Japanese
さめざめ
2017年06月号掲載
Member:笛田 さおり
Interviewer:沖 さやこ
-今作は6曲中4曲の歌詞に"思い出す"という言葉が入っているんですよね。いままで笛田さんは、いまそのときの気持ちを曲になさっているのかなと思っていたので、過去の回想シーンを入れた歌詞の描写は大人ならではというか。
前は"その瞬間"を書きたかったんですけど、ふとしたとき"思い出した出来事を曲にしてこなかったな"と思ったんですよね。それで東京の思い出を曲にした......というところもあります。もともと田舎者なので(笑)(※笛田は神奈川県鎌倉市出身)、東京という街に憧れや夢を抱いているんだと思います。神奈川という土地は好きだけれど、思い出は絶対的に東京の方がたくさんあるんですよ。だから東京に住む前に東京で遊んでいた出来事、東京に住んだからこそ起こった出来事が曲になっていったのかなって。
-「東京午前3時」(Track.2)は"午前3時"という夜なのか朝なのかわからない、行き場がなくなる時間の心情を、音でおしゃれに描いた曲だと思いました。
いままでのさめざめで一番おしゃれな曲かも(笑)。さめざめを知らない人も口ずさみやすいし、知っている人にも"こんなさめざめどうだ!"と見せられるような挑戦の曲になったと思います。シティ・ポップ感のある曲を作りたいな......と思ったときに、サビであまり盛り上がらない、メロディが下がる感じの「東京午前3時」ならいけるんじゃないかなと思ったんですよね。それをサポート・メンバーのギターのナカオソウ君にお願いしたらイメージどおりになりました。夜中のドライブや夜中の部屋で流してほしい曲ですね。
-サビで盛り上がらない曲を作りたい、という願望があったということですか?
さめざめはサビで盛り上がって当たり前だったんですけど、それだとワンパターンかなって。キャッチーでわっと盛り上がる曲が多かったぶん、"こんなものも作れます"というのは見せたかったんですよね。去年出した『きみが死ぬとき思い出す女の子になりたい』というEPでも、いままでにない雰囲気のものを作りたくて変拍子を取り入れたりして、それまでチャレンジできなかったことにもチャレンジして。"こんなさめざめどうですか?"というのは常に見せていきたいですね。
-"幸せの物差し この街だけ平均値がない"という一説には唸りました。東京は、結婚して子供を産んでマイホームを持って......という一般的に語られる幸せ以外の幸せを手に入れている人が、日本で一番多い場所だと思うんです。
地元に戻ると結婚している友人知人が多くて、東京には結婚していない人が多いんですよ。女同士で"幸せってなんだろう?"と話すことがすごく多くて、結婚しなくても幸せを得られる時代だと言いつつも、結婚をしていない人はコンプレックスがある。結婚ってなんだろう? 幸せってなんだろう? と考えたときに、東京が一番"別にいいんじゃないの? 好きなことをやっていればいいじゃん"というのが許される街だなと思っていて。だから東京にいると幸せの感覚が麻痺するんですよね。
-たしかにそうですね。
物差しがなさすぎるし比べる対象もないし、自分は自分で幸せだけど、このままでいいのかな......とかすごく考えるし(笑)。「東京午前3時」は東京に住んでいる人なら性別関係なく共感できるんじゃないかなと思います。友達と楽しく飲んで、ひとりで家に帰ってきて、午前3時にお酒を飲みながらこの曲を聴いて"幸せってなんだろう?"と考えて落ち込んでいただければ(笑)。
-ははは。さめざめは"落ち込ませる"というのも重要なことであると。
音楽はノらせるか感傷に浸らせるかどちらかだと思うんです。さめざめにも前者の曲はあるけれど、主に後者だと思うので、さめざめの音楽はみんなの感情を曝け出したいときの道具になればいいなと思うんですよね。
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