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INTERVIEW

Japanese

セックスマシーン

2017年02月号掲載

セックスマシーン

Member:森田 剛史(Vo/Key)

Interviewer:山口 智男

-今回、バンド・サウンドという意味でも前のアルバムと比べてストレートになっていると感じたのですが、サウンド・アプローチはどんなことを考えたのでしょうか?

前のアルバム(2015年リリースの4thアルバム『響けよ我が声、と俺は言った』)までは、個々に持ち帰って"みんなをびっくりさせたれ"ってやって、それをガッシャンって合わせてできあがったみたいなところがあったんですけど、前回のシングルを作っているあたりから、メロディが前に来るアレンジにしようという意識が強くなってきて、そういう意味ではよりシンプルにというか、当たり前に、この曲だからこの音でっていうのがあるかもしれないです。鍵盤に関しては、ようやく自分が買った鍵盤の音色をひととおり把握できるようになったというか。もともと、キーボーディストではないんで、名前と音色が合致していない部分があったんですけど、最近はようやく一致してきて、これまで"あれっぽい音みたいなやつ"と言っていたのが、今回だったら"メロトロンを使おう"みたいになって。以前は自分で使いたい音がわかっていても手探りだったせいもあって、結果、意外な音になっていたところもあったんですけど、今回はイメージと近づけることができるようになってきたところが多いのかな。「いったいどっち」(Track.4)はアッパーなビートにもかかわらず、メインのリフになるキーボードはローファイで、且つノスタルジックな音だったら面白いという着想があって、ああいう感じにしているんです。そんなふうにクオリティを上げようみたいなところがありましたね。メロディがあるから行く先はわかる。そこに至るまでのクオリティを上げていこうという発想で音を選んでいっている感じはあります。以前のアルバムは音的に粗い部分が多かったせいか、仕掛けがもろばれになっていたのかな。前回のシングルから信頼できるエンジニアについてもらっているんですけど、その方がうまくブレンドしてくれるんで、以前までは"ここにこれを配置しますドーン"って前に出すぎていたのが、今回はうまいこと、まず歌があって、楽曲があって、それから回数を重ねるごとに、それぞれにやっていることがわかるという本来の形にしてくれているってところも大きいと思います。

-だからなのか、いい歌とまっすぐなバンド・サウンドで勝負しているように聴こえるのですが、ただシンプルになったわけではなくて、その一方ではいろいろ聴きどころがある作品でもありますよね。個人的に好きなのが「唱歌「凪」」(Track.5)。曲もいいんですけど、歌詞に"ヒッタイト"って出てくるじゃないですか。あそこにすごくハマッてしまって(笑)。

ありがとうございます(笑)。

-最初は、"まったいら"と"怪態な"と韻を踏みたいから、"ヒッタイト"を使っているのかなと思ったんですけど、実はちゃんと歌詞の筋も通っていて(笑)。

僕らはオーディエンスのことをゲスト・ヴォーカルと呼んで、"共に歌おうぜ"ってスタンスでやっているわけですけど、去年、SAのライヴを観たら、大先輩がマイクを客席に投げて、"歌おうぜ"ってやってたんですよ。それを見たとき、同じようなことをやっても、やる人が変わると見え方がこんなにも違うのかと思って、それなら僕らはもっと極端にやらなきゃ。それにはどうしたらいいかって考えたとき、中学校の合唱のような曲にしたらいいんじゃないかと閃きました。それで、そういう曲を作るなら、もっとそういう曲を知らないといけないと思って、母校のグリー・クラブの定期演奏会を何度か観せてもらってから作り始めたんですけど、合唱団が歌っても楽しめるようなものにしないとウソになると考えていった結果、情景描写は日本語の歌詞として正しく美しくないといけない。でも、本物の合唱曲よりも自分が勝っているところも入れないといけない。それはユーモアだ。じゃあ、真面目に始まって、ふざけて終わろうとなりました。それで、1番のふた回し目で、ちょっと"あれ?"と思わせて、2番でいよいよ来たな。で、最後、なんのこっちゃにしたい。それでいて、全体の歌詞は繋がっているよねってものにするところで苦労しました。壮大な実験です(笑)。あの曲が流れ始めたときの、なんでやねんって感じと、なんでやねんと思ったあと、でも真面目にやってんねやってなって、最後はやっぱりバカバカしいで終わるっていうのがやりたかったんです。

