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INTERVIEW

Japanese

SNARE COVER

2019年05月号掲載

SNARE COVER

Member:斎藤 洸

Interviewer:石角 友香

2001年の結成当初はバンドだったSNARE COVERが、ヴォーカリスト 斎藤 洸のソロ・プロジェクトとなって約2年半。歌とギターとルーパーを駆使したライヴや、"劇場版総集編 メイドインアビス【後編】放浪する黄昏"のエンディング・テーマ「reBirth」の歌唱で、知る人ぞ知る存在として徐々に存在感を増している現在。ついにミニ・アルバム『Birth』をリリースする。変幻自在な声の表現はもとより、ソングライターやトラックのセンスの全貌もダイレクトに知ることができる。日本人ならではの謡の要素と国境を超えて、人間のDNAが反応するある種の懐かしさや美しさを持つ、あの声の持ち主はどんな人なのか? 初インタビューでひもといていく。

-基本的なことをおうかがいするのですが、今回のミニ・アルバムは斎藤さんのソロ・プロジェクトになってから初のリリースですか?

そうですね。アルバムとしては初めてです。今回、満を持してという感じにはなったんですけど。

-本作を制作することになった経緯というと?

ソロになってすぐに"エマージェンザ"っていう大会に出て、そういう大きな動きがあったので、リリースするまでちょっと時間が空いてしまって。いろいろ紆余曲折があったんですけど、逆に関わる人が納得する状態でリリースできるタイミングになったので、良かったかなと思います。

-"エマージェンザ"に出場したきっかけはなんだったんですか?

ソロになって何かひとつ自分の名刺みたいなものが欲しかったっていうのもあるし、インパクトをつけたかったっていうのもあって、自分が外に出るために何が必要かな? 自分を知ってもらうことが先だなって、アンテナを立てていたんです。"エマージェンザ"の存在は知っていたんですけど、そのときにたまたま思いついてパソコンを立ち上げたら、2017年度の日本大会の締め切りがあと1日とかのタイミングで。それですぐに履歴書みたいなのを書いて、音源を送ったんです。そしたらギリギリ予選に出場させてもらうことになって、そこからすべて始まった感じですかね。

-そこでの優勝がアニメ"メイドインアビス"のサウンド・プロデューサー Kevin Penkinさんとの出会いに繋がっていくんですか?

Kevinとはまた別なんです。"エマージェンザ"に出るちょっと前に、たまたまKevinが所属しているレーベルの日本人のプロデューサーさんが、アニメ関係のサントラとかをやるということで海外のアーティストや作家さんを連れてきて仕事していて。その方は、僕の古くからの音楽の先輩なんですけど、Facebookで僕が歌っている映像を観て、中性的な声が必要だということで使ってくれて、そこから繋がったんです。

-その繋がりで"メイドインアビス"の劇伴「Hanezeve Caradhina」を歌うことになったんですね。

そうですね。僕が歌ったその曲がサントラの中でも一番人気になって、そこからYouTubeのコメントとかもいろんな国の人が書いてくれるようになって。"またコラボレーションしないのか?"とか、そういう声をいただいていたので、今回のリリースには意味があるなと思いますね。

-面白いなと思う感想はありましたか?

人気のあるその曲が造語の歌なので、"歌詞の内容はなんなのか?"とか、そういうコメントが圧倒的に多くて。どこの国の人も何を歌っているか知りたい、みたいなのはあるし、"なんなんだろう?"と気になる存在になって広まったところもあるみたいです。また、今回収録した「Birth」という曲も言語がなく、造語で歌っているっていう繋がりがあります。

-歌唱法とか声そのものに関する感想はどうですか?

声に対する反応も多いですね。"きれいな声"とか"声じゃないと思った"って反応も結構多くて。"ヴァイオリンの音かと思った"とか、"本当に歌ってたんだ"っていうのもありましたね。あとは節回しとかに独特のクセがあるみたいで、そういう感想もあります。

-日本人がR&Bを聴いたときに感じるコブシみたいなものを海外の人は感じているのかもしれないですね。

それだとすごく面白いというか嬉しいですね。僕らからするとR&Bのあのフシって、絶対に日本人はできない、真似事になっちゃうオリジナリティだと思うんですけど、それを逆に感じてもらえているんだとしたらすごく嬉しいです。

-今回のアルバムは音数も削ぎ落とされていますね。サウンド・プロダクションのヴィジョンはありましたか?

やはり、いかに歌を美しくとか、芸術的にとか魅力的に聴かせるかってところを中心に置いていて。あとは言葉もなるべく伝わる――自分が本当にいいと思ってることをうまく人に伝える方法ってなんなのかな? って考えました。だからど真ん中の、日本で聴くような音楽ではないと思うんですけど、その中でも言葉の伝わり方は意識しましたね。

-今って世界的にも、基本的に音数は少なくて印象的に聴こえるものが多いですが。

たしかにトレンドになってますね。なんかベース音、キックとかの数が少なくて、一見"この音が鳴ってるよ"ってわかんない感じの音がインパクトでドーン! って飛び込んでくるとか、そういうのはR&Bとかでも多くて。ちょっと変って言ったらあれですけど、マニアックな感じも、今は耳が肥えている人が多いのか、いろんな方たちが受け入れている状態というのもありますね。なので僕のこういう表現もわかってくれる人が多いんじゃないかなって気はしました。

Billie Eilishの音像とか。

はい(笑)。すごいですよね。結構注目してます。

-そうなってくると斎藤さんの音楽的なバックボーンが気になるのですが。

僕がシンガー・ソングライナーになるきっかけはNIRVANAとか90年代前半のグランジ、オルタナ系と言われる音楽の影響が大きくて、そこからギターを持って作曲をするようになりました。それまではドラムを叩いてコピー・バンドをやっていたんですけど、シンガー・ソングライターをやるっていうのでギターを持ったんです。

-グランジの影響って、そのまま影響を受けたバンドをやる人と、精神的な影響を受ける人の両方がいると思うのですが。

ですよね。僕の場合は日本語で歌いたいっていうこだわりが最初からあったし、オリジナルがやりたい、漠然と何かをアウトプットしたいっていうのがあって。表現するにあたってドラムじゃないとなると、やっぱりソングライターというのが一番の方法だなと思ったんです。Kurt Cobain(NIRVANA/Vo/Gt)のライヴって、単純にかっこ良くて憧れる感じがあって。"あ、これが自分のやりたい表現方法だな"と思ったんです。なので、サウンドの影響もあるんですけど、一番は彼の存在感ですね。

-当初はバンドで今はソロですが、ソロの手法をとるときの影響源はありましたか?

僕のスタイル的には影響としてEd Sheeranを挙げられることがあるんですね。それも間違いじゃないし、彼のプレイ・スタイルにはなるほどな、と思うことはあるんですけど、実は全然そうじゃなくて。ひとりでもできる方法っていうのは、ループ・プレイとかが昔からあったんですよね。でもループは楽器でやる人が多いっていうのがあるし、クリエイティヴに感じることはそこまでなかったんです。僕はやっぱり歌が好きで歌を聴かせたいので、ループをやるとただ単に長くなっちゃう。なので、最低限のループで必要以上に重ねないっていう方法を編み出してからは、"あ、これいけるな"と。それで修正していったというか。