Japanese
春ねむり
2017年06月号掲載
Interviewer:山口 智男
昨年6月、ポエトリー・ラッパーとして活動をスタートするやいなや、注目を集め始めた春ねむり。それからちょうど1年、彼女が2ndミニ・アルバム『アトム・ハート・マザー』を完成させた。"BAYCAMP2016"出演、1stミニ・アルバム『さよなら、ユースフォビア』リリース、初ワンマン・ライヴの成功など、着実に歩を進めながら、よりはっきりしたものに変わってきた確信のもと、作り上げた新作はさらなる飛躍を予感させるものになっている。J-POPシーンで勝負できるものを意識したと彼女も自信満々だ。前作リリース以降、彼女の中で何が明らかになったのかを訊いた。
-春ねむりとして活動し始めてから1年足らずで大きな注目を集めてしまいました。
ウフフフ。ありがとうございます。曲はいいと思っているので、周りの人のおかげと思うのと、"やったぁ"みたいな(笑)。
-"ラッパーになります"とツイートしたとき、多くの人に聴いてもらえるという状況は望んでいたんですか?
はい、絶対そうなりたいと思ってました。
-それ以前は、バンドを17歳のころからやっていたそうですが、春ねむりさんがラッパーとして活動し始めたのは、どんなきっかけがあったんでしょうか?
5年ぐらいやっていたんですけど、そのバンドはギター・ヴォーカルとシンセの私の2人組で、ベースとドラムはエレクトロっぽい打ち込みだったんです。ヴォーカル・ギターの女の子は中学校から一緒で、すごく仲が良くて、私は彼女のことがすごく好きだったんですけど、うまくいかなくなってしまって。バンドがというよりは、彼女と私の関係が。向こうはたぶん、私に興味がなかったんだと思います(笑)。でも、その子が好きすぎて......って気持ち悪いですけど(笑)、新しいヴォーカルを探す気になれなかったんです。それで自分で歌ってみたら下手すぎて、これは世に出せないと思ったんですけど、ラップだったらできるんじゃないかって曲を作ってみたら、これはイケるって。それで、こっちで頑張ろうと思いました。
-音楽活動は続けたかった、と。
あ、そうですね。たしかに、やめるって発想はなかったです。多産じゃないんですけど、曲を作るのが好きなんです。
-歌が上手かったら、ラッパーになってなかった?
なってなかったですね(笑)。
-そもそもラップに興味はあったんですか?
バンドをやっていたときもトラックを作って、歌メロを乗せてもらうというやり方で、トラックメーカーみたいなことはずっとやっていたので、トラックものの音楽も結構聴いていたんです。ヒップホップはそんなに詳しくないんですけど、キミドリはすごく好きでした。あとは、相対性理論が好きだった高校時代に、そこから相対性理論の曲でラップしていた不可思議/wonderboyさんに行き着いて聴いてました。
-最初から"イケる"と思える曲ができたんですか?
できました。1曲目にできた曲が1stミニ・アルバム『さよなら、ユースフォビア』に入っている「東京」なんですけど、意味がある曲だと思えたし、暗い曲なんですけど、なんかキャッチーになっちゃったんですよ。キャッチーというかフックがある感じになって、もしかしたら私、得意なのかもしれないって。
-新作について聞かせてもらう前に、春ねむりさんがどんなふうに音楽に出会って、その後、どんな音楽を聴いてきたか教えてもらってもいいですか?
初めに好きになったのは、フジファブリックの志村正彦さんで。私、好きすぎて初恋みたいな感じになっていて、超ライヴに行きたいと思っていたんですけど、家が厳しくて、"そんなに好きなら高校生になったらいいよ"と言われているうちに志村さんが亡くなってしまって。すごくつらくて、喪失感に襲われた日々を数年過ごしてました。周りのみんなが聴いていた椎名林檎さんとか、チャットモンチーとかは普通に聴いていたんですけど、それでも志村さんのことばかり考えてましたね。その後、高2の初夏に修学旅行があって、夜、部屋で先生に内緒でテレビを見ていたら、売れるギリギリ前のクリープハイプが出ていて、"かっこいい。バンドやりたい"と思って、そのとき一緒に見ていた子とバンドを始めました。それからクリープハイプの周りの、いわゆるロキノン系のバンドを聴き始めて、そのころから曲は作っていたんですけど、大学生に入ったとき、なぜかロキノン系のコピー・バンドをやるサークルではなく、RAGE AGAINST THE MACHINEで爆アガリするみたいなコピー・バンドのサークルに入っちゃって(笑)。そこで曲が作れない先輩に"君が作る曲はすごくいいんだけど、歴史の浅さが出ている"と言われて、そのころは純粋だったせいか、"私に足りないのは、それなんだ"って納得しちゃってから、ぶわーっと音楽を聴き始めたんです。大学1年のときは未知の領域だった洋楽のバンドを、歴史を追いながら聴いて、1年生の終わりぐらいに日本のアングラのバンドも聴き始めました。その中で好きになったのが、YEAH YEAH YEAHS、Björk。私たぶん、ヤバい女の人が好きみたいです(笑)。だから、高校生のころから聴いているんですけど、大森靖子さんがめちゃ好きなんですよ(笑)! 男の人のバンドを好きになることはあまりないんですけど、好きになるとしたらヴォーカルが本当にいいか、トラックがすごいか。バンドでも演奏がすごいと好きになりがちです。
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