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INTERVIEW

Japanese

ヤなことそっとミュート

2020年04月号掲載

ヤなことそっとミュート

Member:なでしこ 間宮まに 南一花 凛つかさ

Interviewer:宮﨑 大樹

結成から今に至るまで、ゴリゴリのバンド・サウンドな音楽性が高く評価されている


-ほぼ同時期にメジャー・デビューするアイドルってほかにもいるんですよ。戦国時代が落ち着いたものの、またいい流れが来るんじゃないかなという期待もしているんですよね。そのなかで、曲の良さで4年前から評価を得てきたみなさんが、その流れをリードしていくような存在になっていくのではないかって思っていて。

まに:......そうなりたいです(笑)!

-"シーンを背負って立つ!"みたいなことはなかなか言えないですよね(笑)。とはいえ、ここからのグループのヴィジョンみたいなものはあるんですか?

まに:結成から今に至るまで、ゴリゴリのバンド・サウンドな音楽性を高く評価していただいているんです。何度かバンド・セットのライヴもやっているので、アイドルという枠にとらわれずに、バンド好きな、ヤナミューをまだ知らない世間のみなさまに、もっとたくさん知っていただきたいというか。フェスに出るとか、まずはそういうところを目指していきたいなと。

-つかささんはどうです?

つかさ:もとから応援してくださっている方々を大切にするのはもちろんなんですけど、新規開拓はたくさんやりたいなと思っていて。音楽フェスにも出てみたいし、私自身はヤナミューとして海外に行ったことがないので、海外の人にアピールできたらよりいっそう広がるんじゃないかなと楽しみにしています。

-つかささん以外の3人は海外でライヴを経験していますけど、ヤナミューのライヴを海外でやったときって反応はどうでした? そもそもアイドルっていう文化もそんなにないじゃないですか。そんななか、尖った存在のアイドルが飛び込むわけで。

まに:(笑)今までアメリカ遠征とタイ遠征、2回海外遠征させていただいたんですけど、特にタイは現地のお客さんにすごく熱量がありました。もちろんアメリカのお客さんもすごく温かく迎え入れてくれたんですけどね。あまりアイドルアイドルしていない人たちが来ちゃったというのもあるかもしれないですけど、ライヴもたくさんの人が来てくださいましたし、特典会とかにも現地の方がたくさん並んでくださって。"海外にもこんなに熱量を持って私たちを好きになってくれている人がいるんだ"っていう発見というか、そういう気持ちがタイ遠征では特に強かったです。

-タイは日本のアイドルが浸透しているらしいですよね。

なでしこ:文化がすごく根づいているなって強く感じました。アジア全体でそういうふうになってきている印象があるので、タイ以外でも台湾とか、アジア系はもっと行ってみたいなって思いますね。

-ライヴの空気とか文化とかってやっぱり違うんですか?

まに:全然違いますね。アメリカ遠征のときなんかは、サイリウムというか、魔法のステッキみたいなものをライヴ中に掲げている方とかもいて(笑)。"ヤナミューでステッキなのか!"みたいな(笑)。

なでしこ:アメリカで、特典会に来たお客さんが"みんな、腕にサイン書いて"ってお願いしてきたので、全員でサインを書いたんですよ。そうしたら、そのあとすぐにそのまま(腕にサインの)タトゥーを彫ってきて、めちゃくちゃビックリ。"オー・マイ・ゴッド!"って思いました(笑)。

-この記事を読んで真似する日本人も出てくるかもしれないですよ(笑)? さて、海外も含めて届いてほしいのが、今回のメジャー・デビュー・シングル『Afterglow / beyond the blue.』ということになるかと思います。

まに:「Afterglow」は音源にはなっていなかったんですけど、2年前ぐらいにライヴでお披露目はしていて。そこからずっと歌ってきた曲だったし、応援してくださっている人たちにも馴染みがある曲だと思うんです。

-コアな部分は変わっていないながらも、ストリングスが入って進化も見せていますよね。

一花:ストリングスのアレンジっていうのは、このメジャー・デビューっていうきっかけがあったからこそ、実現できたのかなと思っています。そういった、いい意味での変化みたいなものは、どんどん味方にしてやっていけたらいいなと。

まに:ストリングス・アレンジですっていうのを最初聞いたときは、今までそういう曲がなかったので、"えっ、ストリングス・アレンジ? どうなるんだろう?"、"大丈夫だろうか?"って正直感じていたんですけど、いざできあがった音源を聴いたら全然そんな心配はいらなかったというか。今までのイメージが崩れることなく、より壮大に、世界観が広がったなって思いました。今までの曲が好きだった方々にも安心してほしいです。すごくドラマチックだし、ストーリー性がある曲なので、初めて聴いた人でも惹き込まれるんじゃないかなと。歌詞も読んでみて、2度美味しいというか。

-ストリングスが与えた変化は大きいですよね。シューゲイザーにストリングスが入るとこうなるんだという感動がありました。

つかさ:メジャー・デビューに相応しい曲ですね。以前から知ってくださっている方々もストリングスというアレンジが加わったことによって、新しい気持ちで聴いていただけるし、アイドルに興味のない方でも惹き込まれるんじゃないかなと思います。冒頭の"wake me up, again"とか、サビの"まばたく境界線 残されて彷徨う"が耳に残るから、あとで検索してくれる人もいるんじゃないかなと思っていて。歪み感は残しつつ、ストリングスが加わったことで、さらに繊細さもアップしました。

-「Afterglow」は、まにさんが先ほど言った通り、初披露が2018年じゃないですか? ファンにとっても、みなさんにとってもようやくの音源化で。曲への思い入れも強いんじゃないかなと。

なでしこ:「Afterglow」を披露したのが2周年記念という大事なイベント("ヤなことそっとミュート2nd Anniversary YSMTWO")だったので、そういう意味でも印象に強く残っています。ヤナミューでは「D.O.A」という曲と、この「Afterglow」が音源化されていなかったんですけど、"音源化してほしい"っていう声はたくさんあって。いつ音源化するのかなという感じだったんですけど、そうしたらまさかのメジャー・デビュー曲になりました。"音源化してほしい"って言っていた方たちに早くお届けしたいという気持ちがあります。

-もちろん他の曲も大切だとは思うんですけど、2年間ぐらい温められていたということは、何かグループにとって特別な意味のある曲だったんですか?

