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INTERVIEW

Overseas

JIMMY EAT WORLD

2016年11月号掲載

JIMMY EAT WORLD

Member:Jim Adkins(Vo/Gt)

"エモーショナル・ロック"というジャンルを世界的にメジャーな存在へと押し上げた最大の功労者、JIMMY EAT WORLD。彼らが前作『Damage』から3年ぶりに、メジャー・デビュー20周年記念作品ともなる9作目のアルバム『Integrity Blues』をリリースした。前作に続いて今回も初タッグとなるプロデューサーを迎えた今作は、彼らが新たなサウンドを求めたチャレンジングな1枚に。"エモ・ムーヴメント"と言われた時代は過ぎ去ってしまったが、彼らの信念はそこに宿り続け、今もなお新たな境地へと切り込んでいこうとする音楽への真摯な姿勢は聴き手の感情を大いに揺さぶる。決して安っぽくはない"エモさ"でもって奏でられる彼らの新たな挑戦となるこの9thアルバムについて、フロントマンのJim Adkinsに話を訊いた。

-アルバム・タイトル"Integrity Blues"の意味を教えてください。コンセプト・アルバムの要素はあるのでしょうか?

そうだね、コンセプト・アルバムと言えると思う。全体をまとめて土台に繋げるイカリのようなものがあればいいなと思ったんだ。と言いつつ......それが何かというのはいろんなニュアンスがあるんだけど、全体的には"人間は常に進歩(progress)の過程にある"ということかな。自分が幸せだとか、自分で自分の価値を認めるとかいうのは、時としてゴールに辿り着いたような気にさせてしまう罠を孕んでいると思うんだ。本当は遥か遠くにあるものなのにね。そこへ実際に辿り着いた気がしても、理想の、または期待していた結果にならない場合はがっかりしてしまうこともあり得るけど、そこへの軌道に乗っているなら、自分の持っていないものに固執するよりも自分の努力や今持っているものに意識を集中させれば、そのとき本当の意味で自分の価値や幸せを見いだすことができていくと思うんだ。

-ということは"Integrity(=誠実さ、正直さ、完全性、全体性)"をその過程の中で持ち続けていることが大切だ、というのがタイトルの意味でしょうか。

うーん......。(進歩の過程において)正しいことをやる作業というのは、孤独を伴うことがある。でもそれは、自分の努力に対して何かを期待するからそう感じてしまうんだと思っていて、自分ではどうにもコントロールできない。努力の質はコントロールできるけど、努力の結果はコントロールできないからね。

-今おっしゃったことは、先行シングルとして先に発表された「Sure And Certain」(Track.2)に繋がっている気がするのですが。海外のプレス・リリースで、あなたは"この曲は、完璧さを目指すことが時として自分自身にリミットをかけてしまうことについて歌っている。目隠しされた状態でいくら頑張って自分の理想を追求しても、それでは"今"を生きていることへの喜びを感じることはできないんだ"とコメントしています。今のお話を聞いて、この曲がアルバム全体を体現している曲のひとつのような気がしてきましたが、これはあなた自身の経験からきているメッセージでしょうか?

たしかにそうだね。年齢を重ねてきたから、そのメッセージのきっかけになった出来事はいろいろあると思う。ただ、具体的にどの出来事が、というのは難しいね。でも、どんな人も思い当たる節があると思うんだ。例えばそうだな......グラフのX軸を現実としよう。Y軸は自分の期待だとする。そこに食い違いというか、現実と理想の間に失望というギャップが発生するんだ。それをパーソナルに受け止めてしまうのは自分のエゴからくる反応かもしれない。そうするとその食い違いをなんとか合理的に正当化しようとするんだ。でもそのためにエネルギーを無駄に使ってしまう。ターゲットが間違っているというのかな。現時点に意識を集中させて、今自分に何があるのかを考えることだね。それがすべてなんだから。

-今作『Integrity Blues』のプロデューサー Justin Meldal-Johnsenは、前作(2013年リリースの8thフル・アルバム『Damage』)でのAlain Johannesに続いてJIMMY EAT WORLDが初めてタッグを組んだプロデューサーとなりますが、彼を起用した理由を教えてください。

アイディアのためだよ。今回は9枚目のアルバムなんだ。しばらくクリエイティヴなキャパシティの中でいろんなことをやっていると、だんだん自分の作ったものに対して"能力"のようなものが生まれてくるんだ。それは自分の強みを発揮することによって生まれるんだけどね。音楽的なパズルというか、問題のようなものに直面すると――例えば"この曲はこんな感じにしたいんだけど"とか、"スタジオで作業しているものに特定の雰囲気が感じられるけどどうしよう"ってなったときに、作業している感がないというか、ただ流されていって、そのパズルを解くために自分の強みを発揮できるようになる。それでソリューションを見いだすわけだけど、そういうときって本当にベストを尽くせているのかどうかってことだよね。成長の機会を与えられるシチュエーションにちゃんと自分を置いているのかわからない。今回のアルバム制作に入ったとき、僕たちの共通の意識として"自問までのサイクルを短縮化する"というのがあったんだ。節々で立ち止まって、"これは本当に俺たちのベストな仕事なのか?"と自分たちに尋ねた。"それとも単に、これが俺たちのやり方だからと言って淡々とやることをやっているだけなのか?"ってね。そういう状態を打破することが大事だったから。それをJustinに説明したら、彼は僕たちにとって難しいかもしれない、あるいはどこに行くかもわからないような方向に僕たちをプッシュすることにおおいに乗り気だったんだ。もしかしたら失敗するかもしれない道(笑)を選ぶことが自分たちにとっては大切だった。もしかしたらうまくいかないかもしれないけど、とにかくその道を行ってみる。そういうコンセプトだからね。

-そういう新しい方向に導きつつ、新しいアイディアを与えてくれる人がいることが重要だったということでしょうか。

そうだね。どんなプロデューサーも手法が違うし、みんなモノの見方が違う。外部のプロデューサーと仕事をする理由は、グループや自分自身が考えもしないようなフィードバックをもらうためなんだ。でもひとりの人間とあまりに長い間組んでしまうと、その人のメソッドに慣れすぎてしまうからね。様々な人たちと仕事をすることが、成長する機会を与えてくれると思うんだ。それまでとは違うふうに物事に取り組んで、新しい方向に自分をプッシュするための機会をね。

-今回はいろんな方向性を試した感じですね。多彩な作品に仕上がりつつもJIMMY EAT WORLDらしさが出ている素敵なアルバムですが、今作を完成するにあたり、あなた自身が一番気を遣った(大事にした)こと、もしくは一番苦労したことはなんですか?

そうだな、どの曲にもそれぞれのチャレンジがあったと思うね。「Pass The Baby」(Track.5)の場合は、この曲に果たしてほしい役割というのが自分たちの中ではっきりしていたのに、そこへ辿り着くにはどうしたらいいか見当がつかなかったという意味でチャレンジだった。とにかく取り組んでみて、最終的には道を見つけることができたけどね。「Integrity Blues」(Track.10)なんかは今の状態になるまでの道が5つくらい考えられたんだ。僕がオーケストラに合わせて歌って、ギターやドラムといったJIMMY EAT WORLDで普段使っていると認識されているような楽器は使わないというアイディアもチャレンジだったね。そんな感じで、アルバム中にチャレンジの要素が散りばめられているんだ。