-「悲しくて眠りたい」(Track.8)は、ヴォーカルがダブルになっているサビがちょっとGSっぽいと思いました。

あぁー。曲のタイトルはザ・フォーク・クルセダーズの「悲しくてやりきれない」を意識しました。あの曲、大好きなんですよ。加藤和彦さんの曲は、どれを聴いても興味深いし、サトウハチローさんが書いた歌詞も、僕の中の理想のひとつなんですよ。余計なことを一切言わずに、ただ"悲しくてやりきれない"っていう。

-THE BEATLESになろうとしながら、その多くが日本独特のものになってしまったというところでGSっぽいと思ったんですけど、ザ・フォーク・クルセダーズだったんですね。

そういえば、加藤さんの「あの素晴しい愛をもう一度」も、ああいうダブリング感がありますね。そうか、ヴォーカルを重ねるとき、誰々の音っぽくしようというのはなかったんですけど、(加藤和彦さんの影響は)あるかもわからないですね。

-だから、実は今回のアルバム、全然地味じゃないんですよね。「地球よ」(Track.7)もバンドの演奏がすごく印象に残りますし。

ベースのフレーズをまず作って、そこにサビ。そのサビが二転三転して、結局、一番シンプルな形になったんですけど、この曲自体は、これまでやったことがない切り口の曲をバンドとして試したいというのがありました。ビートがドンペーンドドペンじゃなくて、ウチパチウチパチっていう最近、いろいろなバンドが使っているものを、試しに僕らがやってみたらどうなるかっていうのがきっかけでしたね。

-近藤(潔/Gt/Key/Cho)さんのギター・フレーズがどんどん変化していくところがいいですね。

そうですね。この曲がたぶん、バンドとしていろいろ試してみよう、仕掛けをいろいろ入れてみようみたいなことを一番やっていますね。この曲のオルガンは僕がフレーズを考えて弾いたんですけど、ようやく自分が考えていたオルガンのフレーズを入れられたと思います。前までは、ここにオルガンの音があったらいいよねぐらいで、口ずさめるメロディは弾かなくてもいいと思ってたんですけど、この曲はリードをオルガンに担ってほしいと思いながらフレーズを作りました。

-そして、最後の「胡蝶の夢」のオープニングには、ゴスペルっぽい手拍子が入っている。

曲を思いついたときは、THE EAGLESのようなヒゲもじゃが何人もいてというイメージがあったんですけど、それは「Desperado」(※THE EAGLESの1973年リリースの2ndアルバム表題曲であるバラード)を家で聴きながら癒されていたからかもしれないです(笑)。それでああいう曲になりました。昨夜(※取材日は1月16日)、ライヴで初めてやってみたんですよ。最後にやったらかったるいかなとちょっと思いながら、最後にやってみたんですけど、思っていたよりもしっくり来て。ライヴハウスで耳に入ってくる歌詞って、やっぱり繰り返しの多いところや音程がわっと上がるところなんですけど、この曲はプラスな言葉がまず耳に入ってくることが、やってみてわかりました。意図したわけではないんですけど、"君と過ごした日々に別れ告げて"っていう若干の寂しさよりも、それが幸せな時間だったということと、"それぞれの道へ"歩いていこうぜってところを共有できる曲になっていることがわかってすっきりしました。作っているときは必死で、いかに少ない言葉で深く掘り下げ、そのうえで破綻がないものになっているかだけを考えていたから狙ったわけじゃないんです。だから、その言葉をライヴで投げかけて、それがハマッているかは、2月12日から始まるリリース・ツアーで確かめられていくことなのかな。そういう意味では、ライヴでやりやすい曲を作るというところで、自分の中にひとつハードルが設けられたわけですけど、昨夜、「胡蝶の夢」をやってみて、それを突破していると感じられたので、次からはそれをもっと意識して作れると思いましたね。