Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

アバランチ

2018年11月号掲載

アバランチ

Member:千野 洋平(Vo) 鈴木 雄樹(Ba) 青木 哲哉(Dr)

Interviewer:蜂須賀 ちなみ

"愛とか友情だとか キレイ過ぎると嘘くさくて/それでも涙は出るから俺は相当嘘くさいだろう"――普通に涙を流せればきっと楽になれるだろうに、そうやって物事を斜めから見てしまう男、千野洋平を中心に始動した山梨県出身の4人組ロック・バンド、アバランチ。地元から4年前に上京、これまでに6枚の自主制作デモを制作してきた彼らが、初の全国流通盤『彼岸花と置手紙』をリリースする。新旧楽曲を網羅した本作は、現時点でのベスト盤と言えるような充実の内容だ。今彼らが、自分たちの本質を理解し、振り切ったサウンドを鳴らすことができた理由とは? 千野、鈴木雄樹、青木哲哉の3人に話を訊いた。

-自主制作音源はコンスタントに制作していたものの、今回が初めての全国流通盤だそうですね。今、踏み切ることに決めた経緯を教えていただけますか?

千野:このアルバムを作る前に自主制作で『ロストワールド』(2018年3月リリース)っていうデモを出したんですけど、その中に入ってる「ジャックとペグ」を聴いたONSOKU RECORDSの久保寺さんから"こういう曲が書けるんだったらいけるよ。手伝うからやろう"っていうふうに声を掛けてもらって。それがきっかけですね。

-「ジャックとペグ」に対してはご自身でも手応えを感じてたんですか?

千野:そうですね。自分はいろいろなものに影響されやすくて、作る楽曲のタイプがあっちに行ったりこっちに行ったりして、気分によってすごく散らばっちゃうタイプなんですね。そんななかで「ジャックとペグ」ができた時期は"アバランチの芯の部分はどこなんだろう"みたいなものに対して迷走してた時期でもあって。そこで何も考えずに素直に書いてみようと思って、ひと晩で一気に作ったのがこの曲だったんですよ。それによってひとつ開けたような感触もあったので、自分たちとしても"これだったんだね、やっぱり"っていう手応えを感じてはいました。結局何も考えずに"(自分たちが)やりたいように"、"自然と出てきたものを"っていうのが正解だったんですよね。これまでは"こっちとこっち、どっちがいいだろう?"っていうふうに考えてたんですけど、結果、そのどっちもだったんです。

-その部分についてもう少し具体的に聞かせていただけますか?

千野:自分はRADIOHEADや椎名林檎さんのような禍々しさのある音楽が結構好きで、バンドで表現したいのはそっちだと思ってたんですけど、バラード調でメロディやコード進行の優しい音楽も好きなんですよ。そういうバンドの中での二面性を混ぜ合わせようと思って、曲作り中、実験的にいろいろやってみたんですけど、結局両方のいいところを潰し合ってしまってうまくいかなかったんです。そこで、ひとつの楽曲の中でそれをやろうとしていたのを、そうじゃなくて、いちライヴという単位、バンドという単位の中で創造していくのがいいのかなと。そうやってちゃんと曲を理解してあげれば、陰と陽の両方をやることも不可能じゃないなっていうふうに結論づけました。そこに辿り着くまでにちょっと時間がかかっちゃいましたけどね。

-つまり、考え方を少し変えただけで、今まで自分たちがやってきたこと自体が間違ってたわけではなかったと。

千野:そうですね。そういう感じです。

-そして今回リリースする作品は、1stフル・アルバムにして、現時点でのベスト・アルバムといっても差し支えのない内容になっていますね。改めて、どんな作品になったと感じていますか?

鈴木:さっき二面性っていう話も出ましたけど、アバランチには毒々しい部分もあり、救いみたいなものもあるかなって自分的には思っていて。その両方がすごくいい感じで出てるかなっていうふうに感じますね。アルバムを通して聴くことによって自分なりの物語を作れるのかなと思うので、そういうふうに捉えてみてほしいです。

-たしかに、ドラマ性が高くてとても聴き応えがありました。ヴォーカルを一番大事にはされてるんですけど、他のパートに関しても"なんだ、今の動きは?"、"なんだ、今の音は?"みたいな嬉しい驚きがたくさんあって。

青木:ありがとうございます。これまではギターがずっとサポート・メンバーだったんですけど、昨年の12月に4人全員が正規のメンバーになって。それぞれの個性とその曲自体のいいところをちゃんとリンクさせてひとつの形にすることができたと思ってます。あと、彼(鈴木)は1回、エフェクター類を全部売ってるんですよ。当初はアンプ直挿しで弾いてたんですけど、"もっと変な音出してみろよ"っていうふうに僕が言って。そこからエフェクターをいっぱい集めてもらったんです(笑)。

鈴木:僕はもともと変な音を出すようなバンドをやってたんですけど、それを(青木が)観ていてくれてたからそういうふうに言ってくれたんでしょうね。でもそうすると、今度は金銭面がきつくなるよねぇ......(苦笑)。

青木:はははは! でもそういうのもあって、アプローチの幅がすごく広がったんだろうなって感じてますね。