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INTERVIEW

Japanese

山本彩

2019年12月号掲載

山本彩

インタビュアー:沖 さやこ

山本彩が11月20日に3rdシングル『追憶の光』、12月25日にグループ卒業後初のオリジナル・アルバムとなる『α』を2ヶ月連続リリース。特に3rdアルバム『α』はグループを卒業してソロ・アーティストとして歩み始めた1年間を総括すると同時に、さらに音楽性の幅を広げた作品だ。今回2作品の新曲を中心に話を聞いたところ、彼女が様々な曲作りの方法に挑戦していることがわかった。様々なクリエイターとタッグを組んで活動する彼女の現在のモードを探る。


ひとりでやっていく覚悟が備わって、前に進んでいる実感がある


-『α』のジャケットとアー写はロンドンでお撮りになったんですよね。マスタリングはメトロポリス・スタジオにて、ARCTIC MONKEYS、Thom Yorke、COLDPLAYなどを手掛けたMatt Coltonが参画しているそうで。

ユニバーサル ミュージックのディレクターさんがよくロンドンに行かれていて、いろんな話を聞かせてもらっていたり、シングルをロンドンでマスタリングしていただいて"私も立ち会いたいな"と思っていたりしたところで"ロンドンに行ってみたらどう?"という提案をいただいたんです。初めてのロンドンで、ほぼ曇ってると聞いていたんですけど、天気にも恵まれて。メトロポリス・スタジオではQUEENのFreddie Mercury(Vo)さんが置いていったピアノの現物を見ることができたりして、公私ともに充実してました。

-ロンドンからお戻りになったあとは、グループ卒業1周年を迎えて。"早いなぁ"とツイートしていましたが、1stシングルの『イチリンソウ』(2019年4月リリース)は卒業してすぐにお書きになった曲でしたよね。あのころとだいぶ心境も異なるのでしょうか。

「イチリンソウ」は"グループを卒業してひとりでやっていくぞ!"という決意がほやほやの曲だなぁって(笑)。だから初心に返らせてもらえる曲になっていくんだろうな......という存在ですね。ツアーも制作もリリースも1年目にやる量じゃないな(笑)、というくらいやらせていただけて。そのおかげでだいぶ自信がついたところもあるので、おかげさまでいい意味で本格的にソロ・アーティストとしての気持ちにシフト・チェンジできた1年でした。だから「イチリンソウ」は"こういう自分も過去にいたな"という感覚があって。

-作ってきた曲に、その時その時の気持ちが封じ込められていると。

そうですね。たった1年とはいえ、気持ちの変化もあり、ひとりでやっていく覚悟が備わって、前に進んでいる実感があります。あと周りの人の"こういうことをやってみたらどう?"という意見を否定しないようにしていて、自分以外の人の感性にも意識を向けたいなと思っているんです。やりたい音楽はもちろんあるけれど、それ以外にもいろんな音楽性にトライし続けて、その先に残るものが"自分らしさ"や"自分の音楽"だと思っています。

-"自分らしさ"を大事にしたいと歌う曲が山本さんに多いのには、そういうことも関係していますか?

やっぱり中身はなかなか変わらないですよね(笑)。そういう変わらない精神性が、変わっていくサウンドに残ってるのかなって。『α』というアルバムも、この1年でいろんな音楽に挑戦した結果、バラエティに富んだ作品に仕上がったので、グループ時代にほんっとうにいろんなタイプの曲を歌わせていただいた経験が生きていると思いますね。自分自身に可能性と、その先が楽しみになる未知数を感じたんです。聴いてくれる方々にも飽きずに楽しんでいただけるんじゃないかなと思います。

-そうですね。3rdシングル曲「追憶の光」は小林武史さんプロデュースの冬のバラードです。

ストックの中にミディアム・バラードの方向にアレンジを進めていきたい曲があるので、1年の締めくくりであり3rdシングルという大事な場面で、ずっとご一緒したいと思っていた小林さんにアレンジのオファーをしました。まだ歌詞はなかったんですけど、ざっくりと"こういう歌詞を書こうと思っています"という意志は伝えておいて。

-それがなぜ、冬の失恋ソングになったのでしょう?

小林さんの手掛けてくださったアレンジを聴いて、"当初の歌詞から方向性を変えたほうがいいかもしれないな"と思ってこうなったんです。楽曲の構成自体もストーリー性があるので、歌詞もその流れに沿ってみて。だから物語を書いている感覚に近いんです。別れを迎えて傷ついていて、すぐにほかのことは考えられない......という状態だけど、自分やほかの人に負の感情をぶつけるのではなく、自分だけの力でその想いから抜け出して、相手に感謝の気持ちを抱ける。そういう優しくて強い女性の主人公像がありましたね。そういう女性に自分もなりたいなと思ったし、世の人たちもそうなれたら、誰も傷つけずに希望へと歩き出せるんじゃないかなと思ったんです。

-となると、直接的ではないけれど、世の女性たちへのエールでもある?

その意味合いもだいぶ大きいかなと思います。周りの人たちの話を聞いていても......すぐ仏のような気持ちで"つらいこともいい経験として受け止めます。いい勉強になりました。ありがとうございます"と思えないじゃないですか。でもそうすることでプラスになるのは、ほかの誰でもなくその人自身だと思うんです。それを歌で伝えられたらいいのかな......と思って。

-なるほど。そういう背景もあって、「追憶の光」は"つらい経験も人生の肥やしになる"と思える域にまで達していない時期の心境にスポットを当てていると。悲しい感情が綴られているのに、タイトルに"光"と入っているのは、そういうことも影響していますか?

光のほうに歩いていけるように、という意味を込めました。この曲自体も最後は"思い出に変えていく"とつらいままで終わらせているわけではないので、その前向きな感じを光や希望だと思ってほしいな、という気持ちがありましたね。

-これまでの山本さんにはない角度からの歌詞制作だったんですね。

たしかに。これまではずっと具体的に書きたいことがあって、それを曲にしてきたけれど、今回は小林さんのサウンドに引っ張られてこういう歌詞になって、そこから書きたいメッセージが生まれてきたので。書けた方法が違う、という感じですね。アレンジは自分の想像どおりでも、想像と全然違っても、どちらでもすごく面白いなと思うんです。それによって歌詞で書きたいことを広げていける感覚もありますね。