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INTERVIEW

Japanese

春ねむり

2017年06月号掲載

春ねむり

インタビュアー:山口 智男

-"いのちになって"という言葉も今回の作品のテーマになっているんじゃないでしょうか?

テーマというか、結論なんです。空っぽにもかかわらず、なぜか生き延びてしまった結果、自分は本当に価値を背負っている気がするということを歌っているんですけど、それは君もそうだし、あなたもそうだしってことを言いたいんです。それを言うために私はどうしたらいいんだろうと考えたとき、神様になってあげることは、私はできないと思いました。それは本当になるという覚悟がなかったら言っちゃいけないことだと考えたとき、私はなれない......神様にはなれないけど、身体と精神はひとつずつある。ひとつずつしかないけど、それはあるということを証明したいと思ったんです。自分もそうだし、(私のライヴを)観ている君たちもそうなんだよってことを証明することが、私にできることなんじゃないかな。"自分は生きているのかな?"みたいになっちゃうことって結構あると思うんですけど、そんなふうに思ってしまう人のために神様になることはできないけど、私もそうなっちゃうことはある。でも、そういうのはやめる。私は私の生命を生かして生きるし、そこに君たちひとりひとりがいることをちゃんと歌って、証明するからっていう想いをがっとまとめたら、「いのちになって」になったんですよ。

-今、おっしゃった"私は私の生命を生かしたい"と今回、改めて思えたきっかけって何かあったんですか?

直接言われたわけではないんですけど、たぶん私のライヴを観に来てくれる人が、そうさせてくれたんだと思います。すごく頼られている、すがられていると感じるんですよ。それは全然構わないんですけど、ただ神様的な感じで救ってあげることはできない。それを正直に言わないと、私の音楽、全部ウソになっちゃうと思って、神様になることはできないけど、同じように生きていることだけは証明するから、なんとか死なないで済むように、それだけはするからって思いました。

-それを証明するために、美しいものも汚いものも受け止めていこうという決意が「空気人形」では歌われているんですね。その他にも気になるフレーズがいろいろあって、「いのちになって」に"世界が愛してくれたぼくのからだ"というフレーズがありましたけど、そう思えたことも今回、作品を作るうえで大きな力になっているんでしょうか?

それは確証なくずっと思っていて、事あるごとに"あ、愛されていたんだ"と感じることは結構あるんですけど、それを言う資格がないと思っていたんです。でも、今回は言ってもいい、許されている気がすると思えました。ライヴをやって、"あ、届かなかった"ということがなくなってきたんで、言ってもいい気がして、言えるようになりました。

-すごくいいと思ったのが、「SAYONARA BABY PINK」の"「いのちは重たくなんかない。」"。"重い重い"って他人から言われても、生きるのはこっちなんだから、そんなに言われても余計につらいだけなんじゃないかって思うから、すごく共感できました。

本当にそうですよね。重いとか軽いとかじゃなくて、ただ"ある"ということを、もうちょとフラットにみんな受け止められるようになってもいいんじゃないかって思います。"ある"ということをまず認めるところからっていうのはすごくあります。

-そんなことを歌いながら、トラックメイキングでは今回どんなことを意識したんですか?

前作よりも細かく作り込みました、あとはJ-POPの、どメジャーなところで戦えるサウンドは意識しました。歌にメロディがないぶん、なくても戦えることを証明したいと思って、トラックはホント、J-POPを聴く人なら普通に聴けるものになっていると思います。それはめっちゃ意識して、幅広くカバーしました。「いのちになって」は、私が好きだったロキノン系のJ-ROCKのサウンドにしようと決めていて、「空気人形」や「アンサー・ワルツ・ロマンス」(Track.7)みたいなトラックは作るの得意だからぱっとできたんですけど、もっと面白いものがあってもいいなと思って、最後に作ったのが「TOKYO CALLING」(Track.6)。"え、2ビートやるの!?"みたいなのがあってもいいなと思ったんですけど、そういうサウンドはやったことがなかったので、"ズタズタズタってやつがやりたいんですよ"って(笑)、様々なバンドの曲を作っている青木"Kevin"進也さんと、ROAというバンドのドラマーで曲も作っているAKABAさんにアレンジを手伝っていただきました。ほぼ完成した曲を渡して、自然になるようにしてくださいってお願いしたんです。「いのちになって」のドラムのフレージングも、生身の人間には叩けないものがいくつかあったので、調整してもらいながら一緒に打ち込みました。他の人と一緒にやったのは初めてだったので面白かったです。そんな技があるんだって学べたので、次から生かそうと思いました。

-J-POPのシーンで勝負できるものを意識したのは、より多くの人に受け入れられるものだという気持ちがあるからですよね?

それは当然あります。大森靖子さん以降っていうものについて、そろそろ考えないといけないと思っているんです。それなのに靖子ちゃんをパクっただけみたいな人がめっちゃバッと出てきて、何を考えているんだろうって。せっかく靖子ちゃんがいい曲を作って、こんなシーンを作ってくれたのに、パクリみたいな曲を作って、このシーンの文脈を腐らせるようなことをしているってすごく思うから、そうじゃないやり方で、そのシーンを新しくしたいし、新しくしなきゃいけないと思っているんです。たぶん、音楽の第一線に出てきている人は、ずっとそういう気持ちでやっているし、そういう人が出てくることを望んでいるはずだから、他の誰もそれをやってくれないなら、私がやらないとなって、ものすごく勝手になんですけど、思ったんです。