Japanese
ES-TRUS
2020年04月号掲載
Member:kyoka(Vo) ゆうき(Gt) Aito(Gt) 風児(Ba) REO(Dr)
Interviewer:山口 智男
-ところで、同じヴォーカルと言っても、バンドと弾き語りでは、やはり違うと思うのですが、kyokaさんはこのバンドで歌い始めた当初、どうでしたか?
kyoka:めちゃめちゃ難しかったです。歌はやりたいと思っていたけど、誰かに見られることまで考えてなかったというか、バンドになると、メンバーの人数が増えるぶん、背負うものも多くて、最初はMCもステージングも全然できなくて、棒立ちでずっと歌ってました。今思い返すと、恥ずかしいです。
REO:相当、進化したよね。だって、葬式みたいなライヴだったもんね(笑)。
kyoka:大きい音が鳴っているお葬式だったね(笑)。
-どこかのタイミングで、これじゃダメだと自分で思ったわけですね。
kyoka:始めた頃は、いつも対バンを含め、男しかいない中に私がポツンといる状況だったんですよ。だから、男のヴォーカルに勝つにはどうしたらいいんだろうということを考え始めて、もっと力強い声や高い声を出せるようになったら勝てるかもとか、できないことも場数を踏めばなんとかなるんじゃないかとか、いろいろと考えてやってました。
-メンバーそれぞれの音楽的なバックグラウンドも聞かせてください。
ゆうき:ギターを始めたきっかけは父なんです。若い頃、バンドをやっていて、パンクをやっていたらしいんですけど、ハイスタ(Hi-STANDARD)世代で。だから、車に乗ってもハイスタが流れる。家にいてもハイスタがかかっているという家庭で育ったんです。それで、中学時代にケガをして、それまでやっていた運動ができなくなったとき、"ギターでもやってみたら?"と父から勧められて、高校の軽音部ではずっとハイスタのコピーを、ひとりでやってました。"速くてできない"って誰も一緒にやってくれなかったんですよ。だから、みんなが聴いてるのを聴こうと思って、ギリギリELLEGARDENを知っている子が何人かいて、エルレ(ELLEGARDEN)をやったりして。そこからSiMとかcoldrainとかが出てきて、ラウドいいなとなって、先輩に誘われてマキシマム ザ ホルモンのコピー・バンドをやったりしましたね。だから、今でもよく聴くのは、サバプロ(Survive Said The Prophet)をはじめ、エモとかラウドとかが軸です。
風児:僕もきっかけは、父親がもともと、バンドをやっていたことですね。うちは母親もバンドをやっていたんですけど(笑)、うちの父がやっているModern Piratesってブランドがアーティストにギター・ストラップを提供したり、レザーのベルトを作ったりしているんですけど、そのつながりで父がGLAYのメンバーと1日限定でコピバンをやるというイベントが、僕が小6のときにあって、ある日突然、家にエレキ・ベースが来たんですよ。特にその頃、部活は何もやってなくて、何かやりたいと思っていたところだったので、それやらせてよって、そこからベースを始めたんです。最初はそれこそGLAYのコピーから始めて、段々掘り下げていったんですけど、いったんヴィジュアル系にたどり着いて、一時期は化粧しながらライヴもしてたんですけど(笑)、IKUOさんというトップクラスのベーシストを知ったとき、"なんだこの人は! ベースで速弾きしてるぞ! このスラップの音数はなんだ!?"と衝撃を受けて。それからずっとIKUOさんに憧れてるんですけど、IKUOさんがリスペクトしているベーシストも若手から大御所まで掘り下げて。だから、どのジャンルの音楽が好きというよりは、ベースが好きって感じですね。だから、東京事変の亀田誠治さん、二家本亮介さん、レッチリ(RED HOT CHILI PEPPERS)のFlea、MR.BIGのBilly Sheehan――すごいベーシストはみんな好きです。
-REOさんは?
REO:僕はもともと、中学生の頃まではドラマやアニメの主題歌を聴いてました。ゲーム・ミュージックも好きで、その影響もあるのか、バンドを始めてからFear, and Loathing in Las Vegasが好きになって、そこからバンドにハマって。高校時代はSiMとか、coldrainとか、Crossfaithとかにどっぷりハマって、ラウドロックしか聴いてなかったです。
-ドラムをやろうと思ったきっかけは?
REO:高校に入学して、部活、何に入ろうかなと思ってたときに前の席の子に"バンドやらない?"と誘われて、"じゃあドラムやる"って始めました。
kyoka:REOとは同じクラスだったんですけど、ペンで机を叩いてリズムをとるペンドラムっていうのをずっとやってたんですよ。それを見て、"おまえ、ドラム、イケるやん"って、みんなが言い出して。
REO:それでやってみたらハマりました。高校のときはラウドロックとGREEN DAY、SUM 41とかばっかり聴いていて、そこから自分のドラム・プレイの土台みたいなものができていきましたね。でも高校を卒業したタイミングで急に聴かなくなっちゃったんですよ。代わりにMAROON 5とか、MAGIC!とか、洋楽のポップス系を聴くようになって、そこからいろいろな音楽を聴き漁るようになりましたね。いろいろな音楽を聴くのが楽しくなって、洋楽のみならず、日本の古いポップスも漁っているうちに青山 純さんのドラム・プレイに憧れて、そこから青山さんが叩いていた山下達郎さんとか、シティ・ポップも聴くようになりました。
-面白い。そういう変化は今後、ES-TRUSのバンド・サウンドに生きてきそうですね。kyokaさんは、さっきYUIが好きだったとおっしゃっていましたが。
kyoka:そうですね。小さい頃は宇多田ヒカルさんとか、YUIさんとか聴いてました。そのあと、中学生になってからSCANDALをきっかけにバンドを知って、ワンオク、RADWIMPSを聴くようになったんです。ヴォーカルを始めてからは、当時、ギターを弾いていた子がLiSAさんの「Rising Hope」を聴きながら、"kyokaちゃんにはこの曲、歌えないよね"とケンカを売ってきたことがあって(笑)、"歌えるわ!"ってLiSAさんの曲を、Girls Dead Monster時代から聴き漁って、1曲ずつ歌えるようにしていきました。その頃から、女版SiMになりたいと思うようにもなったんですよ。ライヴで全部、曝け出すみたいな感じは、LiSAさんとSiMの影響ですね。あと、身近なバンドに影響を受けることも多いです。だから、身近にどんどん尊敬している人が増えていってます。
-そして、Aitoさんは?
