Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

mothercoat

2015年09月号掲載

mothercoat

Member:ギガディラン(Vo.?)

Interviewer:石角 友香

-歌い方の発明をされたのかな?と思って。

いや、ずっと悩んでますけどね。いろんな歌い方をしてみても"自分の声だなぁ"、その、やっぱり"あの人みたいに歌いたい"とかいうのを、やろうとしてもできないというところが、オリジナリティに繋がってれば嬉しいなっていうぐらいですかね(笑)。ああ歌いたいけどなんなんだ、この声は?というところは、自分ではありますけどね。でもまあ、声のことは置いといて、アーティストはやっぱり発明すること以外やることはないですよね、アーティストと名乗るのなら。何か死ぬまでに個としてひとつだけでも落として世を去りたいというか、何か世紀をまたげる何かを残して終わりたいなというのはやっぱ常にありますね。だから年齢も気にならないですけど、死ぬまでに1曲これはみんなが聴いてびっくりするような"この手があったか!"という何かを残して死にたいという思いは......結構人より強くあると思います。

-そこまでもとからアーティスティックなんですか?

いや、日常生活の中でなかなかそうなりづらいでしょ? アーティストもこんなこと言うと恥ずかしいというか、なんというか......でも根本にその部分はないと。だし、そういうものの恩恵というか、僕自身、10代のころにいろんな音楽にびっくりさせられて、"こんなのもあるのか?"という。それに対してリスペクトで同じことをやるというのは僕の中では違くて、その人たちをびっくり"仕返したい"という思いでやってるところはありますけどね。

-で、たまたまかと思うんですけど「good bye」の歌詞、"つまり君がミサイルを持っているから僕も持たないとねって話?"と、最近の政情や世相を反映しているように思えます。

(笑)たまたまですね。去年の秋ぐらいに書いたと思うので。でもどうなんですかね? わりとミュージシャンの人たちは"戦争反対"と声をあげてる人が多いと思うんだけど。戦争反対っていうのは言うまでもないっていうところがあるじゃないですか......僕は今、世界で起こってることに対してのスタンスとして傍観するということも平和のひとつではないかと思ったりもしてます、それは情報を伝える怖さも感じていて。だって普段みんなそこそこの楽しみと苦しみの中で生きれてるわけじゃないですか? 別に戦争したいとか誰も思わないですし、過去にこんなことがあったと知ったことによってその人たちに負の感情が生まれてしまうという。知らなかったら知らない中でうまくやっていたのに、知ってしまったがゆえに、、、という。あとはやっぱり"やられたらやり返したくなる"っていう、人間の本能の話で。人が人を殺すのがよくないって思えたのって結構最近ですし。だから、その流れの中で......僕はひとつは傍観するということも平和への一歩だと思えるのは、たぶん僕が間の世代だからじゃないですかね。上の世代の人からの言い伝えも聞いてるし、でも、戦争のこと全然知らない僕らが下の世代に伝える意味あるのかな?っていう気はしちゃうんですよね。

-どっちもありますよね。今回のアルバムで感じたのは完全な傍観者ではないけど、人の心情に関してはちょっとシニカルな視点。まっすぐ"これはダメだろう"って言い方はしないというか。

やっぱり物事って常に多面的ですからね。"こっちからの角度もあるよ"って捉えた方が自分は人生が楽しく映るっていう姿勢をみんながとってけばいいだけで。自分の捉え方で変わっていくのに、もう三角形ぐらいで捉えていくと、カドが立ってしょうがないでしょう?外から見たら球体なんじゃないか?っていうぐらい、人がいろんな捉え方をしていったらいいと思いますけどね。

-言葉も含めて、ひとつのジャンルに括れないけど、マス・ロック的なアンサンブルの抜き差しと、ニュー・ウェイヴ的な音像の曲もあったり。私が面白いなと思ったのはムーディなのにインダストリアルな曲があるじゃないですか?

「ten pura」ですかね(笑)?

-そうそう。あれは"インダストリアル・ムードミュージック"だなと思って(笑)。

いい言葉ですね(笑)。

-無理やりにでもそういうワードを作ろうと思ってしまうような曲が多くて。

いやいやライターさんも発明の仕事ですからね。

-あと、近年のブルックリンのバンドとかも音をどんどん抜いていってる潮流がありますが、そこともリンクするサウンドですね。

なるほど。やっぱりテクニックがある人とか、弾ける人っていうのは、恐らく"弾かない"っていうのが1番難しいことじゃないかな。みんな手癖ができてきて、その手癖で埋め始めちゃうから。そんな中、弾けるけど弾かないっていうことの面白みに気づき始めたのは、2010年ぐらいですかね。そういったバンドが出てきたときに、僕は弾けないから弾かないも、やり方によってはカッコよくなるぞと思って、ギターを練習してこなかった成果をここにきて発揮してます(笑) 。

-そういう意味でセンスとしてこれまで生きてきた中で1番影響を受けた人と言えば?

僕、自分のこと"ギガディラン"っていうぐらい、Bob Dylanに影響受けてて。で"ギガ"っていうのはみんな芸名だと思ってるから、もうこの説明を生まれてからずっとしてるんですけど、"ギガ"は本名なんですよ。ギガっていう苗字なんですよ。それに"ディラン"ってつけてしまったから芸名みたいなんですけど。もう、音楽というか存在ですかね? 正直、ライヴでBob Dylanが出てきてお茶を飲んでるだけでも成り立つ。それぐらいになってきますね。何してても成立しますよ。

-でもそう思わせるだけの何かがあると。

"時代は変わる"って言っちゃってますから、ちょっと諦めてるところもありますよね。良くも悪くも、今カッコいいものはいずれ古臭くなるし、先頭はビリケツになるし明日には、そこまでもう......言ってたら、まぁあんな若いころにそんなことをよく言ったなというのも含め。そっからの彼の人生含め、影響、受けてますね。

-ヴォーカリストというより詩人ぽいのかもしれないですね。

あ、そうかもしれないです。僕、すごく言葉好きなんで。

-では、最後に若い読者も多いと思うんですけど、彼らにメッセージがあれば。

変なこと言うようですけど、"ぜひ楽しみを見つけてください"ってことですかね。で、楽しみを与えられることに慣れないでくださいってことですかね。それを1番言いたいですね。日本はサービスが過剰なんで。楽しませてもらえてないっていう感情ほどつまんないものないですから。もう、楽しみはハイエナのように見つけに行ってもらいたいですね。渇望したときに何かを見つけたり掴んだときの感覚ほど、昂ぶるものないと思います。