Japanese
LILI LIMIT
2016年11月号掲載
Member:牧野 純平(Vo) 土器 大洋(Gt)
Interviewer:山口 智男
-「On The Knees」のファンキーなギター・カッティングを始め、バッキングでも印象に残りますよね。
土器:あのギター・リフは自分が19歳ぐらいのときからあって、そのころやっていたバンドで作った曲に入っていたんですよ。すごく気に入っていたんで、いつか使えるんじゃないかってネタとしてずっと持ってたんです。まさかLILI LIMITで使うことになるとは思ってなかったんですけど、やってみたら意外に面白かったので、それをベースに曲を作ってみました。
-ところで、「Naked」の虚ろな感じの歌や、「A Few Incisive Mornings」の今にも消え入りそうな囁き声の歌を聴いていると、牧野さんはヴォーカリストとしてひと皮剥けたという実感があるんじゃないですか?
牧野:本当ですか(笑)? あ、でも「Naked」はあります。こういう感じ、僕の体温に超合うなって。超歌いやすかったです。ダラダラと歌うのがホント好きだから、ダラダラと歌える曲がようやくできて、すごく新しい感じがしました。
-「Naked」の曲自体が歌い方に与える影響も大きいんじゃないですか? サビのコード進行が、なんて言うか、気持ち悪いと言うか(笑)。
土器:たしかに(笑)。気持ち悪い感じでポップにしたいと思って作ったんですよ。
-カセットテープで聴いているわけじゃないんですけど、テープが伸びちゃったようにも聞こえる感じがすごく......絶妙でした。他にヴォーカリストとして聴いてほしいところはありますか?
牧野:全曲ですかね(笑)。どれも頑張って歌ったので。
土器:歌の技術、表現力共にすごく成長したと思いますよ。もともと表現力は持っていたと思うんですけど、それを技術として使えるようになってきたんです。今回、バラードも含めて曲調は幅広いんですけど、オケの強弱に合わせて歌のダイナミクスを表現していると思うし、「A Few Incisive Mornings」の終盤の消え入りそうになるオケに合わせたところは何回か歌ってもらったんですけど、どのテイクも良かったんですよ。(レコーディング)ブースの外で、みんな聴き入っていましたね。
-今回、歌詞は『LIVING ROOM EP』のときと同じように物語もあって、わかりやすいものになっている一方で、謎めいたものもありますね。そういうところも引っ掛かるんですけど、一番の謎が「On The Knees」の――
牧野:場所を示しているんですよ。
-そう。北緯と東経を歌っているじゃないですか。あれは実際のどこかの地点なんですか?
牧野:いえ、スタート地点と目的地というだけで、残りの歌詞の内容で"あ、これ浮気の歌なんだ"ってわかればいいから、場所は正直どこでもよかったんです。だから、僕的にちょっといやらしいスポットにしてみたんです。あの北緯と東経の数字を検索すると、品川のホテルか六本木が出てくると思うんですけど、場所の名前を言っちゃったら面白くないじゃないですか。あとは曲調的に日本語だと堅くなっちゃうから、数字を入れた方が絶対いいと思ったんです。ただ、歌うときは大変でしたね。次何だっけ、次何だっけって数字が出てこなくて苦労しましたね(笑)。
-牧野さんが会心の出来と思う歌詞はどの曲でしょうか?
牧野:いろいろ好きなんですけど、「Self Portrait」は詞的にまとまりが出たと思います。サビの"30cm定規で収まらない思い/あの頃走らせたペンは今じゃ補欠さ"ってところは、誰しも経験していることだと思うんですけど、そういう誰にでも引っ掛かる言葉が出てくれたのはありがたいと思いました。オケからインスピレーションをもらって、高校生のときに、吹奏楽部が練習しているのを聞きながら友達と喋っていたことを思い出しつつ歌詞を書いてみたら、自分的にはすごく心に響く、いい歌が書けたんですよね。
-Track.8「Space L」の歌詞もすごくいいですよね。
牧野:R. Murray Schaferの"A Sound Education"という本からインスピレーションを受けて作った曲なんですけど、歌詞は"恋人を失った人と恋人の点で結ばれている線が今、どういう状況なのか"を書いたんです。もともとはもっと歌詞が多かったんですけど、アレンジに合わせて削ったんです。でも、削ったことで意味が曖昧になったからこそ、聴く人それぞれに"こういうことなのかな"って想像を膨らませることができるものになったと思います。他の曲はわりと、"これはこういうことです"ってわかるように書いたんですけど、本来、僕はあまりそういうことをしたくないんですよ。だから、自分でも「Space L」の歌詞は気に入ってます。
-最初は暗い内容なのかなと思ったんですけど、何回か聴いているうちに、この歌の主人公は意外とあっけらかんとしているのかなって。
牧野:意外に明るいんですよね。
-"北枕で目覚めた朝に"ってフレーズも最初は不吉だと思ったんですけど、いや、くすっと笑うところなんだって。
牧野:僕はユーモアのつもりで書きました。それが伝わってよかったです。
今回のアルバムは、東京に来てからのLILI LIMITを語る1枚なのかな
-「A Few Incisive Mornings」の"毎月変わる花瓶の花/今月は一体何を生けるのかな"というフレーズは、僕がそういう人間じゃないだけなのかもしれないけど、男性でこういうフレーズが書ける感覚ってすごいと思いました。
牧野:そういう人がいたんですよ。その影響が僕の中ではスタンダードとして植えつけられていて、僕も実際、毎月変えているんですよ。それだけで部屋の空気が変わるから、花を変えるのは好きなんです。部屋の模様替えって頻繁にはできないけど、花なら変えられるじゃないですか。
-そんな牧野さんを、土器さんはどう思いますか?
土器:いいと思いますよ。これまでも歌詞は見てきましたけど、住む場所、環境、関わる人によって変わるんですよ。「A Few Incisive Mornings」も含め、東京にいるからこそ書けた歌詞ばかりだなって改めて思いました。福岡時代とも山口時代とも違うんですよ。上京してからの感じがどの曲にも描かれていると思います。そういう意味では、今回のアルバムは東京に来てからのLILI LIMITを語る1枚なのかな。曲だけではなく、歌詞にもそれが表現されているんですよ。
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