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INTERVIEW

Japanese

ハシグチカナデリヤ

2015年11月号掲載

ハシグチカナデリヤ

Interviewer:吉羽 さおり

-ループ・マシンをより使うようになって、曲作りの方法論で変化はあるんですか。

逆にそれはなるべく考えないようにしているかもしれないです。ループをさせるのは、もともとこういう曲を作りたいというものの手段で、それがうまくはまっただけです。ループを使うことが前提になると、縛りになっちゃうんですよ。そうなると、THE BEATLESの教えてくれた自由にやるっていうところから外れていきますからね。ループを使わない曲もありますしね。

-道具が制約になっていけない。

そうです。ループを"使わされている"ことになりますからね。それは意味合いが変わってきてしまいますから。

-自分で曲を作っているときは、先ほどライヴの映像を思い浮かべてるというのがありましたが、例えばプログレだと作品に密な世界観や精神性もありますね。作品作りのうえで、そういったヴィジョンというのはありますか。

そのヴァイブレーションは取り入れているつもりですけどね。ただYESやKING CRIMSONが好きだからって、俺も20分の曲を作ろうっていうのはちょっと安易な感じがするというかね。それを3分半の中にうまくスパイスとして入れたり匂わせる方が、ミュージシャンとして巧みな気がしますよね。だから、洋楽が好きだからといって、英語で歌ったりするのはちょっと安易だと思うんですよ。ここは日本だし、日本語で歌ってって思うんですね。洋楽のかっこいい響きの感じってあるじゃないですか。でも、響きはかっこいいけど実は日本語っていうのを、桑田佳祐がやってて、その方がかっこいいと思うんですよ。そのままやるっていうのが、かっこよくない気がしていて。だから、ハシグチカナデリヤには洋楽の匂いが感じられると思うんですけど。まんま洋楽になっちゃダメなんです。

-なるほど、たしかにハシグチさんの曲には、日本語ならではの語感を取り入れた曲もありますね。

内容よりも重視しているくらいに語感はめちゃくちゃ大事にしてます。アルバムに入ってる「まさかマザーユニバース」(Track.5)なんて、さっぱり意味わからないけど(笑)。なんとなく最近になってようやく、これはこんなことを歌ってる曲なんだなということがわかりましたけどね。"まさかマザーユニバース"という言葉が出てきたときに、よっしゃと思ったんですよ。"まさか"ときて、"マザーユニバース"がくると思わないですよね。

-音もそうですけど、組み合わせの妙ですよね。いかにして、そういうものを面白くキャッチーに、それでいて違和感を生まないようなものにするかっていう。

そうですそうです。最初から奇をてらっているとか、マニアックなことをしてるっていうのが、先に来るのは悲しいし違うんですよね。やっぱりあくまで曲はキャッチー且つポップでメロディがいいものっていうのが前提で、面白いことをやるという。基本的には予想がつかないものにしたいんですよね。

-見た目じゃなく、ふたを開けたときにすごい時計仕掛けみたいになっててびっくりするような。

それがワクワクするっていうね。でも難解な感じがしないっていう、そういうところは大事にしています。あからさまに難解なものっていうのはね。

-粋じゃないと。そういう話を訊くと、なるほどTHE BEATLESの話が納得です。

どの曲もキャッチーですからね、ほんと参っちゃいますよね。

-1曲として仕上げていくにあたっては、ハシグチさん自身いろんな角度からこの曲はどうかと見ている感じですか。

そうです、この感じだったら展開が読めそうだなとかは、なるべく外したいんです。1番があって、これはそのあとの展開が読めるなとか。このメロディがきたら、次はこうなるだろうなっていうのが読めちゃう感じがすると、作るのをやめますね。あとはライヴで言うと、曲の最後にギターで"ジャーン、タカ、ドン、ビャーン"っていう、あの曲終わりにかき回すっていう作業があるじゃないですか。あれをやれば、お客さんはワーッとなるんですけど、超嫌いで。

-たしかに。

いきなり終わった方がかっこいいと思うんですよ。たぶんあれは、大して何も考えずに定型文的な感じでやってると思うんです。いろいろ考えたうえで、"これはやった方が盛り上がるし、やった方がいい。俺は好きだね"っていうのでやっているのならいいんです。でも、大半のバンドが特に何も考えないままなんとなくやってるはずなんですよね。

-それは違うぞと。

だから、ハシグチカナデリヤになってからは"最後の曲です"とも言わないんです。いきなり去った方がかっこいいじゃんと思ってるんでね。とはいえ、何か言いたいときには言いますよ。"今日はこれで終わりです"と。明日になったらかき回しもいいなと思ってやってるかもしれないですしね。ちゃんと、かっこいいと思ったものをやっていきたいんです。

-いろんなことがここにきて、はっきりしてきたんですね。ちなみに、今のような原色の派手な服のスタイルになったのももしや、ハシグチカナデリヤとなってからですか。

そうです(笑)。"いろいろ"がうまくはまったんですよ。自分は、髪型をちゃんとしたりして普通におしゃれなスーツとかを着ればそれなりの感じになるんですよ。でもそれなりの感じだったら、"マジで爽やか"とか"マジで若い"とか、"めっちゃイケメン"なやつにはもう絵面的にかなわないから、なんとかせねばとずっと思ってましたよ。そんなこんなで行きついたのが"これ"ですよ(笑)。

-今、居心地いいですか。

いいです、めちゃめちゃいいですよ。昔は、ヒゲとかメガネもなかったですしね。"ヒゲはない方がいい"とか"メガネしてない方が好きです"って言われますよ。全部、無視しますけど(笑)。