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INTERVIEW

Japanese

2018年10月号掲載

鈴

Interviewer:吉羽 さおり

現役大学生シンガー・ソングライター、鈴が1stアルバム『ベランダのその先へ』をリリースする。アコースティック・ギターでの弾き語りや、ソリッドなバンド・サウンドで歌うそのヴォーカルは、一聴で心をとらえるソウルフルなもので、とても強い力を発している。リズミカルに言葉を操りながら、解き放たれたように歌い、あるいはブルージーにくすぶる気分を転がすように歌ったり、20代頭とは思えない情念すらも覗かせる。自分で曲を作り、弾き語りで歌い始めてまだ3年ほどだというから驚く。(鈴は日本語で歌うが)Joni Mitchellなどの名前が浮かぶようなヴォーカルの雰囲気があって、これからも楽しみなシンガー・ソングライターだ。

-音楽活動を開始したのが3年ほど前ということですが、何がきっかけだったんですか?

出身が香川なんですけど、大学で浜松に来てから、好きなことをやろうと思って音楽を始めました。

-それまでは、ギターを弾いたりとか歌を歌ったりということはしていなかったんですか?

基本的にはずっと部活少女だったんです。高校生のころに、地元のシンガー・ソングライターや路上ライヴをしている方を観て、すごくいいなと思って。そこでアコギに目覚めたんです。最初は趣味程度で、軽くポローンと弾く感じで、そのときは歌うのが楽しくてやっていた感じでした。

-今のスタイルというか、自分の歌ができあがっていったのが浜松に来てからなんですね。

そうですね。"鈴"という名前を名乗って活動を始めてからですね。

-先ほどシンガー・ソングライターや路上で歌っている方を観て、ギターを始めたという話が出ましたが、自分の音楽のもとになっているアーティストというと誰だと思いますか?

もとになると言うと恐れ多いんですけど、宇多田ヒカルさんが大好きで。物心ついたころくらいから、母の車の中で宇多田さんの1stアルバム『First Love』がずっと流れていました。小さいころは、宇多田さんに憧れて歌手になりたいって言ってましたね。でも年齢を重ねるごとに、その曲や歌の良さがどんどんわかっていって。

-さりげなくソウルやR&Bの香りがするのは、宇多田さんの影響なんですかね。

そうかもしれないです。宇多田ヒカルさんの力強さとか繊細さっていうのは、すごく憧れていますね。

-ギターの弾き語りや、バンド・サウンドの感じから、ブルースを感じさせるようなアーティスト、Joan Jett(THE RUNAWAYS/JOAN JETT AND THE BLACKHEARTS/Gt/Vo)だったりJoni Mitchellなど、海外のアーティストも聴いてきたのかなと思っていたんですけど。そうではなさそうですね。

10代のころはずっとポップスというか、邦ロックを聴いていたので、そういうところからの影響があるのかなとは思います。

-自分で曲を作り始めて、最初のころにできた曲って覚えていますか?

弾き語り活動をし始めて最初期に作ったのは、アルバムにも入っている「とある女子」かな。その次に「酔ったふり」とか。「とある女子」は大学に入って──大学生って中高のころとは違って、一気に人とのプライベートが近くなった感覚で。それでいろいろと思うことがあって、わーっと書いた曲なんです(笑)。すぐにできました。

-きっと、いわゆる女子っぽい感じに混じれなかった人なんだろうなというのは、曲を聴いていて思いました(笑)。

そうですね(笑)。なかなか大変でした。ひとりが好きで。女の子特有の群れる感じとかが苦手でしたね。

-そういうモヤっとした思いや違和感が曲に落とし込まれることが多いでしょうか。

そうですね。モヤモヤとかちっちゃいこととかが、考えているうちにどんどんどんどん大きくなっていって。それを曲にしちゃうというか。

-「酔ったふり」などは、等身大のかわいらしさというか、いじらしさというのが出ていますが、「あの日針を飲んだ」とかはなかなか20代の女性の感覚ではないなという、すれっからし感が出ていますよね。

あぁ(笑)。普段はわりと自分の気持ちとか、自分に起こったこと、小さな思いを曲にすることが多いんですけど。「あの日針を飲んだ」に関しては、珍しく自分にはあまりなかったものを取り入れて、曲にできたなと思います。アルバムを作ろうとなったときに、もっといろんな曲がほしかったというか。例えば誰かのTwitterを見て想像したり、別の人になり切るというか、そういうことにチャレンジした曲だったんです。誰かの恋愛だったりとか意見とかを聞いて、"この子はこういうところがあるんだな"とか"この子はこう思っているんだな"っていうのを、頭の中に置いておいて、曲にしていった感じですね。

-ひとりで過ごすのが好きというのは、そういうことを想像している時間が好きなんですかね。

1個のことをじっくりと考えられるので、ひとりで過ごすことが多いんですよね。曲を作る時もそうですし。

-今回新たな試みもあったということですが、歌詞を書くときに何か心掛けていることはありますか?

シンプルさというか、誰でもわかるように書くことは、心掛けていますね。でも自分がもともと、そんなに難しい言葉で表現できるタイプではなかったので。誰にでもわかるように、自分の言葉で書くことを意識していますね。

-でもそのシンプルさからポロっと、情念みたいなものが出てきますね(笑)。

はははは(笑)。

-それはどこで作られているんだろうっていうのは気になりますね。結構、世の中とか人を斜めに見ていたりとか、自分のことすらも斜めに見ているところもあるのかなって感じます。

たぶん、自分のことはよくわかっているんですよ。でも人のことが、よくわからなくて(笑)。それもあって斜めに見ちゃってるのかなとも思うんです。ひとりの時間が多いぶん、自分と向き合う時間は多いんですけど、自分と向き合ったうえで、人のことをもっと知りたいなと思いますね。