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INTERVIEW

Japanese

奮酉

2019年08月号掲載

奮酉

メンバー:高田 蒔(Gt/Vo) 河西 愛紗(Dr/Vo)

インタビュアー:山口 智男

"FURUTORI MUSIC"を掲げ、ふたりにしかできない、ふたりでしかできない音楽を自由奔放に追求する2ピース・ツイン・ヴォーカル・バンド、奮酉。彼女たちが2nd EP『エモーション-モーション』を完成させた。ひと皮剥けたことを印象づける全6曲を聴けば、期待のニューカマーと注目を集めるなかリリースした1st EP『はじめのセンセーション』から1年の間、彼女たちに成長を含む様々な変化があったことは明らかだが、なんといっても、『エモーション-モーション』における益子 樹(ROVO)とのレコーディング経験が、決定打となったようだ。SUPERCAR他のプロデュースで知られる辣腕をパートナーに迎えた、衝撃的だったというレコーディングをふたりが振り返る。

-今年の3月、"SXSW 2019"出演という形で初の海外公演が実現しましたが、いかがでしたか?

高田:アメリカにいる間は、本当に充実していました。ライヴはもちろんなんですけど、レコーディングもしてきたんです。

-あ、レコーディングも?

高田:はい。今回の作品には入っていないんですけど、これまでとはまた違う曲になったので、そのうちリリースしたいと思っているんです。その他、路上ライヴもやったんですよ。そのときは楽器を使わずにオケを流して歌ったんですけど、そういう経験を通して、メンタル的に結構強くなりましたね。"Japan Nite"では長尺でやらせてもらえたんですけど、自分たちでもすごく納得のいくライヴができたんです。そしたら思っていた以上のレスポンスが返ってきてすごく気持ち良かったし、嬉しかったし、持っていったCDも売り切れて。そんなふうに反応が形になって返ってきたのは自信にもなりましたし、もっともっと他の国にも行ってみたいとか、日本の中でもまだまだ行けてないところがいっぱいあるとか、まだやりたいことがいっぱいあるということが見えてきましたね。

-河西さんはいかがでしたか?

河西:反応がダイレクトに返ってきたというのはやっぱり大きかったですね。"初めまして"という環境で、しかも言葉も通じるかわからない状態で、MCは頑張って英語を喋ればコミュニケーションが取れるかもしれないけど、歌詞は全部日本語なので。特にラップは言葉が大事じゃないですか。すごく不安はあったんですけど、それでも反応がダレイクトに"おぉ~"って返ってきたので、自信にすごく繋がりました。"Japan Nite"は、言ってもバンドを観にくる人が集まるところだと思うんですけど、特にダイレクトだったのが、路上パフォーマンス。"SXSW"に参加していない、ただそこを通りかかっただけの人たちも足を止めてくれて、初めてチップを貰ったりしました(笑)。そういうダイレクトなコミュニケーションを音楽でできたことが、すごく印象に残っています。彼女(高田)が言った通り、まだまだできていないこととか、もっとこういうふうにすれば良かったこととか、どんどん見えてきたので、これからもっと頑張りたいと思いました。

-今回の『エモーション-モーション』は、その"SXSW"出演を挟んで前後にレコーディングしたそうですね。そういう経験が何かしら制作に影響を与えたところもあるんでしょうか?

高田:具体的に"ここです"ってことはないんですけど、音には表れていると思います。例えば1曲目の「BYE」は、"SXSW"でやることをイメージして作ったんです。

河西:こういう曲をやったら盛り上がるんじゃないかって。

高田:実際にやってみたら、反応は良かったし、自分がイメージしていたことが現実になると自信にもなるし、"この曲、大丈夫だ"っていう思いを持って帰ってきて、それをレコーディングできたので、そういう意味ではすごく良かったと思います。

河西:極端なことを言ってしまえば、"SXSW"を挟まなかったとしても、レコーディング期間が1ヶ月あったら最初と最後では絶対演奏は変わってるし、成長させられるものじゃないですか。ライヴの本数を重ねたり、毎日楽器を弾いたりしていくなかで変わっていくものもあると思うんですけど、それが今回"SXSW"っていう自分たちにとってキーとなるイベントを挟んだことによって、吸収するものが普段より大きかった。それは音に出ていると思います。

-『エモーション-モーション』を聴いたとき、前作の『はじめのセンセーション』(2018年リリースの1st EP)と比べてひと皮剥けたと感じました。それは前作をリリースしてから成長を含め、いろいろな変化があって、それが影響しているからじゃないかと思ったのですが、前作をリリースしてからどんな変化や成長がありましたか?

