Japanese
Laura day romance
2020年04月号掲載
Member:井上 花月(Vo/Tamb) 川島 健太朗(Vo/Gt) 鈴木 迅(Gt/Cho) 礒本 雄太(Dr)
Interviewer:吉羽 さおり
単純な"歌モノ"にはしたくない。曲全体で感じてもらいたいものがある
-この曲はレコーディングでいろいろできて楽しかったなとか、印象深く残っているなっていう曲はありましたか?
川島:僕は「radio」の歌入れですね。この曲は僕がメインで、ひとりで歌う曲なんですけど、最初にこの日に歌うっていう日にあまり良いテイクが録れず、プロデューサーの人に怒られて。そこから2~3週間はその曲しか練習をしないで、再度レコーディング日を迎えたんです。すごくプレッシャーをかけられてたから、すごく緊張してたんですよ。でも、ここで歌えないとヤバいっていうので、2~3時間ぶっ通しで歌って終わったんです。終わったあとには酸欠状態になって、帰ってから倒れ込んで寝てました。
鈴木:それ楽しかった話?
川島:いや、あれは印象深かったなっていう。結果良いテイクが録れたので。
井上:私はどの曲でもそうだったんですけど、迅君が歌っていたデモから自分の歌としてキーを変えたときに、パッと曲の景色が浮かび上がって見える感じが好きでしたね。それが毎回楽しくて。自分の歌になったというか。
礒本:ドラムは音作りが面白いなと思いましたね。これまでの作品もドラムの音作りに結構時間を割いてもらっていたんですけど、なかなかうまくいかないことが多かったんです。今回はアルバムの制作途中に、1st EPの『her favorite seasons』(2018年リリース)を録ったレコーディング・スタジオの方から、"レコスタの反響調整をする"と話があったので、行ってみたんですよ。そこで例えば、ドラムや吸音材をどこに置くかで音がどう変わるかの実験を一緒にして。そのノウハウをLaura day romanceのレコーディングにも持ち込んでみたんです。スネアの下にタオルを敷き詰めてみるとか。そこで鈴木が"これいいかも"っていう音に短時間で辿りついたり、技術的な面でもいろんな実験ができました。
鈴木:ニッチすぎる(笑)。誰が喜ぶの、その反響の話。
礒本:でも、サウンドにこだわるっていうことでは細部までできたので、納得して出せるアルバムだなっていう話でね。
鈴木:それはたしかにそうだね。
-手を尽くした作品ですね。鈴木さんが思い描いたような作品になったと感じますか?
鈴木:そうですね。達成度は高いかなって思います。いつも制作が終わった段階で、どうなんだろうって心配は残るんですけど、今回は自分のやりたいことができたなと。まだミックスも残っているんですけどね。
-いいアルバムになりましたよね。この若い世代でも、こんなふうに音を丁寧に追求して、こんなにも味わいのある、情緒ある音を出せるんだなっていう。
井上:たしかに、そういうことでは若さがない......(笑)。
川島:1ミリも若さがない感じかもしれない。
礒本:ちょっと玄人向けっぽいのかな。
井上:その玄人向けっぽいものをどう玄人すぎずにいくのかっていうバランスは毎回悩むよね。絶妙なところをどうくぐり抜けていくかっていう。
礒本:でも、「rendez-vous」とかは結構フレッシュな感じがあるよね?
-自分たちは周りからどういうバンドに見られていると感じますか?
鈴木:"曲"のバンドなのかなって思われているんじゃないですかね。
井上:うん、キャラクターとかよりもね。
鈴木:"曲"を褒められることが多いので。でも、単純に"歌モノ"っていうのにはしたくないんです。今回のアルバムはそこも意識しているかなと思います。
-その、歌モノっぽくしたくないっていうのは?
川島:やっぱりそこはオルタナ精神?
井上:うん。私もどうしても"歌モノ"っていうものだけにはしたくないなというのがあって、結構歌い方にしても考えますね。
鈴木:たぶん"歌モノ"っていうのになっちゃうと、それ以外に見られないみたいな感じもあるのかな。
川島:変なラベリングされちゃうのはあるかもしれないですね。どこにも転がれるようにしているのかなと思います。
-歌モノだって言われることで聞こえなくなってしまうものが出てきてしまうと。
鈴木:そうです。もっと曲全体で感じてほしいものがあって。歌モノだとどうしても歌が中心に聴かれてしまうので、そこはもったいないなって思うんです。曲全体として作っているので。
-そういうことで、同世代でシンパシーを抱くようなバンドや、これは刺激になるなっていう存在はいるんですか?
川島:似たようなバンドがあまりいないので、難しいですね。単純に僕たちよりも年の若いバンドが最近増えてきていているから、もっと頑張らないとなっていうのは思いますけど。
井上:近いところだとシンパシーを抱くようなバンドっていうのは難しいかもしれない。
鈴木:でも、理想としては、海外のバンドだとキャリアを重ねたような大きなバンドが創作欲を止めないというか、次の作品が出たときにちゃんと次のフェーズにいくような感じがあって、そういう姿はかっこいいなって思うんです。日本だとくるりとかもそうですけど、アルバムごとにガラッと変えてしまうのはすごく勇気があるなと思うし、ミュージシャンらしいあり方だなって思うので、そういうところでは影響を受けているかもしれないです。
-そういうのもあって、このバンドでも作品ごとにテーマや作風を変えているんですね。その話を聞くと次の作品への期待も高まります。
鈴木:予定では変わっていくと思います(笑)。ファンがそのバンドの作品を聴いたり、ディスコグラフィを見たりしたときに、"このアルバムは好きだな"とか、意見がばらけるのが好きなんですよね。
川島:たしかに、それでいろんな音楽の話ができるっていうのはいいよね。そうやって変化があることは有機的なバンドの姿だなと思うから。
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