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INTERVIEW

Japanese

春ねむり

2017年06月号掲載

春ねむり

インタビュアー:山口 智男

-フジファブリックもクリープハイプもいわゆるギター・ロック・バンドですよね。でも、春ねむりさんが手にした楽器がシンセだったのは、なぜだったんですか?

もともとクラシック・ピアノを習っていたので、弾けるのがキーボードだったんです。それと、バンドをやりたいと思ったとき、一緒にバンドを始めた子と"友達いないからメンバーを集めるの無理じゃない?"ってなって(笑)。でも、"打ち込みってシステムがあるじゃん"ってなりました。そのとき、シンセ寄りのキーボードを買ってもらって、それについていたSONARの簡易版みたいなDAWがあって、"あれってたぶん打ち込みに使うやつなんだよね。ちょっとやってみる"って曲を作ったら、"シンセ楽しい"ってなったんです。

-あぁ、そこで。

だからギターをやろうってならなかった。ギターが入っている曲は多いんですけどね(笑)。

-大学時代に歴史を追って、洋楽を聴いたそうですが、ということは、今回の"アトム・ハート・マザー"というタイトルが、PINK FLOYDの名盤である『原子心母』(1970年リリース)の原題と同じだということも当然ご存じで?

PINK FLOYD好きなんです(笑)。プログレって全然好きじゃないんですけど、PINK FLOYDだけは愛せるんです。だって、絶対そこドラムうるさくしちゃダメじゃんってところで、あり得ない技巧を披露している。それがすごく愛おしいんですよ(笑)。そのちぐはぐな感じが生命って感じがして、すごくいいなって。私自身もきれいに生きていることを愛されるタイプではなくて、どちらかと言うと、曲も歌詞もしっちゃかめっちゃかだけど、頑張ってる、生きてるみたいなのを見てもらって、みんなが頑張ろうかなって思ってくれるタイプだと思っているんで。だからおこがましいんですけど、そういうところに親近感が湧いたというか、愛せるな、推せるなって気持ちになってしまって、今回、"空洞"がテーマになっているから、"アトム・ハート・マザー"がぴったりだ、拝借しようと思いました。

-PINK FLOYDの"原子心母"ってタイトルは、原子力電池のペースメーカーを入れた妊婦の話が元ネタじゃないですか。だから、「いのちになって」(Track.2)という曲もあるように、春ねむりさんの音楽が、聴いた人の"いのち"になる、原子力の電池になるという意味で、このタイトルなのかなと思ったんですよ。でも、そうじゃないんですね?

あぁ~。でも、いい話なので、そういうことにしてもらってもいいですか(笑)。自分的には、曲を作る行為って子供を産むみたいだと思っているんですけど、前作を出したあと、"私だけの言葉って何だろう?"って考えたんです。前作の曲はすごくいいんですけど、借りているなって感じもあって。あれ、もしかしたら私、罪深いことをしたんじゃないかって。その状態が、心臓はペースメーカーで動いているのに子供を孕んでしまうことと重なったんです。今回の作品は、そんな自分がどうしたらいいかってところから作り始めたので、それをそのままタイトルにつけたんです。

-自分の言葉が借り物なんじゃないかという気持ちは、1曲目の「空気人形」や5曲目の「SAYONARA BABY PINK」に表れていますが、その2曲を聴いたとき、春ねむりさんが今回改めて、自分のオリジナルの表現を追求した作品なんじゃないかと想像しました。自分らしい表現を見つけるために、どんなことをやったんですか?

私、日記を書いているんですけど、その日記から歌詞を書くことが多いんです。その日記を見直したときに、バカっぽい言い方なんですけど、本当に考えて書いたときは、オリジナルの言葉になっているんですよ。でも、気合が入っていないときって、どこかで聞いたようなくだらない言葉が結構多くて、それだと思いました。そういうことを、毎日ひとつひとつマジでやらなきゃいけないんだとヒシヒシと感じたんです。自分が"うわっ"と思ったことと向き合って、めっちゃ見つめて考えないと、自分の言葉で、なぜ"うわっ"と思ったのか説明できないんだなって思いました。でも、そういう日記の書き方ってめっちゃ体力を使うんですよ。だから、やる気がないときは、どこかで聞いたような言葉に逃げてしまう。でも、それはミュージシャンとして怠慢だから、良くないと思って、毎回、それを100でやろうと思いました。具体的にやったのはそれぐらいなんですけど。

-そのなかで、まず自分で納得ができる歌詞が書けた曲は?

やっぱりリード曲の「いのちになって」です。これはよくできていると、書きながら思いました。