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INTERVIEW

Japanese

the cibo

2019年01月号掲載

the cibo

Member:前川 翔吾(Vo/Gt) ミブ リュウヤ(Ba) 西川 いづみ(Dr)

Interviewer:山口 智男

いろいろなものに挑戦するけど、自分たちの本質をしっかり見せていけば、それが美しい姿になると思う


-作詞作曲はすべて前川さんですが、前川さんが作った曲をどんなふうに形にしていくんですか?

前川:スタジオで僕が弾き語りしたものに合わせてもらって、ちょっとずつ形にして持って帰って、そこに手を加えたものをスタジオでまた合わせて。だから、書き上げたものを持っていくと言うよりは――

ミブ:"せーの"で作り始める感じです。

前川:でも、僕ワガママなんでレコーディングの直前に"ここ、こうして"って(笑)。今回、新曲はレコーディングするまでライヴでやってなかったんで、"完成ってどこ?"みたいな。"またなんか言ってくるんちゃうんか"みたいな感じはあったよね(笑)。

西川:"この曲、メロディがついたらアレンジがまた変わるんじゃないか"ってヒヤヒヤはありましたね。

前川:でも、それはギリギリまで曲のことを考えているからなんです。"まだ、いいもんあるんちゃうか?"っていうのが尽きないんですよ。

ミブ:だから、それがイヤというよりは、絶対良くなるって僕らもわかってるんで、できるだけ対応するようにしてます。

前川:そこがバンドの面白さだと思うんです。僕にない感性が合わさって、いい音楽になる。自分も予想していなかったものが最後にできるのが一番楽しいんですよ。だから、フレーズもふたりに任せてます。でも、そのわりに文句が多いっていう(笑)。

-トリオ編成ということもあって、リズム隊のふたりも主張しているアレンジになっていると思うのですが、どんなことを意識しながらフレーズを作っているんですか?

ミブ:俺らふたりで一致している意見として、歌が最優先なんです。だから、歌の邪魔にならずに、どこまで攻められるかですね。

-どこまで攻められるか。そこがthe ciboのバンド・サウンドの聴きどころでもある、と?

ミブ:そう思ってます。

前川:歌が絶対一番なんですけど、僕らのライヴ、めっちゃ音がデカいんです。なんで爆音でできるかっていうと、僕の声がめっちゃデカいんですよ。しかも、抜ける。だから、演奏もバチバチでやっていこうぜって。

-さっき"the ciboらしい疾走感"とおっしゃいましたが、「HELP YOU AND ME」、「≒flower」、「アルムアの森」は、疾走感とはまた違った魅力が感じられますね。 

前川:今回、リズムの違う曲をどんどん入れていきたかったんですよ。だから、"こういうリズムで曲を作りたい"っていうことが多かったですね。

ミブ:「HELP YOU AND ME」の2ビートは初めてでした。

前川:"ほんまに2ビートするの!?"みたいな感じだったんですけど、そこも"信じて。マジで大丈夫だから"って(笑)。

西川:結果、ぴたっとハマりましたね。

-今回、他に新たな挑戦は?

前川:1曲目の「ESSENCE」はギター・リフとベース・リフで始まるんですけど、リフものの曲ってあまりなくて、ミブがリフを持ってきたんですよ。でも、新しいものに挑戦しているけど、めちゃめちゃthe ciboらしさもあって。the ciboの本質と新たなものがいいバランスでひとつになっていると思って、そこから、ありのままの姿が一番美しいという歌詞を書きました。それで、"本質"を意味する"ESSENCE"というタイトルにしたんです。僕らもいろいろなものに挑戦するけど、自分たちの本質をしっかり見せていけば、それが美しい姿になると思うんですよね。ちなみにド頭に、どえらいフィードバック・ノイズが入ってるんですけど、あれもめちゃめちゃthe ciboなんですよ。それも本質です(笑)。

-ところで、歌詞はほぼ、"君との関係の中でのいろいろな感情"を歌っていますが、どんなことがインスピレーションになっているんでしょうか?

前川:"あなたの人生ってなんですか?"って問われたら、暗いわけじゃないんですけど、僕は"さよなら"なんですよね。

-あ、それは今回、聴きながらいろいろなところで感じました。

前川:そこで心が動くことがめっちゃ多くて。その"さよなら"も二度と会えないものもあるし、再会できるものもあるんですけど。だから、君との関係という意味では、いつまで一緒にいられるかわからない、結構儚い関係のふたりの物語が詰まってるのかな。実は曲の流れも、5曲目の「奇跡と軌跡」ぐらいまでは、一緒にいられるようにふたりで切り開いていく話なんですけど、徐々に、会えなくなっていく話や会えない距離を歌う曲になっていくんです。

-そんな歌詞の中で「≒flower」と「アルムアの森」は他の曲と書き方が違いますね。特に「≒flower」は、女性の視点の歌というところが面白い。

前川:そうですね。美しいものが好きなんですけど、嫉妬のような望んでいないのに出てきてしまうどろどろした感情って誰にでもあるじゃないですか。僕自身はできれば嫉妬なんてしたくない人間なんです。でも、出てきてしまう。それも人間の本質だと思うんですよ。そういうものを違ったところから歌ってみたかったんです。僕、あまり誰かが好きみたいな恋愛の曲は書かないし、「≒flower」もそういうフレーズは書いてないけど、思いっきり、苦しいぐらい、あなたのことが好きですよって気持ちになって書きました。

-それは女性の視点を借りるから書ける?

前川:それはめっちゃあります。たぶん僕目線で書くと、もっとえぐくなる。いつか書いてみたいですけどね(笑)。どえらい歌詞になりそうだけど。

-ファンタジックな「アルムアの森」も含め、歌詞の面でも幅広さに挑戦しているわけですね。そんなアルバムを完成させて、どんな手応えを感じていますか?

ミブ:もちろん、これからも進化していくんですけど、現時点で一番かっこいい。一番僕らの味が出ているアルバムになっていると思っています。

西川:全曲表情が違うので、聴き応えがあると思います。ドラムのリズム・パターンもいろいろ変えているんですよ。作った側としても満足できるものになりました。

前川:聴いている人の人生にとって、めっちゃ大切な瞬間や決断の瞬間に聴いてもらえるようなものになったと思います。

-最後に、"HOPES -a Lost World-"というタイトルに込めた想いは?

前川:"HOPES"は"希望"という意味なんですけど、1曲1曲が希望というわけではなくて、何かが失われた世界から希望を探しにいく10個の物語なんですよ。だから、聴いている人たちにとって、この作品が希望になるかどうかはわからない。でも、希望を探していくときに流れている音楽になればいいなという想いを込めました。