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INTERVIEW

Japanese

上田麗奈

2020年03月号掲載

上田麗奈

Interviewer:吉羽 さおり

声優として数多くの作品に携わる上田麗奈が、久しぶりの作品となるニュー・アルバム『Empathy』をリリースする。2016年のデビュー・ミニ・アルバム『RefRain』では、クラシカルな曲や物語的な曲で、彼女の繊細且つ幅広い歌の表現、声の表現を堪能する作品だったが、今作は"Empathy"=共感をテーマとして、心を動かし揺さぶる、より躍動を感じる曲が揃う。Kai Takahashi(LUCKY TAPES)やORESAMAなどの作家陣が書き下ろしたポップな曲調の曲も増え、また自身も作詞を手掛け、より歌も内容もエモーショナルなものになっている。久しぶりのアルバムを作り上げるにあたって、シンガーとしてアーティストとして、どのような思いで向かっていたのか、話を訊いた。


私と誰かを繋げるものにしたい、誰かと共感できるような作品が作れたらって思って


-久しぶりのリリース作品で取材もたくさん入っていると思いますが、順調ですか。

順調ですが、まだ少し慣れないですね。これまでやってきたことや自分の思いを、短時間でギュッとまとめるのはやはり難しいなと思います。

-音楽のことはなおさら難しいという感じですか。

そうですね。もともと音楽に疎いほうなので......。ずっとお芝居ひと筋で、音楽のことはほとんど何もわからない状態で活動し始めてしまったので、とても難しいです。

-歌うことは好きではないんですか。

嫌いでした(笑)。

-そうだったんですね、意外です。

アーティスト・デビューをしませんかというお話をいただいたときは、本当に悩みました。1年くらい、待っていただいていて、その間にいろいろ考えて、やってみますと重い腰を上げるような感じで始めたんです。

-作品や時間を重ねてきて変化はありますか。

歌うこと自体に苦手意識はずっとあります。でも、チームで音楽を作ることは楽しいって思えるようになりました。みんなでひとつの作品を作るために意見を出し合ったり、自分が普段感じていることを一生懸命表現しようと頑張ったり。それが、すごく愛しいです。ひとりではなく、チームで何かをできるというのが素敵なことだなって。

-声優としてお芝居をすることと、シンガーとして歌うときの違いや、上田さん自身で線引きをしていることはありますか。

実は全然ないんです。今までやってきた声優というお芝居のお仕事を踏まえて、声優だからできることをちゃんとやれたらと思っていて。それを目標にしているので、歌を歌うというよりは、一言一言セリフを喋るような意識を大切に、毎回レコーディングに臨んでいます。

-リリース作品としては2年ぶりとなりますが、フル・アルバムとして今回はどういう作品にしたいかというヴィジョンはありましたか。

シングル(『sleepland』)を挟むと2年ぶりなんですけど、今回はそのシングルのときとは違いタイアップではない作品になるので、そういった意味で環境が近かったデビュー・ミニ・アルバム『RefRain』以来4年ぶりという気持ちが強いんです。『RefRain』のときは、自分はこういう思いを持っている、こういう人だっていう名刺みたいな作品として作らせていただいたんですけど、今回はそうではないものを作りたいというヴィジョンを持っていました。『RefRain』で一度すべて使い切ってしまったというか、自分はこういう人だっていう作品ができちゃったなと思って。次に何をすればいいかが、ずっとわからなくて、作り始めるまでとても時間がかかりました。

-1回、空っぽになってしまったんですね。

空っぽになっていましたね。『RefRain』の次をなかなか考えられないでいるのを見兼ねて、プロデューサーさんが、できることが見つかるまで待ってみましょうと言ってくださって、少しお休みの期間があったりもしました。で、そろそろやりますかという一声があり(笑)。新しく、何を作りたいのか、作れるのかを、改めて考えたときに、"名刺となるもの、自分ひとりについての作品は作ったから、今度は私と誰かを繋げるものにしたい"というイメージが浮かんだんです。誰かと共感できるような作品が作れたらって思って。そこで初めて"共感"という言葉が浮かびました。テーマが違えば、曲作りの方法もまた違っていて。いろんなことが、『RefRain』からガラッと変わっていきました。

-そこから、こういう曲がいいなとか、こういう作家に頼んだら面白いなと進んでいった?

はい。最初はどうやって曲を作るかというところからでした。共感をテーマにしたかったので、まずは自分が誰かと共感したことを思い起こしてみたんですが、そのとき最初に思い浮かんだのが、今まで声優として携わってきた作品やキャラクターたちでした。キャラクターを担当するとき、その子との共通点みたいなものを見つけて、"私もそういうのわかる"って思いながら、感情を際立たせていくようなことがあるんですが、そういうプロセスは、自分にはこんなところがあるんだなと気づかせてくれるきっかけになったりもするんです。キャラクターに出会って、共感して、自分にはこういう感情があるってわかる。そのひとつひとつの出会いをピックアップして曲を制作していくのはどうだろうかと。ひとつの曲に対して、ひとりのキャラクターとの"共感した部分"を込めて作っていく。そのために、それぞれの"私がそのキャラクターに共感した感情"に合う作曲家さんや作詞家さんは誰だろうって、意見を出し合って決めていきました。

-作家陣もかなりバラエティに富んでいて、色とりどりな曲が揃いましたね。

そうですね。リリースやアルバム・イメージが冬だった『RefRain』と比べても、今回は気持ち的にも時期的にも、より春っぽい作品になったと思います。