Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

CASPA

CASPA

Member:Miyu(Vo) Natsumi(Gt) Toko(Ba)

Interviewer:山口 智男

16年2月、HAWAIIAN6の安野勇太が全7曲を提供したミニ・アルバム『さよなら世界』でデビューしたCASPAがそれから4年、ついに1stフル・アルバム『明日の足跡』をリリース。全13曲中7曲の作詞作曲をメンバー自ら手掛け、セルフ・プロデュースで完成させた『明日の足跡』はまさにこの4年間の彼女たちの成長の記録だ。バンド・サウンドのスケールアップもさることながら、その成長が痛みを伴うものだったことが窺えるところに、このアルバムの本当の聴きどころがある。一歩一歩、確実に歩みを進めながら彼女たちはどんな壁や葛藤を乗り越えてきたのか。そして、その経験はどんなふうに実ったのか。3人に話を訊かせてもらった。

-待望の1stフル・アルバム『明日の足跡』を無事リリースした現在の心境や、作品に込めた意気込みをまず聞かせてください。

Miyu:"この状況でリリースするの?"と言われたこともあったし、自分自身、一瞬リリースを諦めたこともあったんですけど、今はリリースして良かったと思っています。ライヴで直接お客さんに思いを伝えたり、自分たちの音楽で背中を押したりしたいと思っているのに、それができない今だからこそ、逆にリリースすることに大きな意義があるんじゃないかなと。

Natsumi:リリース・ツアーを延期せざるを得なかったのは残念なんですけど、CASPAとしては初の試みのサブスクリプション配信も、今回のアルバムから始めさせてもらっていて。自宅で自粛しているからこそ、いろいろな音楽を聴くことができる時間にもなっているんじゃないかと思っているんですけど、普段音楽を聴く時間がない方も新しい音楽を探せるときに配信を始められたことは、CASPAを知ってもらえるきっかけになるんじゃないかなとプラスに考えています。

-あくまでも前向きに捉えていると。Tokoさんはいかがでしょうか?

Toko:ほんとだったらライヴやツアーで直接アルバムを渡したかったし、これまでは実際に会ってファンの存在を実感できるところもあったんですよ。だから、ライヴができなくなっちゃってちょっと不安というか、ファンの反応が心配だったんですけど、ファンの多くがネット上でいっぱい反応してくれてすごく嬉しかったです。

-16年2月にデビューしてから、これまでフル・アルバムをリリースするタイミングはあったんじゃないかと思うのですが、この4年間、一歩一歩、地道に活動を進めてきましたね。

Natsumi:フル・アルバムはいずれ出したいという気持ちはありましたけど、まだ出す時期じゃないなと思っているうちにここまで来てしまいました(笑)。セルフ・プロデュースでやらせてもらうようになってから、"そろそろ出してみようか"と言われてやっと、今まで会場限定のシングルを聴けなかった人たちにも届けられるように、フル・アルバムを出させてもらおうとなったんです。

Miyu:自分たちで作った曲が増えたことを考えるとベストなタイミングだと思います。もともとCASPAは、HAWAIIAN6の安野勇太(Vo/Gt)さんからいただいた曲しかない状況で始まったんです。そこから自分たちでも曲を作り始めて、セルフ・プロデュースでレコーディングした会場限定のシングルが2枚あるんですけど、そのタイミングで自分たちが作った曲だけでライヴしたこともあって。それ以前の私たちにとっては、安野さんの曲を入れずにライヴをやるなんて怖くてできなかったんですけど、ちゃんと自分たちの曲を評価してもらえたという手応えがあるから、アルバムの1曲目に自分たちの曲(「DAYBREAK」)を持ってきたのも、"安野さんの曲に頼ってないぞ"という私たちの決意でもあるんですよ。だから、このタイミングで良かったと思います。

-おっしゃるように今回収録されている13曲中7曲のメンバーによるオリジナル曲が、アルバムの大きな聴きどころなんじゃないかと思うのですが、バンドを結成したときからオリジナル曲で勝負したいと考えていたんですか?

Miyu:もちろんその気持ちはありました。いつかはと思っていたんです。安野さんからいただいた曲は今もCASPAの曲として歌い続けているんですけど、"曲がめっちゃいいね"、"ありがとうございます"、"誰が作っているの?"、"安野さんです"と言うのがだんだん悔しくなってきて、"それしか評価されないのかな?"と思った時期もあって。だから、私がCASPAとして楽曲を作ったとき一番思ったのは、自分たちの曲でも評価してもらえるようになりたいということでした。

-Miyuさんが最初に曲を作って、バンドに持っていったんですか?

Miyu:私が作った「僕の証明」が最初にライヴで披露した曲になりました。

Toko:曲を作り始めたのはみんな一緒だったと思います。安野さんに提供してもらった曲を演奏するなかでバンドの方向性が見えてきて、自分たちでもと思うようになって作り始めたんです。

Natsumi:私はCASPA以前にやっていたバンドでも曲を書いていたので、書き続けてはいたんですけど、CASPAの曲になるのかどうか疑問があって。それに安野さんの曲と比べると自信が持てなかったんです。Miyuが持ってきてくれた「僕の証明」をみんなで形にして、それをライヴでやったときに"いいじゃん"ってお客さんが言ってくれて、自分たちらしさも出していっていいんだと感じたことで、メンバーに自分の曲を聴いてもらおうと思えるようになりました。

-Miyuさんは全曲自分の言葉で歌いたいという気持ちはないのでしょうか?

Miyu:それは全然ないです。だからってメンバーの思いを代弁しているというつもりもないんですよ。というのは、メンバーと私の思いはイコールだと思っているからです。だから、ふたりが書いた歌詞でも、自分の思いとして歌えるんですよ。

-じゃあ逆にNatsumiさんとTokoさんが曲を書くときは、自分の思いというよりは、バンドとしての思いを書いているわけですか?

Natsumi:自分が思っていることを書くと、ふたりも同じことを思っているんですよ。

Toko:歌詞を書くとき、スタートは自分の思いからなんですけど、さっきも言った安野さんの曲をやりながら見えてきたCASPAの方向性が常に頭にあるので、CASPAというフィルターを通して自分の思いを表現しているという感じになるんです。

-『明日の足跡』はデビューしてから現在までのCASPAの、ベスト盤と言えるんじゃないかと思うのですが、アルバムを作るにあたってはどんな作品にしたいと考えたのでしょうか?

Toko:タイトルに込めた意味がそうですよね。

Miyu:明日という未来を表す言葉と足跡という過去を表す言葉が並んでいるところに、意味があるんです。CASPAの今までの歩みを振り返ったときに地道だけど、確実に一歩一歩進んできたという思いがあって、その一歩一歩を誰よりもものにしてきたという実感があるんですよ。その一歩一歩で辿りついたのがこのアルバム。最初にミニ・アルバム(『さよなら世界』)とシングル(2017年1月『ユニコーンにのって』)を全国流通で出したあと、会場限定でEP(2017年11月『星屑讃歌』)とシングル2枚(2019年3月『燈』、2019年5月『Motive Power』)の3枚を出しているんですけど、シングル2枚は自分たちのセルフ・プロデュースで作りました。そこで自力で作ったからこそ、今回掴めた全国流通のチャンスだと思っています。過去を振り返ると誰よりも遠回りしてきたんですけど、その過去が本当に愛しいと思えるくらい大事なんです。だから、この過去を忘れずにこれからも進んでいきたいと思うし、この先道に迷ったときは過去の私たちが未来に希望を与えてくれると思うし、これからの道しるべになるような作品にしたいとも思っていました。