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INTERVIEW

Japanese

さめざめ

2015年11月号掲載

さめざめ

Member:笛田さおり

Interviewer:沖 さやこ

赤裸々なタイトルや、恋愛描写が鮮烈な歌詞でもおなじみのさめざめが、"インディーズ回帰作"として6曲入りアルバム『HのつぎはI』をリリースする。今作は"性の先に愛がある"というさめざめが元来持つ恋愛観を軸に、今までやっていなかったことにチャレンジしたりと、原点回帰でありつつも自身の願望に忠実な作品になった。アー写までもセルフ・プロデュース。様々な経験を経てさらに地盤を固め、広がりを見せる現在形の彼女を探った。

-今回はインディーズ時代にジャケットを描いていた福井伸実さんと再びタッグを組むだけではなく、インディーズ時代のバンド・メンバーの布陣でアレンジとレコーディングを行うなど、掲げている"インディーズ回帰作"が貫かれていると思いました。なぜここまで徹底的に?

もともとインディーズで活動していたときはメジャーに行くつもりがなかったんですよね。そこからいい縁があってメジャーに行かせてもらったんですけど、その中で自分が表現を出し切れてないなと。いろいろ中途半端な状態でメジャーをやめてしまったので、インディーズに帰ってきた意味があるものをちゃんとやりたくて。今はインディーズとメジャーが関係なく見えたりするところもあると思うんですけど、"あ、やっぱりさめざめはインディーズだと面白いね"と言ってもらえるようなものをインディーズ回帰の一発目で生み出したいなと思ったんですよね。だからジャケットも以前の色が強いものにしたり、楽曲もシュールなものを取り入れつつ攻撃的なものにしたいなと思いました。

-"面白いもの"を求めた結果、"攻撃的"な方向性に?

特にリード曲(Track.1「恋せよ、破天荒」)に関しては、YouTubeではピー音を入れて修正している曲なんですけど......。この曲を作ったときにこの言葉を言いたくて言いたくてたまらなくて(笑)。インディーズに戻る戻らない関係なく作って、"これをこのまま出してもいいのかな......"と思って、1度言葉を変えてアコースティック・ライヴで演奏してみたんですけど"あ、やっぱりあの言葉でないとだめだ!"と思って。そこのワード以外の歌詞は結構普通のことを歌っている曲だから"えっ?"と驚かれることもあるんですけど、曲作りの中で自然に出てきた言葉だったので、それを修正するのは嫌だなと思って。さめざめらしさを考えて、ブレーキをかけずに(笑)。「恋せよ、破天荒」に関してはいろんなリスタートの意味を込められるリード曲にしたい、落ち込んでどうしようもないときに聴いてスカッとするような曲がいいなと思って、あえてこの曲をリード曲に持ってきました(笑)。

-全曲がスコーンと抜けているアルバムだとは思いましたが、気持ちに忠実に作っていったんですね。だからこその回帰だったという。

インディーズからメジャーに行って試行錯誤をして――これから何か新しいチャレンジをするにしても、1度ちゃんと戻った方がいいなと思ったんですよね。自分が何をしたいのか、というのがわかる楽曲を集めたものにしたいなと思ったら、こんな濃厚な......。聴いてて疲れると思う(笑)。

-ははは。「恋せよ、破天荒」は"誰でもいいからあたしに本気になってよ"と言いつつも、結局"あんた"に固執している、一途な女の子が主人公。

今年の初めくらいにできた曲なんですけど、まさに私が人生の崖っぷちに立たされるようなことがあって......。これは歌を作らないと発散できない!と思って、思ったことをわぁーっと出したら、女の嫌な部分や執着を吐き出してしまう曲になってしまいました。

-(笑)メジャー時代はそこにメッセージ性をつけて人を導いたりしていましたが、今回はとにかく叫びまくる感じで、潔さも感じました。

メジャー時代は自分も無意識のうちに"こうしちゃいけないのかな"と、人の顔色をうかがうような曲を作っていたのかなー......と思ったりもして。でも何も止めるものがないと、もともとそういう曲を作っていたし、性のことにプラスして女性のことや、生きていくことに対して力になるような曲が欲しいなと思って。

