Overseas
BATTLES
2015年10月号掲載
Member:John Stanier(Dr)
Interviewer:山元 翔一
-失礼しました(笑)。今作『La Di Da Di』は、3人で制作することを念頭に置いて作られた初の作品となりますが、制作を開始するにあたり3人になったBATTLESの音楽自体をどのように捉え直したのでしょうか?
いい質問だが、答えるのは難しいな。自分たちを捉え直しはしなかったんじゃないかな。この2年以上ずっと3人でやって来たからね。でも、そのおかげで僕はとても楽になったんだ。今回のアルバム作りは楽だった。だからと言って、前作がめちゃくちゃ大変だったというわけじゃない。ただ、今作の方が心地良く作れたんだ。だから、"楽"という言葉は正しくないのかもしれないな。全員がそこにいたくて、作業したかったんで、ずっとスムーズに進んだ。短い時間の中ですごくいろいろなことができたんだ。すべてがバッチリだった。そしてそれには理由があった。この3人でやったからだ。ひとつの悪い要素がなくなったからだよ。だから、今の僕たちは超ポジティヴ且つ前向きな考えのマシーンなんだ。
-それでも、BATTLESの音楽は3人の個性のぶつかり合いによって生まれると思いますが、今作を作るにあたってドラマーという立場から、IanやDave Konopka(Gt/Ba/Ef)のプレイや音楽性に対してどのようなことを要求しましたか?
特に彼らに要求したことはなかったね。ただ、僕がゴキゲンに叩けるようなものであればいいんだ。逆もまた然りだろうね。僕には方向性は必要ない。ただ、曲を書くためのいいものが必要なだけで、彼らはちゃんとそうしてくれるから最高だよ。
-今回の制作はそれぞれのアイディアを持ち寄ることからスタートしたそうですが、今作において核となったアイディアなどはありましたか?
特にひとつのアイディアというのはないね。さっきも言ったように、1年半ほどツアーをして、それから次のアルバムについて考え始めたけど、曲の大半は3人ではなく個々で作ったんだ。それを持ち寄ってしばらくの間プレイして、また離れてまた集まって、というセッションが繰り返された。その間に、残ったアイディアもあれば残らなかったものもある。ただ、最初から最後まで完成された曲を持ち寄ったメンバーは1人もいなかった。BATTLESではそういうことは起こらないんだけど、そこがいいんだな。起こっていたら、別のバンドになっていただろう。アイディア満載で、とてもオープンで、ひっくり返したりバラバラにしたりして、さまざまな形に変えていく――それがBATTLESのアルバムなんだ。
-そういったプロセスの前に、ファイルを交換したりといったことは行わないのですか?
やるよ! Daveがループを思いついたら、それをIanに渡す。Ianはそこに何かを書き加える。僕も何か書くかもしれないけど、聴き方がまったく違うかもしれないから、最終的に完成するものはまったく違うかもしれない。僕たちのアルバムはどれも、小さなアイディアの種から始まるんだ。
-今作はWarp Records契約後としては初となる全編インストゥルメンタル楽曲の作品となりました。前作はさまざまなヴォーカリストをゲストに迎え入れましたが、今作はなぜヴォーカルレスの作品となったのでしょうか?
