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INTERVIEW

Japanese

さめざめ

2017年06月号掲載

さめざめ

Member:笛田 さおり

Interviewer:沖 さやこ

-「23区のすみっこで」(Track.3)はあどけなさのあるヴォーカルが印象に残りました。

いままでは結構声を張ることが多かったんですけど、今回は歌い方もちょっと変えたいなと思って、ウィスパーな感じで、生活感とさりげなさがある、素朴なものが作りたくて。

-なるほど。それぞれの曲でチャレンジを欠かしてないんですね。

歌詞の書き方も去年くらいから結構変えてるんですよね。"リアリティ"というものはそれまで気持ちの面で大事にしてきたんですけど、情景描写の面でもどんどんそれを描きたいと強く思うようになって......気持ちだけで歌っていることに飽きてしまったこともあって、変えていかないと気が済まなくなってきてしまって(笑)。よりリアルなものを作りたいと思ったときに、リアルな情景描写は絶対に必要だなと思ったんですよね。

-根っこが濃いぶん、新しいことを積極的にどんどん取り入れてもブレないのかもしれませんが、とはいえこれだけいろいろ挑戦できることに感心します。

自分の楽曲クオリティに満足しているわけではないので、もっと面白いものを、もっと自分がいいと思えるものを......と考えると、"もっと歌詞でふざけたいな。ふざけてるけどちゃんと筋が通ったものを書こう"とかアイディアが浮かんでくるんです。「ラブホのシュシュ」(Track.4)はまさしくそれで、言葉遊びをたくさんしてみました。毎回新鮮なものを作りたいですし、さめざめという根っこのコンセプトはありつつも新しいことをやっていきたいですね。

-「悲劇のヒロイン症候群」(Track.5)は"お前が助けろよ/あたしばっか不幸になるなんて許せない"という部分に思わず笑ってしまいました。

暗めでパンチが効いた曲が欲しいけどなかなかできなくて。そんなときに阿佐ヶ谷ロフトAでイベントをしたとき、"○○こそ悲劇"と書かれたイラストを出してくれた女の子と、悲劇Tシャツを着た女の子を見かけたんですよね。1日に"悲劇"を2回も見て、なかなか"悲劇"という言葉は使わないから歌詞に使おうかなと。それで"悲劇のヒロイン"はまさにさめざめの楽曲の子たちだなと思ったんですよね。"なんて私はかわいそうなんだろう......。なんで不幸なんだろう......。でもそれが幸せなの"という女の子を主人公にした"悲劇のヒロイン症候群"という曲を作ろう、と思って作り始めたんです。

-ちょっと卑屈さもあり(笑)。

そうですね。性格出ちゃってますね(笑)。

-「悪」(Track.6)はその塊なのかな......? と思いましたが。

これまでも暗い曲は作ってきたんですけど、最近死にたくなるような曲を作ってないなと思ったので、死にたいと思っている人に"どうぞこちらいかがでしょうか......"と差し出せるような曲を作りたいと思いまして。やっぱり私もこれだけ卑屈でありながら、表面上はいい人ぶっちゃうんです。自分の中の悪を殺したいという気持ちもあれば、受け入れてほしいという気持ちもあるし。だから、歌詞でもタイトルでもメロディでもバンドでもわかりやすく"悪"を出せたらなと思って。

-イントロの笑い声も不気味に響きます。

ラフで録ったものを聴いていたときに、サポート・メンバーのドラムの人の笑い声が入っていて"あ、笑い声ってすごく怖いな"と思ったんですよね。だから曲にも入れることにして、憎しみを感じていることを思い浮かべながら笑ったらあんな笑い声に......(笑)。

-ははは。この曲は唯一、具体的な地名が入っていません。

"地下鉄"というワードは入れてるんですけど、具体的な地名が入ると曲の本質とブレるなと思ったんですよね。だから全国各地の地下鉄を思い浮かべていただけたら。

-胸に潜む"悪"は身近であるということですね......。さめざめは女の子が口に出せない気持ちというコンセプトを一貫させつつ、毎度様々なアイディアを盛り込んでくるなと改めて思いました。今作はノンフィクションとフィクションの狭間のような感覚がありましたし。

ありがとうございます。恋愛をしている限り、曲は生まれ続けるだろうな......と思います(笑)。タイトルを"東京ポルノ"か"東京ドキュメンタリー"にするか悩んだくらい、今回はリアルなものを追求したので、ドキュメントを感じてもらえたらなと思いますね。