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INTERVIEW

Japanese

まなつ

まなつ

Member:いたやボーイ(Ba/Vo) アリー(Gt/Cho) ほたて(Dr/Cho)

Interviewer:石角 友香

2月からの3ヶ月連続配信リリース曲を含む、まなつ初のフル・アルバム『まなつのこれからのこと。』が完成した。そもそも楽曲やメロディの良さが際立つポップ・パンクや、00年代メロコアの色が濃いバンドだが、本作ではロックンロール・ミュージックが現状を打開してきた強さや、普遍性を感じ取れるほどの楽曲のレンジの広さも堪能できる。メンバー3人のキャラクターもいっそう濃くなってきた印象だ。やりたいこともできずに不安も募りつつ、でも誰もが同じような経験をした2020年。ほんとに自分のやりたいことはなんなのか、楽しいことはなんなのか。まなつの音楽と共に探してみるのもいいんじゃないだろうか。

-コロナ禍でライヴ活動がストップしていた期間、改めてバンドをやる意志の確認はしましたか?

アリー:しましたね。現場からは結構離れてたんで、もう1回再スタートのときにいかにスタートダッシュするかじゃないですけど。

いたやボーイ:休んでる間というよりかは、久しぶりにライヴハウスに行ったときの機材の匂いというか、独特のライヴハウスの匂いや、空気感で再確認みたいのはありましたね。何がいいかは特にわかんないけど、"やっぱりいいな"っていう(笑)。

-観に行ってる側からしても、ライヴがないと行く場所がなくなった気がしてて。ほたてさんはいかがですか?

ほたて:コロナの時期に、スタジオ自体が閉まっていて、ドラムもあまり叩けなくて。そもそもバンドと自分とはみたいな、自問自答する時間がすごく多かったんです。でも、実際にメンバーに会うとかして、単純に会って集まってやることがそもそも楽しいんやなと気づけて。"あ、これが続けてる理由なんかな"って再確認できた時間ではありました。

-とはいえ、シングルを連続リリースしてた頃からアルバムのヴィジョンはあったようだし。

いたやボーイ:そうですね。あの3曲のあとから始めたって感じではなかったので。あえてのあの3曲が先行みたいなところはあったんで、もちろんこういうアルバムにしたいってヴィジョンはあったし、3曲で季節をちゃんと追ってたんです。だから、そこでいったん時間が止まったものの、3曲を経てからのアルバムで伝えたいことはあんま変わんなかったかなというのはあります。なので、あの3曲へのリアクションというよりは、あの3曲を経て、アルバムを聴いてくれたときのリアクションには自信があるというか、繋がっていくだろうなとは思いますね。

-新たに書かれたであろう曲が今年の状況を思わせますね。特に1曲目の「僕たちの答え」は本当に何もできなかった夏を思い出すし。

いたやボーイ:まさにそうですね。

-みんなの最大公約数的な気持ちだと思います。

アリー:いろんな人が"そうそう"って思ってくれたらという感じですね。その中の僕たちの気持ちの歌、みたいなところはあって、そこは伝わったら嬉しいです。思うようにやることできず、みたいなのはめちゃめちゃあったんで。

いたやボーイ:それで"つらかったね"みたいなので終わらせるんじゃなくて――まだ完全に明けてはないんですけど、その時間を過ごしたうえで次何するか? っていう。アルバムのタイトルもわりとそういう気持ちが強い。昔過ごした季節のこととか、もちろん思い出したり、忘れないように刻んでいったりするんですけど、"つらかったね"で終わらせないっていうのが、アルバムに"まなつのこれからのこと。"って付けるに至った気持ちではあるんで。みんなが過ごした"あ、わかる"みたいな時間を"わかる"で終わらせずに、"そのうえでこれからどうする?"ってところというか。

-序盤はアルバムの中でも強い曲が続きますけど、「ヒーロー」をリードにした理由は?

いたやボーイ:「僕たちの答え」とどっちをリードにする? っていうので、最後まで2曲候補があって。でも、個人の気持ちの強さというか、曲のパワーみたいなところでは若干ですけど、「ヒーロー」のほうが、意志が固いというふうになんとなく僕は思ったんです。

アリー:両方伝えたいことはめちゃめちゃあったんですけど、「ヒーロー」は"こうなってやるぞ"っていう僕たちの意気込みが詰まってて、歌詞にもそんな意味を込められてると思うので、そこを届けていきたいなって感じですね。みんなこのコロナ禍で迷ったと思うので、「僕たちの答え」もそうなんですけど、その1個の気持ちとしてリードで届いたらなっていう。

-コロナ禍の中でも、特に外出もままならない頃は"NO MUSIC, NO LIFE.なのか?"という自問もあったと思うんですが、この曲の場合、"NO R&R, NO LIFE.なのか?"って問い掛けかなと感じて。

