Japanese
warbear
2017年12月号掲載
Interviewer:金子 厚武
-ちゃんと共通言語があったっていうことでしょうね。
Brianさんとは特に馬が合って、かなり機材好きな人で、テープ・エコーの話とかめっちゃしてきて、僕が"こういうふうにしてほしい"って参考で聴かせたりすると、"すごくわかりやすい"って言ってくれたり、全体的に反応が良くて。"僕のスタジオに録りに来ないか?"とも言ってくれたので、どこかのタイミングで行けたらなって思ってます。
-ちなみに、彼はTHE WAR ON DRUGSの作品に関わっていますが、warbearの"war"はそこから取ったというわけではないですよね(笑)?
違います(笑)。僕はあんまり名前を考えるのが得意じゃないので、最初は"尾崎雄貴"でもいいかなって思ってたんですけど、1歳になる息子がちょうどしゃべり始めたころに、"うぉーべあー!"って言って、"すげぇいいじゃん"と思って(笑)。なので、もちろんもともと意味はなかったんですけど、でも考えてみると、自分はずっと何をするにしても"戦う"ってモードにならないとダメな人間なんです。例えば、今日空港からここに来るのに電車に乗るじゃないですか? そのときも、自分の中では外部と戦ってるんです。音楽に対してもそうで、自分が引っ張られてしまう良くないものに対して、いちいち挑まないと生きていけない。それは自分が弱い人間だってことの裏返しだと思うんですけど、仲のいい人には"いつも戦ってるね"って言われるので、"warbear"って合ってるなって。
-1曲目の「車に乗って」はソロとしての戦いが始まる曲のように感じました。バンド終了時のインタビューで"Galileo Galileiは自分たちにとっておもちゃの車のようなものだった"という発言をされていたと思うんですけど、やっと本当の車に乗ったんだなって。
Galileo Galileiとの繋がりは断ち切れないものだと思ったんですけど、でも(Galileo Galileiとして)最後の曲が「車輪の軸」だったから、今回も"車"を書こうとしたわけではなくて。自分の中でずっと車のイメージはあったんですけど、曲自体は二日酔いのときに書いた曲で(笑)。僕はすぐ寂しい気持ちになるから、誰かと飲んでても、そのときは楽しいんだけど、いつのまにか自分はひとりだと思い込んでしまうときがあって、その一番どん底のときに書いた曲なんです。でも、Galileo GalileiのメンバーとかBrianさんも、この曲がすごくいいって言ってくれて。今回は自分のことを書いた曲が多いというか、生活のまんまって感じの曲が多いですね。
-"光と影"もアルバムのテーマになっていて、6曲目の「Lights」は最初のクライマックスだなと感じました。
今までは曲を全部自分で決めてたんですけど、ソロになった今回は逆に人にいいって言ってもらえたものを入れてることが多くて、「車に乗って」もそうだし、「Lights」もみんながすごく気に入ってくれたんです。『Sea and The Darkness』のときにサックスを入れて、ホントに素晴らしい気分になったので、今回も何がなんでもやってやろう! と思ってて、ちょうどROXY MUSICの『Avalon』をよく聴いてたので、インスピレーションの源になりました。実際にサックスを吹いてくれた人にも、"ロキシー(ROXY MUSIC)みたいにやってみて"って言ったり(笑)。
-Dan Wallaceという、フィラデルフィアで活躍してるサックス・プレイヤーですね。
Brianさんが紹介してくれて、すごくいいなって。僕が言ってないことも試して入れてくれたりして、曲をレベル・アップさせてくれたので、これが人と音楽をやることだなっていうか、長く自分のバンドをやってると、少しずつ味わえなくなることだなって。サックスの音はホントに好きで、シンガーの歌を聴いても、"この人トランペットっぽい"とか、"この人はサックス系だな"とか思うので、サックスを入れてもらうのって、歌を入れてもらうのと同じ感覚というか、曲がガラッと変わるので、今回の制作で一番ワクワクしたところだったかな。いろんなミュージシャンとやってる人が羨ましいなって思って、自分もソロでは今後いろんな人とやっていきたいなって思いました。
-ラストの2曲、「1991」と「27」には、尾崎さんの死生観が強く表れているように思いました。
今までアルバムを作ってきて、だいたい後半に自分が何かを掴むことが多くて、この2曲も後半にできた曲です。アルバムを作りながらも気持ちは次に向かっていくから、もう片足を次に突っ込んじゃってる曲が後半にできて、そこでひとつ満足できたというか、ひとりの人間として、肯定できたときの解放感がありました。
-自分のパーソナルを音楽に表現して、自分を肯定してもらう。Galileo Galilei後期にもその感覚があったと思いますが、それがより強くなったと。
そうですね。悩みながらも開き直るっていうか、今回このアルバムを作り終えたときにすごく思ったのが、"僕はこういう人間なんだから、こういう人間でしかいられないんだ"っていう......少しだけ自分を好きになれたっていうか、この2曲ができて、アルバムが形になったときに、苦しんできた自分を、少し好きになれたかもって思って。
-「1991」は尾崎さんの生まれた年で、心臓の鼓動のような音も鳴っていて、"生"を強く感じさせる曲になっていますよね。
僕らの世代って、穴がぽっかり空いたような感覚をみんなが持ってる気がして、自分の遊んでたおもちゃのこととか、やたら懐かしがるんですよね。すごく覚えてるのが、OKAMOTO'Sと対バンしたときに、一切共通点なかったんですけど、おもちゃの話だけすごく盛り上がったんです。おもちゃをたくさん与えられた世代で、それが俺らを繋げていて、そのぶん、埋まらない何かがあるから、昔を懐かしんでしまうのかなって。それって"昔は良かったね"ともちょっと違う感じで、赤ちゃん返りに近いっていうか、同世代の人と話すと、そんな感覚を持ってるなってときどき思って。それと自分の持ってる孤独感が良くも悪くも絡み合って、"なんだかなぁ"っていうひと言と共にずっと暮らしているというか。
-"そんな自分たちをいかに肯定していくか"という考えが背景にある?
自分の作る音楽を受け入れてもらうことで、自分の人間性や、やってきたことを肯定してほしい気持ちはあります。ただ、それは自分を甘やかそうとしてるわけじゃなくて、ずっと戦ってるんです。自分に自信がなくて、劣等感ってやつを持ち続けてるから、自分が音楽を作ることは、その劣等感っていうある種の病気に対しての薬なんですよね。処方された薬は、飲み続けないと(笑)。そういう感覚でやってるからこそ、このパーソナルな気持ちで書いた音楽たちが、たくさんの人に受け入れられてほしいとも思います。受け入れてもらえないと、効き目がないんで(笑)。
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