高田:もちろん前作をリリースしたときもこういう曲を作りたいというのはあったんですけど、自信を持って"これは奮酉っぽい"、"かっこいい"と思えるものが以前よりもだんだん見えてきて。今回、一緒にレコーディングしてくださった益子(樹/ROVO/Syn)さんと長時間プリプロを重ねながら、"この曲、もうちょっとこうしたらすごく良くなるよね"みたいに改めて客観視させてもらって。そのなかで、奮酉がやりたいこと......というか、自分たちが思いっきりかっこいいと思えるものが、具体的な言葉と言うよりは、感覚として明確に見えてきたと感じます。スタジオでセッションしていても、"これ、かっこいい!"ってふたりがぱっと思う、すごく気持ちいい瞬間が、この1年結構あって。そんなふうに曲がだんだん増えていったんですよ。自分たちをしっかりと見ることができるようになってきたんだと思うんですけど、どう?

河西:もちろん1年前も自分たちを見てたつもりだったし、前作を出したときは、"これが今の2ピース・バンドとしての私たちの答えです"って心から言ってたし、今でもそう思っているんですけど、2ピース・バンドって、制約がある一方で自由もあって。ふたりの実験、試行錯誤、工夫を私たちはすごく大事にしているんですけど、その答えを更新したというふうに思っています。どうして更新できたかっていうのは、彼女が言った通り自分たちをより客観視できるようになったところが大きいのかな。

-なぜ自分たちを客観視できるようになったんでしょうか?

高田:なんでだろう(笑)? 年月を経てというところもあると思いますし、さっき話した「BYE」のように、演奏しているところを想像しながら作るようになった曲があって、今までもこういうふうにやりたいという曲の作り方はあったんですけど、今思えば個人的には、今回はライヴ映像としてイメージしながら作る曲が結構あったなと。それもひとつの理由だったのかなと思います。

河西:前作をリリースして"この曲って、こういうふうに捉えてもらえるんだ"とか、"こういうふうに伝わるんだ"とか、"純粋に楽しみながら作ったけど、このアルバムの中ではこういうポジションの曲なんだ"とか、そんなふうに作品を1枚リリースしたことで、そこから返ってくるものを感じながら、"奮酉はこういうバンドになりたい"っていうのが、より具体的になっていったというのもあるし。曲作りに関して言うと、"1曲できた。やった!"で終わらせずに、そこから推敲する回数が増えていって。自分の中で"いい曲とは?"とか、"いいバンドとは?"とか、たぶん誰もが考えることだと思うんですけど、今の時点で、"こういう曲って、いい曲だよな"っていう答えが増えてきたっていうのもあるんじゃないかなと。

-前作をリリースしてから、お客さんに聴かれることを改めて意識するようになったところが大きかったのかなと、今お話を聞きながら思いました。だからって気に入ってもらえる曲を作るということではなくて、届けることとか、その曲を聴いたお客さんがどう思うのかってところとかまで考えて、音楽を作るようになったんですかね。

河西:そういう要素は絶対増えたと思います。

高田:自分たちはもちろん自分たちの曲を気に入っているんですけど、自信を持って、自分たちがやっていることをもっと多くの人に聴いてもらいたい......っていうか、曲たちをもっと多くの人たちの耳に触れさせたいという思いが大きくなってきて。この曲は聴かれるためにあるんだって思うようになってきたんです。おごっているわけじゃないんですけど、"自分たちがパワーや熱量を込めて作ったこの曲は、絶対届けたい"とか、"この曲を聴く人がいるんだ"っていうこととかを、ちゃんと考えるようになったのかもしれないですね。

河西:このふたりがいいと思ったものは絶対いいという自信はあるし、その自信はさらに強くなっているし。