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INTERVIEW

Japanese

完全にノンフィクション

2015年09月号掲載

完全にノンフィクション

Member:別所英和(Gt/Vo) 上野友也(Ba) 小野恭介(Dr)

Interviewer:蜂須賀 ちなみ

-制作時期を教えてください。

別所:「2015年感覚」(Track.5)ができたのは昨年の初夏でした。「PROFESSIONAL IDOL」(Track.1)、「たまに浴衣美人」(Track.3)は今年3月の下北沢SHELTERでのフリー・ワンマン以降ですね。他にも作ったものの今回収録しなかった曲がありましたが、作曲に関してはなかなかタイトなスケジューリングでした。それこそ春のツアーをしながらだったので。「午前11時半」(Track.2)と「恥ずかしいこと思い出してまた恥ずかしくなって」(Track.4)は元ネタが昔演っていた曲にありまして製作期間にリメイクした曲ですね。レコーディング自体は5月のゴールデンウィーク明けからです。エンジニアも自分でやっているのでDTM機材を持ち込んでスタジオ押さえて。「恥ずかしいこと思い出してまた恥ずかしくなって」のみ1発RECですが、他は日にちも場所もセパレートで録り集めていたので思いの外押してしまい、マスタリングが終わったのが6月末でした。

-バンドでの曲作りは基本的にどのように行っていますか?

別所:僕がLogicで打ち込んだデモをメンバーに渡してスタジオで合わせブラッシュ・アップする形です。ドラムは打ち込み、ギターとベースのデモは自ら弾いています。3ピースだけあって、ギターのボイジングとベースのルートひとつで曲の形がガラッと変わってしまうので、基本的には原曲で通してもらうのがほとんどです。ギターとベースでひとつの旋律ができているということ。原曲はオケ、歌詞、メロディの順番で作っています。

-今作でバンドとしてリスタートを切るにも関わらず、アルバム名は『※この音源は完全にノンフィクションです。3』と、これまで同様シリーズもののように思えます。

別所:その通り同様のシリーズです。リスタートとはいえ地続きなのはたしか。完全にノンフィクションが作っていく作品や芸術性自体が、完全にノンフィクションの楽曲世界を形にしているものなので、毎度毎度アルバムを総括したタイトルが必要ないと思ったからです。ただし『※この音源は完全にノンフィクションです。2』を作るときには、これからケツに数字をつけていき続けるのは宿命だなと覚悟はしましたが(笑)。

-祭囃子のようなリズムやメロディが特徴的な曲が多いですが、幼いころから祭りの風景が身近にあったのでしょうか?

別所:大阪で生まれたのですが、誕生日が"天神祭"という大きい祭りが終わった深夜だったんですね。祭りの喧騒と、祭りのあとの憂いがたまらなく好きなのは血がそうなんじゃないかと思っています。幼いころから祭りがあるとソワソワしていましたね。いてもたってもいられないというか、そこにいたいというか。あんなに1ヶ所に人が集まることって非日常じゃないですか。出店が並び太鼓が鳴り響いて人々が踊って花火が上がって、エネルギーがすごい。性分としてクッソ暑い時期にあのグワーって感じを感じずにはいられないんでしょうね。

-本作では、ギターはフィンガーとスラップのみ、ベースはピック弾きのみで演奏しているとのことですが、演奏法に縛りを課した理由は何だったのでしょうか?

別所:今作を制作するうえで、作曲しているときに頭打ちしてしまったんですね。新作を作るにあたり今までやっていたことと同じことをしててもアカンと力み続けていたら逆にがんじ絡めになってしまって、曲が全然出てこなくなってしまって。何か糸口がないかずっと考えごとしてて、"なんでギターってピックで弾かなあかんのやろ?""なんでみんなピックで弾くのが当たり前だと思ってるんやろ?""そこに疑いはないのかな?""じゃあ俺はピック使わんとこう!"というところへ行き着きました。それから指で弾くとどんどんいろいろなフレーズが生まれてきて、これはもう覚悟決めようと。このスタイルを貫こうと。もともと数年前からMIYAVIさんの真似事でスラップは遊びで弾いていたんです。実は楽屋とかでもちょいちょい対バンから"スラップ取り入れたらいいのに"とか言われてたのですが、自分の作品性とは違うと否定的でした。でも、もう自分の中ではギターと創作の可能性がすごく拓けたので、このスタイルでここからもっと新しいモノを確立していこうという気持ちになりました。実際ピック弾きしていた楽曲も全て指で弾けるので"縛り"というよりも"解放"だと捉えています。邦楽ロック界は今新しいギター・ヒーローが不在と見ます。そこに自らが一石投じたいとも思います。

