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BATTLES

2011年04月号掲載

BATTLES

Writer 杉浦 薫

DON CABALLERO、HELMET、TOMAHAWK、LINKS等、メンバーそれぞれが伝説的なバンドで経験を積みながら、02年にNYで産声を上げたエクスペリメンタル・エレクトロ・ロック・バンド、BATTLES。07年にリリースしたアルバム『Mirrored』は、オーガニックでありながらもハードコアな感覚があり、独創性に溢れたサウンドを展開。シャッフル・リズムのループが特徴的なシングルの「Atlas」を始め、まるで、地下の奥深くに広がる腐界のような統一された世界の中で、祭や儀式を行っているかのような、そんな不思議な感覚に誘いながら、音を“体験”させるアルバムだった。
この名盤を産んだメンバーは、フリージャズ界の巨匠、Anthony Braxtonを父に持つTyondai Braxton(Vo&Gt&Key)、Dave Konopka(Ba&Gt&Ef)、Ian Williams(Gt&Key)、John Stanier(Dr)の4人。その後も精力的なライヴ活動を行い、FUJI ROCK FESTIVALやElectraglideなどで来日を果たし、圧倒的なパフォーマンスを披露してきた。
そして、バンドのブレインであったTyondaiは、09年にソロ・アルバム『Central Market』をリリース。しかしその後、Tyondai は10年にBATTLESからの脱退を表明してしまう。

『Central Market』が素晴らしいアルバムであっただけに、この後のBATTLESの行方に不安を感じた人は多いはずだ。“確かにBATTLESはメンバーそれぞれの実力が物凄いんだってことはわかっているけど、それにしてもTyondaiのいないBATTLESってどうなのよ?”と。しかし、はっきりと断言しよう。それは杞憂でしかなかったと。

『Gloss Drop』について、私はまだそこまで多くを語ることが出来ない。何故ならば、一度しかアルバムを通して聴かせてもらってないからだ。しかし、一つだけ言えることは、この『Gloss Drop』は、あまりにも素晴らしいアルバムだということ。BATTLESの中核となるアイデンティティはそのままに、心躍らずにはいられないアッパーなサウンド、バラエティに富んだ内容で、更にパワーアップしたBATTLESの姿を我々に示してくれているということだ。

不穏に拡がるサウンドスケープが波のように押し寄せ、ボルテージがどんどん上がっていく「Africatsle」から始まり、シングルカットされ、軽やかでダンサブルな「Ice Cream」、や「Futura」では、BATTLES流ヒップホップ/ファンク要素を味わうことが出来る。クリスマスのような鈴の音が印象的な「Inchwoman」、メタリックと言ってしまいたくなるようなドラムが炸裂し、混沌としながらも整合性のある「Wail Street」、Gary Numanがヴォーカルとして参加し、重厚なビートの「My Machines」、南国的なパーカッションやクラップが入り乱れる「Dominican Fade」、Kazu Makinoの高音のヴォーカルと爽快なグルーヴ感が心地よい「Sweetie & Shag」、自由な音階で3連符の嵐を刻む「White Electic」、そして、Yamantaka Eyeが参加し、土着的な民族音楽やレゲエのエッセンスが散りばめられ、リラックスした雰囲気で締めくくられる「Sundome」。以上全12曲。この文章だけではまだ想像がつかないかもしれないが、全体として祝祭感に満ち溢れ、爽快な“夏”をも彷彿とさせるアルバムだということも付け加えておこう。

3人となったBATTLESの新機軸に、私は興奮してやまない。アルバムのリリースは4月27日の予定だが、その前に、“Sonar Sounds”で、『Gloss Drop』の世界を生で体感してみよう。私を含め、オーディエンスの圧倒される顔が目に浮かぶようで、ニヤリとしてしまう。

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