Japanese
完全にノンフィクション
2015年09月号掲載
Member:別所英和(Gt/Vo) 上野友也(Ba) 小野恭介(Dr)
Interviewer:蜂須賀 ちなみ
バンドの名は、完全にノンフィクション。2011年に結成、2012年には不特定多数のミュージシャンやDJとの構成による活動を開始。the telephonesの長島涼平(Ba/Cho)やfox capture planの井上司(Dr)らをサポートに迎えた武者修行を経て知名度と実力を着実に上げるも、2014年に突然活動休止を発表。1年経った今年2015年、彼らがリリースするのが3rdミニ・アルバム『※この音源は完全にノンフィクションです。3』である。本作を以て3ピースの"バンド"としてリスタートする3人に、メール・インタビューを敢行した。
-まずは、みなさんそれぞれ影響を受けたアーティストと、楽器を始めたきっかけを教えてください。
別所:僕がロック・ミュージックに目覚めたきっかけはLUNA SEAでした。中学時代はヴィジュアル系バンド・ブームの真っ只中でしたが、その中でもLUNA SEAの音楽やヴィジュアルの、鮮烈で危険な雰囲気に魅了されました。1人部屋で、ヘッドフォンでシングル・コレクション『SINGLES』を聴いてて"自分はこんなにも激しい音楽を聴いていて何か悪いことしているんじゃないか?"というゾクゾク感を覚えました。幼少時にピアノを習っていて作曲もしていたし、ギターは親が持っていたこともあり中学1年生で始め、音楽はわりと物心ついたときから身近にありました。他には大学時代に、NUMBER GIRLの風景や思想を音楽にするという発想にどっぷりハマりましたし、今回から取り入れたフィンガーやスラップ・プレイもMIYAVIさんの影響が大きいです。MIYAVIさんはかれこれ15年来のファンです。
上野:いろいろな音楽は聴いていましたが、これと言って影響を受けたアーティストはいません。強いて言えば、当時の別所くんや小野くんを含めた音楽好きな同級生ですね。本格的に楽器を始めたきっかけは、当時高校の同級生だった別所くんにバンドやろうと誘われたことです。
小野:芸術全般いろいろなものに影響を受けて今まで生きてきたので挙げだすとキリがないのですが、中学生のころにロック・ミュージックから生き方を教わった感じがします。個人的にはBLANKEY JET CITY、THE HIGH-LOWS、海外だとTELEVISION、PIXIES。10代のときに受けたそれらの衝撃が今も何らかの基準になってます。LUNA SEAやNUMBER GIRLも好きで音源を持っていたので、完全にノンフィクションに参加するにあたってグルーヴのヒントにならないかと集中的に聴き倒しました(笑)。ドラムを始めたきっかけは小学校のとき、ドラム・セットの生音を初めて聴いて、それがとにかくカッコよかったからですね。学校の文化行事みたいなやつで来ていた吹奏楽団なんですけど、その40分くらいの間、後ろの列にいるドラムの人にロックンロール的なものを感じて見入ってしまって、自分もやりたいって思いました。中学生になってからは放課後、吹奏楽部が来るまでの数分間音楽準備室に忍び込んでドラム・セットを叩いて逃げる。あとは自分の太ももを叩いて練習してました。バスケ部だったんですけどドラムの練習に夢中でした。今でもそうなのですが、僕は昔から芸術的なことは何でもやりたがる人間で、高校のときから詞を書いたり曲を作ったりもしてたから、ギター・ヴォーカルで何年かバンド活動もしましたが、やっぱりドラムが原点にあるということなのか、ブランクはあったけれど再びドラムでバンドに参加したりしていて。そんな折、別所くんから完全にノンフィクションのスタジオに誘われました。
-2012年には台湾でライヴを行ったとうかがっております。その経験を経て、意識や考え方など変わった点を教えてください。
別所:海外でも活動したいと思ったのは全国デビューして1年経とうとしていたときです。音楽の評価に対して凝り固まっていた時期に可能性を感じたいと思い、台湾でのGIGに至りました。当時は特に神出鬼没な活動を全面に出していて、独自の活動方法でもう1歩何かないかと考えていたタイミングでもありました。いろいろな人の協力があって実現したのですが、実際日本以外で演奏してみると、オーディエンスが自分から楽しもうという姿勢がステージに伝わってきたんですね。急な会場変更やタイムテーブルの変更などトラブルだらけでしたが、そこそこ形になるくらいにお客さんが入ってくれて踊ってて。さらにアンコールまでもらって。すごく自分の中で世界が拓けました。演者がいてオーディエンスがいてという形は変わらないのに日本とは違う空間で、それぞれがそれぞれの楽しみ方をしている、と。いい意味でカルチャー・ショックでした。音楽を日本でやり続けるのはもちろんだけども、日本だけじゃなくてもいいんだ、と。もっと先にも音楽をやれる希望が見えました。ただ、英会話力の乏しさという課題も見つかりました。スタッフ、お客さん、共演者とのコミュニケーションにおいて絶対に必要なものだと痛感しました。次回海外に行くまでに少しでもレベルアップしたいと思っています。
-2014年の約1年間の活動休止の間、どのように過ごしていましたか? 別所さんは曲作りもしていたのでしょうか?