-収録曲の中にはライヴですでに披露している曲もあるかと思いますが、手応えはいかがですか?

別所:リード曲の「PROFESSIONAL IDOL」は振りもあるしメロのキャッチーさはもちろんのこと、「たまに浴衣美人」のお祭り感はリアルにビシビシ感じます。「恥ずかしいこと思い出してまた恥ずかしくなって」を生演奏したときの緊張感も僕らにしか生み出せないものだし、現段階でも感じている「午前11時半」の一体感なんかも、それこそ"曲力"が浸透していけばすごい爆発力を発揮する曲だと信じています。"曲力"という意味ではまだまだ爆発力が伸び得る「2015年感覚」はぜひ思う存分咲いていただきたい。

-小野さん、上野さんは、別所さんの書く歌詞についてどのように思っていますか? 空想と現実とのギャップを描くような皮肉さがありますが、内容には共感しますか? それとも、自分にはない視点だと感じますか?

上野:正直、共感できない部分もありますが、高校から約15年の付き合いの中で理解できた部分も大きいです。それが"別所世界観"だと認識していますし、たまに言いたいことを歌詞でぶった斬ってくれるのはスッキリしますね!

小野:別所くんの歌詞は"別所くんやなぁ"といつも思う(笑)。普段酒を飲みながら話していることや昔言ってたことがパッケージされたのが完全にノンフィクションの楽曲なので、デモを受け取った時点でスッと入ってくる。ゆえに、別所くんの視点は僕の中にもあると言えます。でもそれは僕がもともと持っていたものなのかは今では判然としません。僕らはもう15年くらいの付き合いなので最近加入した僕自身はおろか、上野くんや別所くんですら完全にノンフィクションではなかったころからいろいろな話をしていて、それぞれの人格形成に影響を与えあってきた経緯があったりもするので。今作でも別所くんの歌詞は、誰もが持ち得る感覚を、そのど真ん中にどっぷり浸かっているのにもかかわらず誰もやらなかったような新鮮な筆致で表現するので、新曲を聴くたび、これが彼の生き方で、完全にノンフィクションと名乗る所以かな、と思います。

-「PROFESSIONAL IDOL」、「たまに浴衣美人」の主人公は女性ですし、「2015年感覚」には"少女"という単語が登場します。現実の中の届かないロマンやその儚さを描いている印象があり、歌詞の中の"少女"はそれらの象徴なのではと感じました。

別所:ずっと、少女像、気温、天候、四季、景色、時刻、人間模様が織り成す風景に情緒を感じ、形に残して来ました。少女像がよく出てくるのは女性に対する憧れが少年期から人1倍強かったからだと思います。ただ今作からの女性像、少女像は今までとはまるで違うんです。悲しいことに大人になるにつれ現実を知っていく度に憧れは薄れていくものなんですよね。早く気づく人は気づいていたんでしょうが自分は気づくまでがなかなか遅かった。でも、憧れがなくなったからと言ってもういいよって投げ出すこともない。だから"感謝"の視点として女性像を"フィーチャー"している内容になっているんじゃないかと思います。「PROFESSIONAL IDOL」はそれが1番表現されていると思います。「たまに浴衣美人」だって現実的な日常の中でたまに憧れを見せてくれる場面があったりもしますし、「2015年感覚」ではまっすぐに夏の日差しと少女の残像はいなくなったと断言しています。女性像や少女像へのある種憧れとの決別です。今作が大きなきっかけだとは思いますが自分の中で落としどころを見つけたとしても正解は未だわかりません。そこに儚さやロマンがまだ続くんではないでしょうか。