まに:大事な曲というのはもちろんですね。新曲をライヴでお披露目するときって、最近は同時に音源が出ることが多いんですけど、「Afterglow」は2年前のステージでお披露目してタイミングを待っていたというか、それが今だったという感じで。

-メジャー・デビューという大事なタイミングの曲だと思うので、それに見合うというか、ファンのみなさん、メンバーのみなさんも含めて、納得の曲ということですね。一方で、カップリングには新曲「beyond the blue.」が収録されています。

なでしこ:「Afterglow」は、"今まで寄り添ってきた人がいなくなった"という別れの曲なんですけど、「beyond the blue.」は、「Afterglow」でいなくなってしまった側の曲になっていて。アンサー・ソングみたいな感じで繋がっているんですよ。「Afterglow」は今までずっと歌ってきた曲だったので、それなりに自分の中での曲のイメージができあがってきていたんですけど、新たに「beyond the blue.」という曲が増えたことで、「Afterglow」に対する解釈とか印象とかに新たな発見がありました。曲同士が繋がっているものって、今までなかったので、例えば、「Afterglow」を歌うときに、「beyond the blue.」に出てくる登場人物の気持ちとかも考えたりして。他の曲に繋がる世界があるみたいなのは初めてだったので、すごく新鮮な感じでした。

-それってすごく意味があることですよね。今って、サブスク全盛だったり、単曲の配信シングルが多かったりするじゃないですか。そのなかで、1枚のCDの中でストーリーが繋がっているのって、シングルとしての価値が高まるというか。CDで聴いてほしい1枚になりますよね。

まに:うん、そうですね。

-この曲、個人的に曲の後半の部分がすごく好きで、ギター・ソロからの落ちサビ、そこからのラスサビ前への流れとかがすごく良くて。

まに:ギター・ソロのあとに静かになって、サビと同じメロディを歌うところがあるんですけど、そこだけ高いところをファルセットにしていて。そこがお気に入りです。後ろの音ももどかしい心情がすごく伝わってくるというか。

なでしこ:私は"手伸ばした 本当はただ触れたくて/ああ 遠くなる 君の背中"というところから盛り上がっていって、最後のサビに入るっていう流れがすごく好きです。そこは特に「Afterglow」の人物を自分なりに想像しながら歌っていて。すごく高まりましたね。

一花:私は、ラスサビでまにさんが歌う"ああ 遠くなる"というところがすごく好きで。静かというか、ほぼ、まにさんの声になっているところにグっと来ちゃった感じです。あとは、なでしこさんが言った"手伸ばした 本当はただ触れたくて/ああ 遠くなる 君の背中"のところをハモっているのも好きですね。

つかさ:「beyond the blue.」は、最後にハッピーエンドっぽくなるのが好きで。悲しい曲って最後までどんよりしているものが多いと思うんですよ。もちろんそこにも素敵な魅力があるんですけど、ヤナミューは基本的にはバッドエンドにしない、最後はハッピーに締めくくるみたいなのがあって。「beyond the blue.」も"また会えるまで"のところで、ちょっと明るく終わっているのがいいなと思いました。「Afterglow」だと、最初の"wake me up, again"のところが悲しめなんですね、後ろの音とかも。だけど、夢から覚めようってなったあとの"wake me up, again"はちょっと前向きになっていて。その変化が自分の中でいいなっていう印象を受けています。

-さて、このシングルを引っ提げて"AFTERGLOW TOUR 2020"(2020年4月11日より開催)が予定されています。

まに:今、(新型コロナウイルスの件で)時期的に大変じゃないですか。"ツアーが始まるころには落ち着いていてくれ"って思っています。バンド・セットも2回ありますし、全国ツアー自体も久しぶりなんですね。だからこういうどんよりした空気感を蹴散らせるように、各地で楽しく回っていきたくて。そのスタートが恵比寿LIQUIDROOMでのバンド・セットで、最後の新宿BLAZEもバンド・セットなので、バンド・セットで始まりバンド・セットで締めくくれるようにしたいです。このムードをぶっ飛ばすって感じで(笑)。日本各地、みんなで元気になりたい。

-ヤナミューって、音源ももちろんいいんですけど、ライヴでしか伝わらないことが特に多いと思っていて。轟音なのに音質が良くてとか、その場にいないと知ることができない魅力がありますよね。

まに:"ヤなことそっとミュート"って言っておきながら、ライヴでは爆音っていうのは結成当初からずっとそうで(笑)。曲を評価していただけることが多いので、もちろんそこがポイントだなとは思うんです。ただ、曲が難しいんですよ。ハモリとかも全部歌っているし、音域も広いし、難しい曲も全部生歌で。しかも、それを激しいダンスでやっているグループって、実はあんまりいないんじゃないかなと。"鬼気迫るパフォーマンス"とかよく言っていただけますし、音源だけではわからないというか、ライヴでこそ、私たちの魅力をわかっていただけると思うので、いろんな人にライヴに来ていただきたいですね。