いたやボーイ:うん。俺らがロックンロールをやってるから、"NO R&R, NO LIFE."なだけであって、人によってその"R&R"は置き換わっていいと思うんです。そういうところで言ったら、「僕たちの答え」はタイトル通り僕たちに対してで、「ヒーロー」はもっと聴いた人個人個人、その人の一人称であってほしいってか、そんな歌詞になってるんですよ。コロナ禍を経て一発目のフル・アルバム、そしてリード曲ってなったら、やっぱ個々人の気持ちに何かをぶつけようと思ったんです。"僕たち"っていう意識ではなくて、"お前の"、"俺の"みたいな感じが両方ともあったんですけど、「ヒーロー」のほうが一人称の部分の強さが若干上だったんで、リードに相応しいんじゃないかなと。

-改めてメロディの良さや、展開の入っていきやすさもすごく感じました。全然、ややこしいことをしてない曲だと思うし。

いたやボーイ:そうですね。アルバムを作るにあたって曲をいっぱい作ったんですけど、その中から選ぶときもメロの良さなどから選んでて。そっから先、どういう曲にするか、構成にするかっていうのはチームみんなで考えてたんです。いい意味で削り落とした部分はいっぱいあったんで、いいとこだけが残ってるんだろうなって思います。

-話が脱線するんですけど、アー写はこのオークラ(ケースケ)さんのイラストでいいんじゃないか? と。

アリー:アー写、まんまとこれになりました。最近のライヴ・フライヤーとか、それなんですけど、やっぱすごいですね。パッと目を引く。

いたやボーイ:その絵の力は描いてくれてるオークラケースケ氏の力でもあるんで。アリーさんとの昔からの仲があるんで、ちゃんとまなつを見てくれてるからこそ、この絵になるんだと思います。もう自分たちでいい絵だと思って、"これでいいんじゃね?"っていう気持ちよりか、"これがいいね"となりましたね。

-ジャケットは飛行船ですか?

アリー:飛行船ですね。ずっと乗り物なんですよ。1回目は自主だったんですけど、そこからずっとお世話になってて、彼の中の、僕たちのアルバム・ジャケットのストーリーみたいなのがあって。ずっと乗り物を乗り継いで来てるんですけど、向かってる方向も同じにするとか。今回、初の全国流通フル・アルバムなんで、飛んだっていう。

いたやボーイ:やっと飛んだ(笑)。

-そうやって離陸するぐらいの勢いだということで、またアルバムの話に戻りますが、中盤に「ドロップ」と「夜のこと。」が続くのがいいですね。恋のシリーズで。

いたやボーイ:「夜のこと。」のときは完全に僕の個人的な話だったんです。今まで曲って自分の実体験や、自分の思ったことでしか書いてこなかったんですけど、それに対して「ドロップ」は、初めて他人の記憶に入り込むじゃないですけど、勝手にお邪魔して土足で踏み込んで自分がどう思うか、勝手に書いた曲なんで。そういう意味で同じ恋愛シリーズではあるけど、「夜のこと。」とまた違う荒っぽさというか。でも、昔からまなつでいいなと思うのが、失恋の歌とか書いても、わりとポップな音に乗せるところで。「ドロップ」もちゃんとハマってくれたから、すごく良くなったなと思いますね。

-2~3曲ごとにテーマが変わっていくので、それも飽きなくていいです。「月に叢雲、花に風」はガレージですね。

いたやボーイ:やっぱどうしてもやりたくなっちゃう。自分としては(収録曲に)選ばれないだろうなと思ってました。わりと安易な気持ちでパッと作ってパッと出したので、まさか選ばれるとはって。実はみんなやりたいのかな? と思いました。こういう、ギャンギャン鳴るようなの。

アリー:僕は、こういうのは大好きなんです。いい意味でシングル・カットできる曲じゃないような、こういう曲だからこそ、言えることがかなり詰め込まれているんで。実際録り方も何テイクも録らずパッて決めて、ギターもより荒っぽくというか、よりガシャガシャ後ろで鳴っててみたいな。で、アルバムの曲順でいくといったんここが真ん中ぐらいだと思うんですけど、ここでパキッと気持ちが入り直してくれたらなと。まぁ、でもヘイトが強い曲なんで。みんなイライラすることあると思うんで、そういうときに嫌いな人のことを考えながら聴いてくれたら、めっちゃ好きな曲になるんじゃないかな。

いたやボーイ:歌も一発ですけど、歌どころか、この曲をアルバムに入れるって決まってから、この曲だけはスピードがちょっとエグかったっすね。何も止まる暇なかったから。アレンジ考える、歌詞考える、レコーディングする、歌録りする、全部ほぼほぼ一発で終わっちゃったみたいなとこありましたね。歌録りのときも途中で録ってたマイクが調子悪くなっちゃって。でも、"もうこれで!"、"この一発で!"ってなりました(笑)。

-ほたてさんはこの曲、どうですか?

ほたて:私は特に激しい曲が好きってわけではないんですけど、チームまなつに男が結構多いんです。そのみんながこの曲を作るときに、単純にすごく楽しそうにやってて"あ、なんかいいな"と思って(笑)。それがこの曲の良さになってるのかなと。いたやさん(いたやボーイ)が"好きにさせろ!"って。まさに歌詞通りやけど、一番生き生きして作った曲だと思います。