向いて"こういうのやりたいんだけど、って参加してくれないかな?"って話をして。基本的にはどのバンドも対面でオファーしてますね。

-バンドからしたら嬉しいですよね。

秋山:わからないですよ!? 僕もずっとバンドやってましたけど、こういうことに誘われるのが嬉しいのか、それともうっとうしいのか(笑)。

佐藤田伏RURI:いや、嬉しいですね。

-気にかけてもらえてる、1枚に一緒に入れてもらえるってすっごく嬉しいと思いますよ。

秋山:そうだといいですけど。あと、今回初の試みでライヴハウス推薦も入れてみたんですけど――これは4つのハコにしか声掛けられなかったんですが、水戸SONIC、酒田MUSIC FACTORY、仙台RIPPLEは僕がバンド時代からずっとお世話になっているライヴハウスで。Lampshadeの駒ヶ根NIRVASHは、店長の誠(下平 誠)さんが前回のV.A.を聴いてくれて、フラスコにぜひ駒ヶ根に来てほしいと連絡してくれてからの付き合いなんです。熱い男なんですよ。なので、推薦枠で声掛けたいなと。意図しているわけではないですが、東日本ばっかりになっちゃって。西日本にも素敵なハコがたくさんあるのですが。仙台の堀越(徹夫)店長と水戸SONICはもう15~6年の付き合いで、どこも長い付き合いのあるライヴハウスです。

-てっきり公募して集まったバンドなのかと。あと、今回の曲順めちゃくちゃいいですよね。結構悩まれました?

秋山:お~嬉しい。毎回曲順はめちゃくちゃ考えますね。僕が未だにCDを作ることに無駄にこだわってる人種なんで。1枚にめちゃくちゃドラマを作りたいんですよ。いつも上がってきた曲を聴いて決めていくんです。ホロトニアの曲ができあがってきいたときに"これは始まりの曲だ"と。そう思っちゃったんですけど、結構悩んで......。うちのバンドを1曲目にしなきゃおかしいかなとも思いつつ、いろいろ並び替えて何度も聴いて。これは誰かの次に持ってこれる曲じゃないなと。極端な話、最後かなとも思ったんですよ。

田伏:あ~、たしかに。それもありっすね。

秋山:けど、やっぱり1曲目はこの楽曲に任せたいなって思って。

-順番はこうなったって、事前にレーベルのみんなには伝えたんですか?

秋山:PICKLESは昨日知ったみたいです(笑)。

田伏佐藤:えっ(笑)?

RURI:参加してるバンドに会ったときに"いや~、考えてるなぁ琢磨さん!"って話してて。うちらは"え? 知らんねんけど!? そうなん?"って(笑)。

田伏:早い段階からマコト(吉田マコト/Ba/Cho)と、フラスコ、彼岸、PICKLESの流れを見て"この流れアツいな"って話してたけど、まさか知らなかったとは(笑)。

秋山:いっぱいバンド参加してくれてるんで、誰に伝えたかわかんなくなっちゃうんですよ(笑)。

RURI:あ~うちの社長忘れてんねんな! って(笑)。

-ホロトニアの「雷乃発声」はライヴの幕開けのような印象で、ここから音楽の物語が始まるんだと――そして2曲目にフラスコテーションの「そんな気がしている」。Twitterで拝見したのですが"暗ーい曲しかできへん。ワクワクさせるような、キラキラな出来事が欲しい!"と悩まれてましたが、どういう意識で制作されました?

佐藤:基本、私は曲作るときにハッピーな気持ちで作れなくて。本当は楽しんで作りたい派なんですが、自分が"幸せ"ってなると逆にアウトプットできないタイプなんです。この曲はコロナ禍でできて。ライヴがやれなくなって、思うようにできなくなってしまって、そういった意味ではすごく不幸に感じてたんです。これまではスケジュールが決まってて確信というか、ここに向けて頑張ろう、ライヴを待っててくれている人がいるからそこに向けて作ろうってなってた気持ちが、突然全部消えてしまって。確信を持つことができなくなってしまったときに負の気持ちがあったんで、そう呟いちゃったんです。

-制作になると気持ちが下がっちゃうんですね。今は?

佐藤:うーん、一生探してます(笑)。"そんな気がしている"という歌詞の前まではすごく負の感じが強くって、自分を押しつぶしても押し殺しても、最後に"そんな気がしている"という言葉があることでこれまでのことが全部報われるというか。それだけで前向きになれる気がします。

RURI:うちらの「シランケド」と一緒ですね(笑)!

一同:ははははは(笑)。

田伏:それはずるいな~。