別所:実際に音楽のことを一切何もせず休んでいたのは最初の2ヶ月くらいだったと思います。自然といい曲が書けそうだなと思い、何となく書き出しました。それが春くらいだったかな。配信シングルの「MUSESSOU COMMUNICATION」(※2014年7月配信リリース)や「真夏の公園」(※2015年3月配信リリース)、今作でも再録している「2015年感覚」(※2015年2月配信リリース)ですね。2013年いっぱいで母体メンバーのドラマーが辞めたのですが、春から今回加入した小野恭介に声を掛け、ふたりでスタジオに入るようになり、そこから上野友也と3人でスタジオに入るようになり。スタジオ終わりに居酒屋なんて行ったりしておのずと来年に向けてどうしようかと話を進めていました。休止前はスタジオ後は各々直帰でしたけど、今では居酒屋寄ったりして"あ、バンドっぽい"って感じたり(笑)。ちなみに昨年夏配信の「MUSESSOU COMMUNICATION」はfox capture planの井上司くん(Dr)に叩いてもらっています。GIGはしないけど夏に向けて何か気まぐれに打ち出したくなってお願いしたらOKってことでスケジュール合わせてもらいました。来年の動きが固まってきた秋ごろには夜の本気ダンスからイベントの誘いをもらって唯一正式にGIGをしました。"来年の再開に向けてこの日をきっかけにして下さい"とケツを叩いてくれて、ほんま素敵な連中です。そういう意味ではアーティストとの交流は相変わらずありましたが、自分の中で音楽との距離の取り方、人の付き合い方が休止前といい意味で変わったし、流れの中でもがいていたことをひとつひとつ整理できた期間でした。個人的には初夏に沖縄へひとりで行ったことが大きかったです。オーシャンビューのホテルを取って部屋で本読んだり音楽聴いたり、レンタカーで離れ島へ行ったり、浜辺で日が暮れるまでビーチ・サッカーやっている外国人たちを眺めていたり。ようやく"俺、休んでるわ"と実感できました。
-音源を聴かせていただきましたが、まっすぐな疾走感の中に、"ここからまた、完全にノンフィクションが始まるんだ"というバンドの勢いと覚悟を感じました。ご自身ではどのようなアルバムになったと感じていますか?
別所:まずリリースが決まったときにメンバーと"GIGのための1枚を作ろう"と決めました。春に仙台、福岡、名古屋とショート・ツアーを回ったのですが、他の出演者に比べ圧倒的に曲の認知度の低さを感じたんですね。配信シングルからメインで選曲したんですが、やはりCDの影響力の大きさたるや。盛り上がるバンドはみんなお客さんが曲を知っているんです。それならまず曲を知ってもらわなきゃ意味がないと。それだったらGIGで映える曲だけで1枚作ってやろうと、GIGの"教科書"を作ろうと思いました。じゃあ"教科書"とは何だと言ったら"曲力"だなと思っていて。いくらライヴ・パフォーマンスでインパクトがあっても結局は"音楽"なんです。曲が耳に残るかどうかがすごく大事。自分の持つJ-POP感に今までになく向き合いました。そんな一から再開する気持ちでやるという姿勢と覚悟が結果、アルバムを通じての"疾走感"というイメージで表現されたんだと思います。
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