-そうですね。情念を歌いつつも、曲もメロディも底抜けに明るいからさっぱりしてて。言葉ではメッセージを出さなくても、音に背中を押す効果がありますし。

これからインディーズでやっていくなら、先が見えるようなものを見せたいなと思って。MVもそんなふうにしました。リスタートの意味も込めて背景も衣装も白を基調にして、まっさらな状態を出して。メディアで見られるものはピーの裏側がわからないので、CDを買っていただいてからのお楽しみということで(笑)。いくらでも暗い曲は書けますけど、そこからポップであり、ロックであり......聴いてて元気になれる曲を作りたいなと思ったんですよね。カラオケに入ったあかつきには、ぜひとも歌って発散していただきたいなと(笑)。

-Track.2「メロエロエロメロメロメロエ」はファンクとジャズのテイストが入ったおしゃれなトラック。

これはライヴで盛り上がる曲を作りたいという発想から始まって。......さめざめがインディーズに回帰して大幅に変わったのは、曲の分数を減らしたところなんですよ。いつもの展開の長さにちょっと飽きてしまって――聴かせる曲は聴かせるけど、ライヴで2分くらいで終わらせる曲を作りたい!と思って、短くてどんなライヴでも盛り上げられるものを考えてたらこの曲ができて。だからこのアルバムの中では1番言葉遊びをしてて。"メロメロ"とか"エロエロ"という言葉の響きで音楽を楽しめるような。

-もともと語呂合わせはなさっていたけれど、言葉遊びのニュアンスだけが強い曲は、今までのさめざめにはあまりないもののような。

そうですね。さめざめらしさの中でライヴのキラー・チューンを作ろうとしたときに、"あ、(その要素は今までに)ないな"と思って。そういう意味では新しい挑戦かもしれませんね。歌詞も誰にでもあてはまりそうなものを歌って。さめざめが持っているストーリー性みたいなものはあまりないんですけど、恋に落ちるときのドキドキ感をうまく言葉遊びで盛り込めたらなって。

-Track.3「0.01ミリの宇宙」は、街の中でちょこちょこ見かけるコンドーム自販機についての歌。

小さいころから私、あの自販機が気になっていて......。歌詞の通り、たまたま学芸大学の商店街を歩いていたときに、この自販機があったんですよ。歌詞に駅名や地名を入れるのが好きなので、実際あるものを題材にして書きたくて。なかなかコンドームを自動販売機で買わないじゃないですか。その自販機を見るとたちまち妄想が膨らむんですよね。彼の家に行く途中にここで買って行ったら楽しいだろうなーって。あとは、0.01mmの商品を作った会社も本当に素晴らしいなと思うので、それをいろんな人に伝えたいという勝手な宣伝も兼ねてます(笑)。

-ははは。現代技術の賜物ですよね。でも"いつかはこいつにお世話にならずに"という意味深な歌詞も。

最後は0.01mmの世界もなくしてひとつになりたいけれど、まずは0.01mmをつける関係になりたい、というか。女子回線だと"この人だったらいい"と思う人でないと......と思うので。面白い歌詞の中にも、こういうキュンとするポイントや切ない描写は入れていきたいなと思いますね。

-それがさめざめが"さめざめ"という名前である所以でもありますしね。そしてTrack.4「メガネ男子」は吐息から始まる、かなりアダルトな曲です。

最初の吐息を録るときも、ひとりで何度もアンアン言ってました(笑)。それをみんなで聴いて"これはアダルトすぎるね""これは若すぎるね"とジャッジして。もともと吐息で始まる曲を作りたいと思っていたので、それをやるとしたら「メガネ男子」だなと思って――この曲は5年くらい前の曲なんです。メジャー時代にも何回かライヴでやってたんですけど、タイミングが合わずに音源にできなくて。でも攻撃的な曲やポップな曲の中に挿し曲として「メガネ男子」を入れたらいいんじゃないかなと。

-こんなに色気のある曲なのに、主人公は処女喪失の女の子という。

その行為自体に魅力を感じていく女子というか。行為の快楽に溺れていく様が描けたらなと思いまして。私はアイディア重視なので、"メガネ男子"とか"0.01mm"とか、テーマがあるとバッ!とストーリーが浮かぶので作りやすいんです。「メガネ男子」には、行為に及ぶときだけメガネをかける男性をモデルとしていたので、そのときの自分の気持ちに忠実に書きました(笑)。