Aito:中学生の頃に友達の家に遊びに行ったら楽器がたくさんあって、もともとギターに興味があったので弾かせてもらったのがきっかけです。もともとはJ-POPが好きで、SMAPやGReeeeNをよく聴いていて、ギターを始めてからバンドに興味を持って、ロードオブメジャー、映画版"BECK"の中に出てくる曲、B'zを練習してました。そのあと、ONE OK ROCKに衝撃を受けてどハマりして、高校でもコピー・バンドをやってました。
-ところで、ES-TRUSはどんなふうに曲作りをやっているんですか?
kyoka:基本的には私がメロディを作って、"こういう感じの曲にしたい"と、みんなに送ったものに対して、それぞれにフレーズを考えながらアレンジしていきます。だから、ラウドの要素をはじめ、いろいろなジャンルの音楽がごちゃ混ぜになるんだと思います。
-4人はアレンジを考えるとき、どんなことを意識しているんですか?
REO:ヴォーカル第一というか、ヴォーカルを引き立たせるフレーズやフィルを考えますね。歌のリズムに対して、似たようなリズムでアプローチしてあげると、ぎゅっと締まった感じがするんですよ。他の楽器についても、アレンジしてから合わせてあげようって、いろいろ考えます。わりと人に合わせるタイプなんですよ(笑)。もちろん、自分がやりたいことがあるときは、ちゃんと言いますけど。
風児:逆に僕は憧れていた人たちが派手なプレイヤーばかりだったので、ルート弾きで支えるというよりは、歌とギターを邪魔しないように、でも、いかにベース・ラインで遊べるか考えています。単純にツー・フィンガーで弾くだけではなく、タッピングを加えたりとか、ルートで弾くときもスライドしたりとか、ピッキングでニュアンスを変えたりとか、目立たない楽器と言われがちだからこそ、どれだけベースでこのバンドの色を出せるか意識はしていますね。極端なことを言えば、ベーシストが変わったら、音楽も全然変わっちゃうぐらいのプレイを目指していて。良くも悪くもクセを出していきたいんですよ。
-ゆうきさんはバッキングに徹しているとおっしゃっていましたが。
ゆうき:僕がこのバンドにサポートに入ったとき、もうひとり、前のギターがいたんですけど、僕が入るタイミングでその子が抜けて、僕ひとりになったんですよ。でも、風児がもうリード・ベースみたいなフレーズをずっと弾いていたので、ひとり抜けたぶん、当然、落ちる音圧を落とさないようにするため下を支えようと思いました。そこからチューニングも下げて、どちらかと言うと、ギターなのにベースの位置にいますね(笑)。上モノはAitoと風児に任せて、どれだけ低い音で音圧を支えられるかを常に考えています。
Aito:耳に残るフレーズっていうのは意識してますね。持ってきたバッキングとメロを聴いて、直感的にここの音が欲しいなって感じるので、それを踏まえてメロディの裏で鳴ってるギター・フレーズにも印象を受けるようなリードをつけるようにしてます。
-さて、このタイミングで全国流通盤をリリースすることになったのは、どんなきっかけで?
kyoka:他のバンドに比べて、歩みが遅いと思うんですけど、それは私自身のこだわりが強いからなんです。やっぱり納得いったものしか出したくないですから、曲作りも時間をかけて取り組んできたんですけど、ライヴしに東京や大阪に行ったとき、"私たちの代表曲です!"と言える曲がようやく揃ったというか、自分の中で、これ以上は出せないという曲が揃ったので、それらをまとめて、より多くの人に聴いてほしいと思って、全国流通を決めました。
-じゃあ、作るにあたっては、現在のES-TRUSのベスト盤ぐらいの気持ちで?
kyoka:はい、もうこれ以上はないです。
REO:これ以上ないって、とりあえずでしょ(笑)?
kyoka:もちろん今は、って意味です(笑)!
-シングルとしてリリースした「Despair Refrain」と「iL MiO」、そしてリズム・ゲーム・アプリ"Leaping Destiny"に提供したバージョンをリアレンジした「NOT HATCH~True or False ver~」以外は、このミニ・アルバムのために書き下ろした新曲なのでしょうか?
kyoka:「Despair Refrain」と「iL MiO」はライヴの定番曲なので、今回レコーディングし直して、収録しました。それ以外は新曲ですね。でも、「媚愛」は昔からありました。自分が傷つくことを知っても、その状況が幸せだと言えるという歌詞を歌える自信が、まだなくて、バンドとして曲にするのをやめていたんです。自信を持って、歌えるようになるまで出さないでおこうと思ってたんですけど、このタイミングで今だなと思いました。
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