"インストゥルメンタル・アルバムを作ろう!"と思って作ったわけではないんだ。むしろ、"このアルバムにヴォーカルは入るのかな? わからないから、とりあえず様子を見よう。しばらくすればわかるだろう"といった感じだった。特に考えていなかったんだけど、気がついてみると"そうか、このアルバムにはヴォーカルがないんだ"ということだった。でも、ヴォーカルがこのバンドの主要部分であったことはないと思う。リード・シンガーがいたことはないしね。小さなヴォーカルの要素をひとつの楽器として使って来たけど、リード・シンガーがいて、それからギター、ベース、ドラムといった、典型的なバンドのヒエラルキーがあるわけではない。だから、今回作ったアルバムにヴォーカルが入っていないのは、僕にしてみれば大したことじゃない。もしかしたら、次のアルバムにはヴォーカルが入るかもしれないし、入らないかもしれない。どうでもいいことなんだ。BATTLESの次のアルバムがどうなるかなんてわからないけど、今作とも前作とも違うものになるだろう。とは言ったものの、このアルバムのために書いた最後の方の曲で採用されなかったものの中には、ヴォーカルが必要だと思われたから採用されなかったものがある。アルバムにヴォーカル曲を1曲だけ入れても意味はないと思ったから、採用しなかったんだ。
-なるほど。ヴォーカルレスの楽曲が揃ったこと、そして"La Di Da Di"というアルバムのタイトルからも、今作は非言語性がベースにある作品なのではと感じました。
それはないと思う。アルバム・タイトルはふたつの見方ができる。厳密な意味のあるものではないんだ。実はあれは、最後の最後になって思いついたんだよ。タイトルがなかなか決まらなくてね、レーベルから"今夜中にタイトルを決めなかったら、アルバムのリリースが延期になる"と言われたんだ。あのタイトルはたしかベルリンのバーでDaveが見つけてね、それが僕のところに送られてきたんだよ。それを見た僕は、"それって、Slick Rickの曲じゃないか"と思った。ラッパーのSlick Rickの曲に「La Di Da Di」というのがあったんだけど、僕はすぐにこれのタイトルがいたく気に入った。ひとつは、Slick Rickの曲にちなんでつけたという見方。もうひとつは、意味のないフレーズだけど言いやすいという見方。ある意味、歌い声を書き出したような感じじゃないか。でもそれだけのことで、至って軽くてシンプルだ。深い意味はない。"歌い声を書き出したようなタイトルなのに、実は歌は入っていない"といったことではなく、ただ響きが良くて、面白くて、Daveが朝の4時に思いついたものなんだ。
-"Dot Net"や"Dot Com"、"The Yabba"や"FF Bada"といった不思議なタイトルの楽曲もありますが、この点に関してはいかがでしょうか?
曲のタイトルについては、僕たちのアルバムには必ず作業中における仮タイトルがあってね。だから最後の最後になって、"おっと、この曲を「Lionel RichieとGeorge Michaelを足して割った曲」のままにはしておけないな""この曲を「ミツビシ」のままにはしておけないな"と思って、別のタイトルを考えないといけなかったんだ。でも曲のタイトルってなんとなく、その曲のヴァイブを表わしていると思う。曲のタイトルは、僕たちにとってすごくパーソナルなんだ。必ずしも深い意味があるわけではないけど、ほとんど内輪のジョークのようなもので、僕たちにしかわからないんだよ。でも、曲の響きと何らかの関係があることは間違いない。
-あなたたちの作品において、アートワークはそれぞれの作品性を視覚的に反映していますが、今作はDaveが手掛けた、非常にストレンジでありながらカラフルでポップなものに仕上がっていますね。今作のアートワークに関してあなたの意見を教えてください。
これは、Daveが手掛けた4つ目のアート・ディレクションなんだ。彼はEP(2004年リリースの『EP C』および『B EP』)のアートワークも手掛けたんだが、これは同じ年のリリースだからひとつと見なしている。そして『Mirrored』(2009年リリースの1stアルバム)、『Gloss Drop』と『La Di Da Di』だ。Daveはこのバンドのアート・ディレクターで、すべて彼のアイディアなんだよ。EPは自然、『Mirrored』は明らかな対象物、『Gloss Drop』はなんだかわからない謎の物体。そして『La Di Da Di』は、必ずしも調和しないアイテムの物理的組み合わせ、かな。不可解なアイテムなんだ。フロント・ジャケットを見ると"朝食だ"と思うかもしれないけど、よくよく見てみると、あんなふうに朝食を摂る人はいないよね。すごく不思議な食べ物の組み合わせだから、思わず見てしまう。その不思議な組み合わせを消化した結果が僕たちの音楽なんだ。
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